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【最終回】国内外IEO事例から考える、その違い

前回はIEOについて良いIEOと悪いIEOという観点からどのような差分があるかを見てきました。

今回は最終回として、国内外のIEOについて実際の事例を元に前回お話したトークンのアロケーションなどを具体的に見ていくことで、そのプロジェクト毎の考え方などを理解いただけるのではないかと思っています。
また、IEOを行うプラットフォームについても一部違いや仕組みをご紹介していきます。

日本でのIEO事例

まず、国内のIEO事例及びIEO環境からご紹介していきましょう。
日本ではIEOを可能にする為のルール整備が既に整ったこともあり、2021年から正式にIEOを行う企業が登場してきた様相を呈しています。

IEOの実施には、自主規制機関であるJVCEA(日本暗号資産取引業協会)及び金融庁の審査が必須となり、この箇所の中で当該IEOにおいてどのような意図で行うものなのかや、その妥当性、リスクについて確認がなされることとなっています。

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https://hashpalette.com/

2021年7月1日にコインチェック社が実施した、HashPaletteプロジェクトにおけるPaletteトークンのIEOは国内初のIEO事例であり、IEOを期待していた日本ユーザーや、はじめてこの機会にIEOを知った株式市場などをメインにしている投資家などの熱視線もあり、申込金額は調達希望金額を大きく超える224億円に達するなど日本におけるIEOの可能性を感じる結果になっていました。

HashPaletteのトークンアロケーション

  • 総発行トークン枚数:1,000,000,000 PLT

    • エコシステム報酬:340,000,000 PLT(34%)

    • チーム⾃⼰保有:270,000,000 PLT(27%)

    • 投資家保有(IEO販売):230,000,000 PLT(23%)

    • パートナー報酬:160,000,000 PLT(16%)

IEOセール価格

  •  1PLT = 4.05円

【出典】ホワイトペーパー
【参考】2021年12月時点のPLT価値:1PLT = 約51円

このように、HashPaletteでは、全体の23%をIEOにて販売する方法を採用したトークン設計を行っています。なおIEO後でもエコシステム報酬分をあわせると運営会社チーム側は総発行量の61%にのぼるトークンを依然保有しているといったことがこのアロケーションから読み取れます。
なお、開示されている中では、既にトークンを売却したプロ投資家のような存在はなく、初めてのトークン売却をIEOで実施したことが確認されています。

2021年12月現在、国内でコインチェック社に続くIEOは実施されておらず、どのようなプロジェクトが比較的厳しいとされる審査などを通り、IEO実施に踏み切れるのかといった点に注目が集まっています。

海外でのIEO事例

海外事例としては最も大きなものとしてご紹介させていただくとすれば、2020年10月にBinanceの行うBinance Launchpadで行われたAxie InfinityのガバナンストークンであるAXSではないでしょうか。

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https://twitter.com/binance/status/1320636474363158530

Binance LaunchpadはこうしたIEOを実施するBinance内のシステムで、自社トークンであるBNBの保持枚数などで参加権が付与されます。

また、Axie Infinityはブロックチェーンゲーム分野で最も注目されているゲームタイトルで、Play to Earnを掲げる、ゲームを楽しむことで経験値であったりゲットしたトークンやNFTを売却でき、ゲームを経て暗号資産を稼げるという内容で世界中で熱視線を帯びているブロックチェーンゲームタイトルです。

Axie InfinityのAXSのIEO詳細

  • トークン名:Axie Infinity (AXS)

  •  調達金額上限:2,970,000 USD

  • 総トークン数:270,000,000 AXS

  • Binance Launchpadにおける売出し最大トークン数:29,700,000 AXS (11% of Total Token Supply)

  • IEOでのトークン価格:1 AXS = 0.10 USD (price in BNB will be determined prior to the lottery draw date)

  • トークンセール形式:Lottery

  • 最大購入可能トークン数:14,850

  • Winning Ticketあたりの購入金額:200 USD (2,000 AXS)

  • IEO参加に必要な暗号資産:BNB only

【出典】Binance(一部翻訳)

このAXSでは一般的なIEOと異なり、IEO当時既に動くブロックチェーンゲームとしてのAxie Infinityが展開されており、アーリーアダプターを中心としたユーザーを巻き込んでいた状態でのIEOに踏み切れたことが一つの成功要因であるともされています。

Axie InfinityのAXSのトークンアロケーション

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https://whitepaper.axieinfinity.com/axs/allocations-and-unlock

IEOで売却されたAXSトークンはあくまで全体のアロケーションにおいては11%にとどめており、このIEOを超す全体の20%にのぼるAXSトークンは、ゲーム内で報酬として配られることがわかります。

なお、このIEOで販売されたAXS自体は実は2021年10月時点ではガバナンストークンとしての機能はほぼ使用できるようにはなっておらず、ブリーディングと呼ばれるAxieのキャラクター同士の交配など特定のシーンでのみ使用可能となっています。

それにも関わらず、2021Q2、Q3のAxie Infinityの快進撃とも言えるユーザー数の伸び率や、高いプロトコル収益率を示すことができたことが相まって、AXSは2021年10月上旬で、$134を超える価格で取引がされています。IEO時点での販売価格が$0.1であったことを考えると、この価格が維持されていることには驚く方も多いのではないでしょうか。

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https://p2enews.com/news/axie-infinity-crosses-300000-daily-active-users-is-this-just-the-beginning/

実際にAxie Infinityのブロックチェーンデータを解析するサイトを覗いてみると、2021年に一気にAxie(NFTキャラクター)を保有するウォレットアドレス数が増えていることがわかるかと思います。このような事態を生み出せたところの追い風としても、2020年のIEOがあったのではないかと考えられます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
国内外ではIEOについてその開始時期や、環境が大きく異なることが言えるということがお分かりになったかと思います。

ただ一方で、日本語での対応やアナウンスなどを行う日本国内で行うIEOについては、やはり日本の方がアクセスし購入判断できる情報を受け取れる機会であるとも考えられます。
今後の日本でのIEOなどをウォッチする際には、
・海外では今どのようなIEOが出てきているのか?
・それはどんなトークン設計をしているのか?
・価値の源泉として、どのようにトークンを使っていく予定なのか?
・そのDapps、ブロックチェーンゲームは既に動く・触れるものなのか?
といった情報を収集しながら、随時ご自身の中で判断をしていっていただければ幸いです。

■本記事は、Fracton Ventures株式会社(https://fracton.ventures/)による寄稿記事となります。
■本記事はトークンの利用を推奨するものではなく、あくまでテクノロジーの視点から、イノベーションが起きている現場をお伝えする情報発信の趣旨で制作しております。
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