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自動運転はどのような形で実現されるのか

自動運転のナカミ⑦ 【未来編】

この記事の目的

事故や渋滞が無くなる!運送業が効率化する!時間が節約できる!…という明るい話から、事故の責任は誰が負うの?車がハッキングされたら?AIとかロボットに運転任せるの怖い…という心配になる話まで、色々な議論がされている自動運転技術。しかしそう言った自動運転が来る来ないという議論を盛んにしている一方、自動運転がどのようにして動いているのかなどと言った中身の深いところまで詳しい方は少ないのではないでしょうか。私はというと、数年前にこの技術を知って以来すぐに進路を変え自動運転研究室に入ったり、研究室入る前から有料オンライン講座(計約30万円…汗)で学んだりと、この業界のキャッチアップに勤しんできました。そこでこの記事を通して自動運転技術の中身を噛み砕いて紹介することで、より一層深い議論ができたり、この産業に張るか張らないかを考えて頂けたらなと思います。

ここまでの連載で、自動運転の大まかな仕組みも分かってきたかと思います。

第7回目の本記事では、実際に自動運転はどの様にして実用化されるのか、自動運転のある未来とはどんな感じになるのかということを想像してみましょう。本記事ではまだ研究段階であるものも含めて、様々な自動運転アイデアを紹介したいと思います。果たして、従来の乗用車が形そのままでただ自動化するだけなのでしょうか?

ロボットタクシー化

これはもう散々言われている事ですが、全部自動運転車になったらもはや車は所有するものではなく、みんなライドシェアで移動する様になるという未来です。

バスよりも細かな場所へ移動できるドアtoドアの新しい公共交通機関です。人件費がかからないためタクシーより低価格になり、更に車両は会社持ちなので(初期費用が高い代わりにランニングコストが安い)電気自動車になるだろうと期待されています。無人タクシーは1日中ずっと稼働してれば駐車場は必要なくなるので街の形は変わり、免許証も要らなくなるので産業も変わるでしょう。だからUber, Lyft, DiDiなどのライドシェア企業達がこぞって力を入れているのです。

信号機もなくなる

街の形が変わると言えば、信号機がなくなるかもという話もあります。全部自動運転車になって車両同士が通信し合える様になると、お互いの走行コースを照らし合わせてスピードを調整することで、交差点を止まらずに曲がれる様になるという考え方です。

これはMITの研究室がシミュレーションしたもので、(例え交差点突入時はスピードを落としたとしても)最適化したノンストップな曲がり方の方が結果的に早く交差点を突破できるよ、という動画です。この信号機に頼らないシステムを導入するには、車両同士が通信し合えるV2V (Vehicle to Vehicle) という技術の実用化が必要となります。

パーソナルモビリティ化

こちらはちょっと変化球ですね。何も4人乗りの金属の塊ではなく、1人乗りのモビリティロボットが自動運転化し、それが次の主流移動手段になるという未来です。イメージは、Whillが近いかなと思います。

もうこうなると駐車場や信号機とかの前に、そもそも車道と歩道の区別がなくなりますよね。自動運転の研究開発に力を入れている大企業のほとんどが「従来の自動車の形をなるべく崩さずに自動運転化する」方向で戦っていますが、もしかしたらそれはただ既成概念に囚われているだけで、将来普及する自動運転の形はそもそも自動車ではないのかもしれません。というかそもそも、なぜフォードは大量生産成功時に複数人乗りを想定したデザインにしたのでしょうか。もしあの時1人乗りを想定したデザインから始まっていたら、今ほとんどの車はただ空気を運んでいるという問題はなかったのかもしれません。このパーソナルモビリティ自動運転化の将来像については、以下のサイトでホリエモンが詳しく語っています↓。

もはや空飛んでんじゃね

そもそも自動車の形じゃないかもしれないという意味では、空飛ぶタクシーが実現するかもしれないという話もあります。こちらは多くの説明は要らないかと思いますが、1番のブレイクスルーのポイントはドローンを始めとする「垂直離陸」の技術革新だったと思います。やはりここでもUber、航空系の強いフランスに研究所を設立するなど、交通手段に革命を起こすのに非常に力を入れています。Uberはニュースになる問題を起こしたりもしますが、いや〜その行動の速さは圧巻ですね。

"Closer than you think" って痺れるコピーですね……(Chainsmokersじゃないですよ笑)。

また空飛ぶタクシーで言ったら、こちらのスタートアップも注目です。こちらは第1回記事でも出てきた自動運転の父と呼ばれる Sebastian Thrun が立ち上げた企業です。

coraという名の複数人乗り飛行タクシーの他に、どうやらFlyerというパーソナル"フライング"モビリティも開発中のようです。これは期待ですね。

リモートドライバーが代わりに運転

大分先の時代を想定して話してきましたが、とは言え完全自動運転技術はまだ完成していませんし、完成後に全世界に普及するまでにも時間を要します。そう言った過度期にとてもぴったりなソリューションだと個人的に思うのが、このリモートドライバーによる運転代行です↓。

自動運転車が判断しづらい状況に出くわした時(例えば道路工事をしていていつもと形が違う等)に、また自動運転モードが再開できるところまでリモートドライバーが運転を代行するというベンチャーです。今後5G通信が普及すれば(少なくとも自動運転の普及よりかは早いでしょう)、車載カメラからの動画やリモートドライバーからのハンドル指示は遅延なしで届けることができますし、それこそリモートドライバーはVRを使っても良いかもしれません。タクシーの運ちゃん達をみんなこれに転職させればいいと僕は思うんですけどね……。

自動運転業界にとっての2017年は、スマートフォン業界の2007年(iPhoneが生まれた年)に似ていると言う人もいます。スマホは10年間かけて画面がでっかくなったり小さくなったり、指紋認証になったり顔認証になったり、物理ボタンが背面についたり無くなったり……などの淘汰を繰り返して進化しながら人々の生活に浸透して行きました。2007年当時、スマホの画面がまさかノッチ(切り欠き)型になるとは誰も思わなかったでしょう。それと同じく自動運転の最適な形を現時点で予想する事はできず、時には「何だよこれ…」と思わざるを得ない形を経たりしながら、今後10年単位の時間をかけて浸透していくのだろうと思います。

今回は自動運転の未来の形を色々紹介しました。次回からは自動運転技術をオンラインで学べると話題のUdacityについて紹介していきます。それでは次回は実際に受講した感想なども含めて、【Udacity 前編】を書こうと思います。

文:川西発之 / 陳発暉 (Twitter/note)
プロフィール:Deep4Drive開発メンバー。高専情報科(C/C++)→大学機械科→HWエンジニアインターン at ドローンベンチャー(Python)→SWエンジニアインターン in NY(PHP)→ニートしながらアプリ開発(React Native)→大学院で自動運転の研究(C++)。日本生まれの純血中国人🇯🇵🇨🇳

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