[果たしてジュディはえらいのか?]ズートピア

映画感想の時間です。今回の内容はツイッターでもぼちぼち呟いたことなのでそれを見てる方にとっては内容が重複してるように感じるかも?ごめんなさい。

ヴィランズ目当てにDisney Heroesというスマホゲ―を始めたらニック・ワイルドというやたらセクシーなキツネを手に入れたので出典であるズートピアを観ました。

☆基本情報
『ズートピア』(原題:Zootopia)
公開年:2016年
監督: リッチ・ムーア、バイロン・ハワード
主演:ジニファー・グッドウィン(声)
ジャンル:ディズニー、ファンタジー、社会派
予告編

~~~~~~~~~~~~~~

前から「がんばる女の子!」的な部分が持ち上げられてたのは知ってたので正直観てもイライラして終わるだけかな~と思ってましたがどっこいここ数年の3Dアニメ映画の中では一番面白かったです。

内容は警官であるウサギの女の子・ジュディが、詐欺師のオトナのキツネ・ニックと組んで国家犯罪を解決するというもの。いわゆる真面目&おちゃらけの王道バディ犯罪捜査モノです。ただ、楽しいだけの痛快クライムアクションではなく、ほぼ全編に渡って現実世界での社会問題(差別・テロ・格差など)をこどもにもわかりやすく取り上げているため、そういう点では説教臭い雰囲気もあります。早いうちに「ああそういう系ね」と切り替えて観る分には問題ありません。ただなにも知らず、そんなものを観る気分じゃないときに観ちゃうと不満は残るかも。

で、私は楽しんだわけですが、TV放映時かなんかでやけに流れてきたレビューツイート群で持ってた情報とはかなり違うなと感じたわけですよ。今回はそのあたりを書いていきたいなと思います。もちろん個人の感想です。

まず、ズートピアを見るだいぶ前にツイッターから流れてきたツイートで記憶に残ってたのがこんな感じ。
・ジュディは差別に立ち向かう現実の女の子の象徴
・アナ雪と流れを組む、自立した女性を描いた映画
・(ジュディは駐車違反の取り締まりに対して差別意識を持っているというツイートに対して)ジュディは希望と違う場所に配属されたので怒るのは当たり前。差別してきたのは向こうが先。

特に3つ目のはなんか知らないけどすげぇ印象に残ってて、これらの多くのツイートから「ズートピアは女の子が差別に負けずに頑張って生きる映画なんだな(興味ねぇ~)」というイメージを持ってました。

まず最初にわかりやすいところから書きますが、三つ目の駐車違反云々は個人的には「ジュディの差別意識」で合ってるんじゃないかと思います。希望の配属にならなかったことに対して署長や警察署に腹を立てるならわかりますが、ジュディの態度や言動から明らかに「農家や駐車違反の取り締まりは世界を良くする仕事ではない」という価値観が見て取れるし、ここはやっぱりジュディの潜在的な職業差別の意識を強調してるんだと思います。

で、ここで一旦ジュディの差別意識は置いといて、「ズートピアの駐車違反監視員どういう扱い問題」の話をします。日本社会の監視員さんは警察官ではなく、署から委託を受けた法人の従業員さんがやってくれています。取り締まりをしている間、監視員さんは公務員とみなされます。もしズートピアが日本と同じ制度ならジュディは本物の警察官なのに署長の一存でそう扱われなかったことになるので(資格・権利のはく奪)、これはかなりの問題です。しかし、海外の多くの国ではざっと調べた限り、やっぱり切符を切るのは警官の役目らしいです。ズートピアの住民が切符を切ってるジュディに向かって警官さんと呼んでいたのを見るに、ズートピアも海外と同じ制度ではないかと思います。

この仮定を以てジュディを見ると、やっぱり職業差別(っていうか業務差別?)があるんじゃないか?となるわけです。もちろんポゴ署長は「新入りは監視員でもやらせとけ」という差別的かつ嫌がらせの文脈でジュディを配属させてるわけですが、この嫌がらせはジュディにも「監視員なんかやってる警官になりたくない」という意識がないと成立しません。だからここで描かれてるのは女の子だから差別~とかウサギだから差別~とかじゃなくて、住民共通の差別意識を利用したパワハラなのではないかと感じました。あ、ポゴ署長がやたらえっちなパワハラクソ上司なのは否定しません。(ただ女性蔑視者というよりは無差別新入りいびり野郎のように感じます。)

長くない?

まあ自分用メモみたいなとこもあるので気にせず書きますけど、結局ズートピアって全編その話をしてるんだと思うんですよね。社会に浸透した「常識っぽい差別」がテーマなんだと思います。例えばシロクマは乱暴とか、ウサギは役立たずとか、人間で言うなら女はヒステリックとか男は絶対痴漢してくるとか、そういう常識なのか差別なのか曖昧になってるところを取り上げたかったんだと思います。
そして、ジュディはたまたま親友が肉食でキツネで、たまたま大きな犯罪をきっかけに自分の差別に気づけたけど、普通はそうそうそんなことには気づけないんだよ(だから自分のことを振り返ってみてね)というのが作品に含まれたメッセージじゃないでしょうか。少なくとも私が感じたのはこんなあたりかなあ。

とにかくジュデイは差別に立ち向かうスーパーラビットガールなのではなく、全人類がそうであるようにジュディも差別者であり被差別者であるのだと思います。フラッシュが仕事をしてくれたとき、ジュディは彼から紙をもぎとって出て行ってしまいますが、ニックはちゃんと彼にお礼を言います。こういう描写は「誰かに嫌な思いをさせられてるときに、自分も誰かに嫌な思いをさせてるかもしれない」という意図を含んでちりばめられてるように感じますし、やっぱり女性が!とかじゃなくて老若男女全てに向けられた物語じゃないかと思います。語尾思いますばっかりだな。

まあそれで個人的に面白いのがライオンハート市長の存在で、あいつはどう見ても政治のことしか考えてないえっちなライオンなんですけど、いろいろジュディたちの件が終わって最後のほうに流れる「私は市民のためを思っていた。しかし手段が間違っていた」というライオンハートのインタビューがあるじゃないですか。あれを聞いて「嘘つけまた政治家が調子いいこと言いやがって」と思うのか「本当にそう思ってたのかもしれないな」と思うのか、かなり分かれ目じゃありません?ジュディの物語を見た後で意識を変えられるかの分かれ目。私はもちろん前者でした。


☆評価(各☆5つで満点)
おもしろさ:☆☆☆☆
画の綺麗さ:☆☆☆☆
テンポの良さ:☆☆☆☆☆
キャラの良さ:☆☆☆☆
署長と市長はカプっていうか二人まとめてえっちな目に合ってほしいという気持ちが強いですね:☆☆☆☆☆


ヴォンボに投げ銭して運気を上げよう!