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『インテリアデザイン・マスター』から学ぶ、インテリアを知ることば

4月からNetflixデビューをしまして、かなりハマっています。主に毎日のたのしみであるお昼のドラマのバリエーションをふやしたくて契約したんですが、映画やドラマ以外にドキュメンタリーが充実していてとてもたのしい。

夢中になったのはイギリス製作のバトル系リアリティ番組『インテリアデザイン・マスター』。プロのインテリアデザイナーを目指す10人の男女が、勝ち残りで競い合います。モデルルーム、店舗、ホテルや住宅など求められる機能が異なる空間で、狭小空間の活用やいかにラグジュアリーを感じさせるかなどさまざまなテーマで取り組みます。

しかも単にデザインを提案するだけではなく、自分たちの手も使って作らなければならないんです。プロの職人さんもいるのですが、なにしろ時間が限られているので頼めることは限られてきます。先日から自分の手を動かしながらリフォームを目指しているわたしも、かなり刺激をうけました。

実践でのむずかしさがよくわかる番組

全8回をとおして、インテリアデザイナーとしてどんな資質が求められるのか、どんな能力が必要なのかがとてもよくわかります。デザインが得意なのはもちろんで、予算配分や時間配分、職人への指示が的確か、現場の雰囲気作りやチームワークができているか、クライアントの要望に沿っているか。

それらができていても、デザインの能力に光るものがなかったり、果敢に限界に挑戦しなかったことで落とされてしまう。その厳しさがとてもよく伝わってきました。

今日はそんな番組から、いくつか記憶にのこった言葉を紹介します。

「デザインは買い物ではない」

モデルルームでクッションやぬいぐるみにあふれたかわいい子供部屋をつくったジェロームに、ファッションデザイナーのマシュー・ウィリアムソンがいった一言。「(彼がつくった部屋は)デザインではない。デザインは買い物ではない。」という批評でした。買ってきたものを並べているだけ、自分できちんと作ってない」という言葉はわたしにもぐさっとささりました。

このあたりはインテリアデザイナー、インテリアコーディネーター、インテリアスタイリストの違いだとも言えますが、デザイナーと名乗るからには人が作ったものを組み合わせるだけではダメだということですよね。

おっしゃるとおり海外のインテリアデザイナーたちは、物件ごとに家具や照明はもちろん、壁紙や生地からデザインしたりしていますが、正直かんたんには真似できない世界だと思っていました。でもこの番組のデザイナーたちはかんたんなDIYでベッドのヘッドボードや生地の張替えもしていて、クリエイティブであるために大切な貪欲さを教えてもらった気がします。

「模様にも言葉があるの」

こちらは番組総合審査員である、元エル・デコの編集長ミシェル・オグンデヒンの言葉。時代も国も異なるパターン(模様)をあえて重ね合わせるジューに対し、きつい一言。

でも、違いがわかるかしら?
意外と合う模様と、単に合わない模様のね

これはわたしも、とても大切なことだと思っています。模様にはそれを生み出してきた背景があります。そうしたストーリーや背景そのものも、模様がもっている魅力であり力だと思います。

インテリアにもファッションにも「柄on柄」コーディネートはありますが、柄がもっている背景を知った上であわせるべきで、それを知らないと見た人に別の印象や感情を与えかねないものです。デザイナーは狙った効果に対して、最適な方法で実現するべきで、曖昧でぼんやりとした手法は好ましくないということがよく分かる批評でした。

「自分らしさは残せるし、切り離さないように。賢くつかうんだ」

シーズン1をとおして、自分らしさと自分の欠点に真摯に向き合ったのがフランクです。自信家で皮肉屋、協調性がなく、人の意見にも耳をかさなかった彼が、回を重ねるごとに「できない自分」に向き合っていく。ところが同時に、彼のオリジナリティはなくなってきてしまうんです。そんな彼にローレンス ルウェリン=ボウエンはアドバイスした言葉です。

プロの仕事だからこそ、クライアントの要望に沿ってないもの、予算におさまってないもの、機能を果たしてないものは完全にアウト。それがアートとは違います。でもいっぽうでシリーズを通して求められてきたのは部屋に入ったときに驚きをもたらす「ワオ!ポイント」だったり、クライアントが知らないような世界を見せてくれる、要望以上の提案。

わたしも日々むずかしさを感じています。毎回ゲストにくるインテリアデザイナーたちの批評に唸らされるのは、かれらも実践をとおしてオリジナリティと現場の処理能力の間で苦しんでるからなんでしょうね。

「コンセプトを高品質にしあげるのが、良いインテリアデザインなの」

こちらも総合審査員、ミシェル・オグンデヒンの言葉。彼女の言葉ひとつひとつがとても理知的で、プロジェクトの目的や審査のポイントを毎回的確に伝えてくれて、番組をより魅力あるものにしてくれています。毎回どうしてこの人が落とされたのかが納得がいきます。

しかしほんとうにハードな番組です。チームですり合わせるっていったって時間がないし、工事って壊してみないと予測できないことの連続だったりするし、造作も含めて2日間で仕上げるなんてぜったい無理!と毎回思ってました。

でもこれからインテリアデザイナーを目指す人にはとてもおもしろいと思います。いろんな要素がつまっているし、それを可能なかぎり伝えてくれています。デザイナー像もいろいろあるのがわかるし、人は成長できる!と前向きにもなれました。

個人的に面白かったのは、イギリスは女性の職人さんが多いこと。日本ではまず見ない現場風景です。

インテリア系のドキュメンタリーが多いので、また面白いものがあればご紹介していきます!




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