背負うもの

3月29日、全ジャニーズグループの1発目といういささか重い期待を背負い、SexyZoneは無観客の横浜アリーナに登場した。セトリはSexyZone(曲)、RUN、MELODY、cha-cha-chaチャンピオン、勝利の日まで、勇気100%というラインナップで、所謂いつもの定番ではなかった。成る程、この出口の見えない沈鬱な状況下の中で開催されるライブにピッタリな選曲だった。そんな彼らが一発目だったから、当然他のグループも自分達の持ち歌の中でそういうメッセージ性の濃い曲を披露するのかと思いきや、意外と定番だったり盛り上がり系だったり、各々の得意分野でステージを作るグループが多かったような印象を受けた。"少しでも皆さまに元気と笑顔をお届けする"というのがこのプロジェクトの理念だから、勿論それで正しい。今回のコンサートには、正解もなければ間違いもない。実際、あまり詳しくないグループでも有名な曲は楽しく見れたし、溌剌とした笑顔で歌われるアップテンポの曲には自然とこちらも明るい気持ちになった。そして全編が終わってみて、ちょっとだけ、ほんの少しだけ、こんな他担がたくさん見てくれる機会またと無いんだし、セクシー達ももう少し初見の人が興味を示しやすいキャッチーな曲をやってもよかったんじゃないかなーなどと、少しの色気も見せなかった彼らの真面目さや不器用さを愛おしく思うと同時に歯痒くも思った。
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6月17日、SexyZoneは2日目の2番手として登場した。ポプステの曲で固めてくるか?ド定番で来るか?はたまた俄かに謎のブームが沸き起こっているDuバィを捻じ込んでくるか?など様々な切り口からセトリ予想大会が行われていたが、実際に披露されたのは、RUN、定番メドレー、極東ダンス、麒麟の子、SexyZone(曲)というラインナップで、前回よりもやや定番に寄った、最新の彼らをコンパクトに表現したような選曲だった。…ように見えたけど、そこに『君だけForever』が入ることは誰も予想していなかったと思う。その『君だけForever』に入る前のMCで健人くんは「今、僕たちは数ヶ月前と比べると気が少し緩んでる状態だと思います。しかし、小さな油断が大きな危険にも繋がりかねないですし、僕たちは周囲の人を今まで以上に想い、愛し、守りたいと思っています。そのStaySafeという言葉を胸にこの曲を届けたいと思います。世界中の皆さんに届けます。」と語りかけた。嘘や欺瞞のない、真っ直ぐな目だった。遠くまで届けるようでいて、それでいてすぐ傍の誰かに囁きかけるような凛として親密な声だった。

何でそんなに背負うんだろうと思った。いつも。どうしてただでさえ幼い頃から他者に色んなものを背負わされてきた彼らが、更にまだ自ら何かを背負おうとするのだろう。正直、今回もそんな諫言を呈さなくても流れ的には問題ない雰囲気だった。あぁ楽しかったねで終わらせることが出来る場だった。「気が緩んでる」なんて、もしかしたらどこかの誰かの癪に触るかもしれない言葉、わざわざ言わなくても成り立つ場だった。それでも彼らはチャリティーコンサートという名目のもと、あえてそれを伝えることを選んだ。殊に健人くんは医療従事者にインタビューを行った経験上、よりその思いが強かったのかもしれない。

彼らはよく一番になりたいと口に出す。アイドルとして一番になることそれ自体が目標ではなく、一番になったその先で実現出来ることを見据えた目標だ。そしてその目標は彼らが他人から背負わされた十字架ではなく、自らの意志で背負ったミッションだ。きっとずっとそういう思いでいたのだろうけど、私はあの日のステージで初めて本当の意味で彼らの目指すところを理解出来たような気がした。彼らが背負ってきたもの、そして自ら選んで背負おうとしているもの、そのどちらもが彼らを構成する不可欠な要素で、そのどちらをも愛していきたいと思った。
"守る"というメッセージ性を強く押し出したステージの中で、「君だけForever 守るよForever」と魂の底を鳴らすように歌い上げる4人の歌声は、言葉の力を信じている人の声をしていた。私がSexyZoneを信頼している理由の一つに、彼らが言葉の力を信じているところというのがあるのかも、と、その時初めて気付いたような、でも昔から知っていたような不思議な心地になった。
これはただの願望だけど、彼らが自らの意志で背負うと決めたものの中の一つにファンの存在があればいいなぁ。そして、彼らが背負うと決めたものを愛すこと、それが巡り巡ってきっとGo Love yourselfになるのだろう。

#JWHLwY20200617

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