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百島のキシ子さんの「ぶどうすすり」grandma's life recipes

「もどりうけ」をつくり終えると、 「ぶどうすすりもつくろうか」と、キシ子さん。

「この季節にぶどう?」 と思ったら、昔から豆の栽培が多かったこの島では緑豆が「ぶどう」という名で呼ばれているらしい。緑豆とサツマイモ、そして白玉粉と上新粉を使ってつくる「ぶどうすすり」は、おぜんざいのようでいて小豆よりも胃に優しいという素朴なおやつだ。

「昔はな、家族が多いから綺麗に丸める時間も無くて、ぎゅっと片手で握ってそのまま入れたんよ」と、白玉粉と上新粉を捏ねたものを片手で適当に掴んで団子にして、緑豆を煮た鍋にほいほいと入れていく。味付けは砂糖とほんの少しの塩だけ。団子に火が通れば出来上がりだ。キシ子さんにも子どもが3人いて、お腹が空く時間にはこのおやつを度々登場させたのだそう。

 近所の西野家と一緒に食卓を囲む。キシ子さんたちは「素朴な料理」と言うけど、テーブルの上いっぱいに並ぶごちそうだ。この超少子高齢化の島で生まれた西野家の長男恵太くん(1歳)は、まるで島の全ばあちゃんの孫のような存在で、キシ子さんと早智枝さんも、その小さな動きひとつに溶けてしまいそうなほどに目を細める。
 そんな温かい視線を浴びながら、恵太くんは脇目も振らず、もどりうけとぶどうすすりをモグモグと口に詰め込む。もどりうけの滋味深さやぶどうすすりの柔らかな甘さは、子どもにも伝わるのだろうと思う。

 さらに、おやつにと出してくれたのは、朝、海辺で獲って来てくれた2cmほどの巻き貝。地元では「アモナ」と呼ばれて、茹でておやつにされてきた小さな貝だ。なんだか癖になる食感と小さいながら生命力を感じる味。だけど、最近はほとんど食卓に上がるのを見かけないそう。「私も久しぶりに獲ったわ〜」と早智枝さん。

針でくるりと身を取り出しながらキシ子さんが言う。「アモナは、アンモナイトからきてるんかなと思うんよ」。確かにちょっと古代を思わせるルックスをしてはいるのだが、どうだろうか。

「それにね、この島のあたりは昔、海賊の通り道だったみたいで、私の先祖も海賊かもしれんよ。私、どこかにその宝がまだ隠れているんじゃないかと思いながら散歩するんよね」

 油断したタイミングで繰り出されてくるキシ子節がなんともチャーミングで、ついみんなして笑ってしまう。

 男性がこぞって出稼ぎに行くこの島では、女性たちが島に残り、農業をして子どもたちを育ててきた。そして、夫たちが帰ってくれば急いで料理をしてそのお腹を満たす。西野さん一家を、そして突然訪れた私のことも家族のように迎えて、小さな身体をシャキシャキと動かして笑顔で料理をして、たっぷりとごはんを食べさせてくれたキシ子さんにその話を聞いて、「なるほど」と、この島育ちの女性の強さに納得してしまった。

【ばあちゃん訪問】
中村 優(なかむら・ゆう)
タイ・バンコク在住の台所研究家。『40creations』代表。大学時代にさまざまな国をまわる中で「食は国境や世代を超えて人々を笑顔にする」ことを実感。2012年、世界各国の地域からの「とびきりおいしい」をおすそ分けするサービス『YOU BOX』スタートと同時に、世界中のばあちゃんのレシピ収集を開始。3年間で15カ国の100人以上のばあちゃんたちと台所で料理しながら会話し、彼女たちの幸せ哲学を書き上げた『ばあちゃんの幸せレシピ』(木楽舎)著者。2018年、タイにてTASTE HUNTERSを現地パートナーとともに立ち上げる。
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伏見 町子とdeep line trip

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