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Webコンテンツ業界に来ている「オウンドメディア→プラットフォーム」の流れ。大丈夫、私はもう、さびしくない

Webコンテンツの世界には、「オウンドメディアからプラットフォームへ」の時流がきてるらしいです。ていうか、きてます。確実にきてます。

ライターとしてここ5年ばかり、Webコンテンツ業界の末端にいる私。最近になって、「過去数年で乱立していたオウンドメディアが、つぎつぎに閉鎖している」という噂をいくつも聞いていました。もしかして時代は変わってきてるんじゃないか、とうすうすは思っていたのですが、こんなイベントまで立っている。あ、このイベント今日じゃん。

いっぽうで、プラットフォームと呼ばれるたぐいのWebサービスが、どんどん勢いを出してきています。このnoteとか、最近リリースしたものでいうと『継続支援ビスケット』とか。

オウンドメディアとは、プラットフォームとは

オウンドメディアとは、日本語でいうと「所有されたメディア」で、Webコンテンツの文脈でいうと、企業とか団体が運営するメディアのことですね。企業イメージの向上や販促、マーケティングのためなどに、何年か前まではたくさんのオウンドメディアがつぎつぎにリリースされていました。

プラットフォームとは、「何かを動かすための土台となる場」みたいな意味で、Webメディアの文脈では、それこそこのnoteとか、最近リリースされた『継続支援ビスケット』みたいな、コンテンツをやりとりするための道具がひととおりそろった便利なハコみたいなものを言います。

ビスケットとnoteのおかげで燃え尽きから回復した

私はこの半年ほど、私にとって初めての出版となる本を書いていました。だいぶ削りましたが、一時は15万文字ほどの分量の原稿がありました。デビュー作、15万文字、しかも、内容は場合によってはちょっとした加減で人の命を左右しかねない福祉本。(※発売は9月末ですが、すでに予約受付中ですよ…! ですよ…!)

自分の言い回しひとつで、私の知らない誰かが生きたり死んだりしかねない。この大きなプレッシャーのもと、15万文字もの原稿を書いた私は、その時点でかなり燃え尽きつつありました。その後、やれ装丁だ、校正だと押し寄せるタスクに追い立てられ、責了(作業を終えて原稿を印刷会社に回す)までにはすっかり消し炭に。

だるい、眠い。本の作業が終わったら読もうと楽しみにしていた本が読めない。気分転換のために出かける元気も出ない。ブログどころか、Twitterで何か書く気にもなれない。

まるで呼吸するように読んだり書いたりしていた私。その私が読むことも書くこともできなくなるのは、死ぬのとほぼ一緒です。

8月17日、本当に思いつきで、フラフラと何かに導かれるように登録してみたのが、冒頭近くも紹介した『継続支援ビスケット」でした。ここで私は数日間のうちに、思ってもみなかった強烈な癒やされ体験をすることになります。

ビスケットでの癒やされ体験については、ビスケットでの以下のポストをご参照ください。熱量大きすぎ注意。

みるみるうちに元気になった私は、セルフケアのためのエネルギーを取り戻しました。「そうだ、こういうときにはこういう薬が効くんだった」とか、「1日に1回はストレッチとかラジオ体操しよう」とかできるようになり、友達に愚痴る元気も出てきた。

それで、障害持ちライターとしてマブダチの「くらげ」くんに、ずっとモヤモヤと気になっていたnoteについて、「noteをちゃんとやりはじめたいんだけど」と相談したのが8月27日。彼は月ぎめ購読タイプの質の高い有料マガジンをもう100号以上続けていて、私がnoteについて聞くなら彼が最適だったわけです。

するとくらげくんは、「noteについての本が出たよ」とリンクをくれた。見てみると、なんとちょうどその日の前日発売ではないですか! これはかなりナイスなご縁だと思い、即ポチりました。

マガジンのしくみや、実際に使いこなしている人の例を見ることができて、とても役に立つ本でした。今までわからなかった、みんながハマる理由、バズるけど燃えない理由なんかが初めてわかった気がしたのです。買った翌日28日に読み終え、プロフィールとかいろいろ整えた私は、その翌日29日には有料マガジンをリリースしていました。

そしたら、リリースしてから1時間ですでにお二人の方がマガジンごとご購入くださいました。その後も、マガジンの購入だけでなく、記事へのイイネや購入、サポートの通知がどんどん届きます。noteの通知欄に並ぶ色とりどりのアイコン。Twitterに届く、「記事を読んで気が楽になった」などといった反応。

文章をただ書きたいように書いてアップしただけで、即、私の脳に報酬汁がほとばしります。五里霧中で孤独に本の原稿を書いていたときや、必死で自分でコツコツとSEO対策とかしながらブログや仕事の文章を書いたりして、PV(ページビュー)に一喜一憂してたときとは大違いです。

