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【実験結果③意思決定の分析】『Decomposing the Immeasurable Sport: A deep learning expected possession value framework for soccer』【リーガ・エスパニョーラ】

MIT Sloan Sports Conference2019で発表された 『Decomposing the Immeasurable Sport: A deep learning expected possession value framework for soccer』という論文の実験結果を紹介するシリーズ第3弾は意思決定の分析(5. Decision making analysis)です。

1. シーンごとのEPV(ポゼッション期待値)の変化

バルセロナのビルドアップ→前進→アタックという一連の攻撃における各シーンにおける各種EPV(ポゼッションの期待値)の時系列的変化を示した図になっています。上段のグラフでは黄色とオレンジが最良の、そして2番目のアクションを起こした際のEPVで、青が最悪のアクションを、そしてピンクが実際にバルセロナの選手が選択したアクションによるEPVの値となっています。

1. ボールを持ったセルジ・ロベルトは中間ポジションを取っているイニエスタへのパスではなく、自らドライブしたためEPVは減少
2. セルジ・ロベルトは2番目に良いアクションであるバックパスをしたため、EPVが増加
3. メッシは前方にEPVを向上することのできるパスコースを持っていたが、EPVを減少させるアクションであるドリブルを選択(このモデルは選手個々の属性情報までは加味されていないため、メッシの個の力を反映できていない)
4. メッシがボックス内を外方向にドリブル。パスやシュートの選択肢がなくなったため、EPVは減少
5. メッシのクロスから最良の選択肢を選んだパウリーニョのヘッドでEPVが向上。

こうして、モデルで学習されたEPVをポゼッションのフレームごとに算出することにより、意思決定の定量的な評価、解釈が可能になりました。しかしながら、メッシの例のように選手情報が加味されていない部分や、体の向き等まだまだ学習すべき対象は多そうです。

... 論文の実験結果を受けて

西原さんのnoteに記載があった「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」での川上さんの言葉と、西原さんのそれに続くコメントがすごく心に残っています。データの正しさを証明するために働いていないか。このnoteでも意思決定の評価を試みていますが、これを使うのは人間だし使い方を間違ってはいけないかなと。自分の中でもまだまとまっていませんが、まずは学術的な側面から日本のスポーツデータの分析を引っ張っていければと思います。

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