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『#発達系女子 の明るい人生計画』に書けなかったこと1 医学的典拠の補足、「初診証明が出せません証明書」

先日上梓しました『#発達系女子 の明るい人生計画』、集まったご感想などをきっかけに、「あれ書いとけばよかった!」という内容がぼちぼち出てきたので、今回はそのへんを少し書いておきたいと思います。

1.医学的表現の典拠が不十分だったところの補足

読書メーターにていただいたご感想で、「根拠の提示なく、EMDRにはエビデンスがあると書かれていて気になった」という旨のご指摘をいただきました。

直接コメントで返信もしたのですが、私は「トラウマ治療の文脈ではEMDRのPTSDへの効果にエビデンスがあることはかなり普及してるから」と、脚注を省いてしまったんですよね。すみません…

EMDRのPTSDに対する効果のエビデンスの典拠は、日本でおそらく最も有名なものは以下です。 

エビデンスに基づいたPTSDの治療法 飛鳥井望 (2008)

2018年9月には以下のようなメタアナリシス報告も出ています。PTSDには認知行動療法よりもEMDRがより効くという旨のものです。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6217870/

本の中で、上のEMDRの件と同様に「普及してるから」と脚注を省いた医学的表現には、パッと思い出せるものでは「発達障害者は10人にひとり程度」があります。

アメリカでの子どものASD単体について最新のデータでは1.5%程度アメリカでの子どものADHD単体に11人にひとり程度と、海外の子どもについてはいろいろなデータがあります。しかし、「いわゆる発達障害全体」をターゲットとした調査は非常に少なく、特に日本の成人に限定したものだと、まとまったデータはほぼ見つかりません。ASDとADHDの混在、学習障害、また知的障害のある従来の自閉症も含むのか、などの点も鑑みると、◯人に1人、と簡単に断言できるだけのデータは今のところないと言ってよいでしょう。

日本の子どもに関していえば以下のようなデータがあります(2012)。通常学級に通う子どものうちで、「発達障害の可能性がある」とされたのはおおよそ6.5%。15人にひとり程度という感じの割合ですね。

日本では精神科医の本田秀夫氏が、以下のような本を書いています。本田氏が独自に広く解釈した「自閉症スペクトラム」についていえば、臨床での経験上、10人にひとりぐらいいるのではという実感を持っている、という旨の説明があります。

以上、典拠が不十分だった医学的表現への補足でした。今後、医学的表現にはもれなく典拠をつけなくては、と反省しました。ご指摘くださった「へそ」さん、ありがとうございます。

2.障害年金申請時、初診証明が出せなかったら、「初診証明が出せません証明書」を出す手がある

巻末資料の障害年金の申請の方法についての解説で、「初診証明が非常に大事」ということが書いてあります。そこに、「初診証明が出せませんという証明書がある。そのことを書いておいてほしい、じゃないと、初診証明がとれなかったら障害年金の申請が通らないんだ、と諦めちゃう人がいるかも」というツッコミをいただきました。

ツッコミしてくださったのは、いつもTwitterで仲良くしていただいている「なん」さん。彼女はお子さん(もう成人してらっしゃる)に発達障害者がいるんですが、お子さんと今でもとても関係がよい。彼女の破天荒なほどに自由な子育ての話は、聞いていてなぜか私が癒やされるんですよねえ。

ちょっと記憶が定かではないのですが、下に貼る発売記念ツイキャスのどこかでこの「初診証明が出せません証明書」の話をしています。

そうなんですよ、あるんですよね、「初診証明が出せません証明書」。よく思い出してみると頭の中にうっすら知識はあったんですが、さんざん10万文字以上書いたあとでの最後のスパートのときで、もうヘロヘロだったのでうっかりしました、すみません…


なんさんが表現している「初診証明が出せません証明書」の正式名称は、どうやら「第三者証明」というみたいです。

厚生労働省での超わかりにくい通達はこちら↓

民間の法人による若干わかりやすい解説はこちら↓

ともかく、初診証明がとれなかったからってそれで絶望、なわけでは全然ないので、諦めないでね。あと、「通ってた病院がつぶれて資料もどっかいっちゃう」というのが、初診証明とりにくくなる原因のけっこう大きなひとつで、「でも確かにここに通ってたんです」みたいに主張するためには何か証明できるものが必要になるみたいです。普段から、通ったことある病院の診察券とか領収書とかはできるだけ捨てないでとっておく癖をつけといたほうがいいと思います。

今回はこのへんで。また何か思いついたら随時更新していきます。みんなげんきでのりきろう、いのちだいじに。

まだ買ってないよーって人はこのさい買っちゃおうぜ。損はさせないぜ。


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