ASD(自閉スペクトラム症)傾向のある私は変化や失敗を恐れるため、新しい行動に対して腰が重いのですが、いったん行き先や方向性が決まれば猛然と走りはじめます。そして、集中したときの作業のスピードが異常に速い。

上記の有料マガジンだけでなく、ほかのマガジンまで、毎日複数記事を更新しました。その私のスーパーダッシュを、読者のみなさんからの直接の反応が応援してくれる。

私は興奮や緊張が長く続いたとき、一度だけ軽躁状態のようになったことがあるので、軽躁にだけは気をつけようと思います。ただ、このようにして私は、ビスケットとnoteのおかげで、半月ぐらいのうちに燃え尽きから復活したのです。

プラットフォームは、さびしくない

元気になった私には、これまでを振り返る余裕もできました。本の原稿を書いていたここ半年のこと、本の企画が走りだした1年ぐらい前のこと、Webライターとして活動を始めた5年ぐらい前からのいろいろ。

振り返ってみて、私は三つのことに気づきました。

・私は文章を書くこと自体に疲弊していたのではない
・私はWebライターをやってきた5年ぐらいのうちに、徐々に疲弊してきていた。本の執筆の激務が最後のひと押しになっただけ
・ビスケットやnoteが私を癒やしたのは、これらが「プラットフォーム」だからだ

ビスケットやnoteといったプラットフォームの良さは、単に「読者の反応が即時的・具体的に届く」というところだけじゃありません。どちらかというとこれらプラットフォームは私たちに、「友人知人たちと井戸端に集まり、おしゃべりしたり物々交換したりする」ような行動をうながすように思います。

みんなで、オンライン上のある空間に、きゅうりとか小松菜とか持ち寄るみたいにコンテンツを持ち寄って、「大変だねー」とか「最近がんばってるじゃん」とか、「こないだもらったアレめっちゃよかったよ!」とか、「実は私あなたみたいになりたいんだよね……」「やだ…… 嬉しい……! 私最近へこんでたけど元気出てきた! もうちょっとがんばってみるよ!」とか言いあう。「なに、疲れてんの? これで美味しいコーヒーでも買いなよ。出世払いでいいよ!」とか言って500円玉を渡す。

これを、同じく障害持ちライターとしてマブダチの鈴木希望さんは、「毛づくろい」と表現しました。

彼女の絶妙な表現を受けて気づいたのは、「私は、Webで文章を売っていた間、ずっとさびしかったのだ」ということ。

私たちにはたぶん、動物の本能として、「信頼しあっている相手と毛づくろいしあいたい」という欲求があります。だけど、あまりに発達したインターネットは、私たちのその動物的でエッセンシャルな部分を置いてきぼりにしてしまった。

私は、文章を書くことに疲れていたんじゃない。「毎秒ごとに世界いっこぶんの情報がやりとりされる嵐の中で、たったひとりで虚空に向かってメガホン使って叫んで、知らない誰かに見つけてもらおうとすること」に疲れていたんだと思います。

たぶん私はもともと、不器用な自分が世界や人とつながるための手段のひとつ、つまり、人間的なコミュニケーションの方法のひとつとして、文章を書き始めました。何かしら、顔の見える人との物々交換の種として書いていた。きっと、ずっと幼いころからそうでした。

中高の頃、校内の文芸誌に投稿した文章を「よかったよ!」と言いにきてくれる同級生の子らとのやりとりの嬉しかったこと。あれから20年、いつのまにかWebで売文するようになって…… ともかくグーグル先生に気に入ってもらえるように必死に工夫するようになって、すっかり忘れていたよ。

ビスケットやnoteといったプラットフォームでは、中の人たちが人力で魅力的なコンテンツを拾い上げ、拡散しています。

なんでもかんでもに対して安易に「人の手で作業したから温かみが伝わる!」なんて言うのはぜんぜん好きじゃないけど、プラットフォームのこの人力システムに関しては、やっぱり言いたい。どうすれば喜んでくれるのか結局のところ誰にもわからない、巨大なカオナシみたいな何かのご機嫌を伺いつづけることから降りて、私たちの動物的な、互いにつながり助けあおうとする良き衝動に賭けてみること。これが、結果的にインターネットを平和で文化的な場にしていくのではと思います。

プラットフォームでは、人の顔が見える。体温が伝わる。互いに毛づくろいができる。だから私はもうさびしくないし、こわくない。

猫も杓子もSEOな、アルゴリズムに支配されたオウンドメディアの時代から、ヒトが毛づくろいしあえるプラットフォームの時代へ。このように時代が移り変わってきたのは、元来動物である私たちにとって、とても自然な流れなのだと思います。

大丈夫、私はもうさびしくない。書いていける。もっともっと書いていける。どうぞみなさん、これからもよろしくね。

本も買ってね。もう一回貼っとくよ。うふ。


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