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EDUTRIP in タイ 2018 Report #2

現地滞在2日目は、午前中に仏教系のオルタナティブスクール、午後に仏教国タイにおいて、ムスリムの子どもたちが多く通う学校を訪れました。
 
朝ホテルを出てバンコク市内をミニバスで進み20分ほどで、「Tawsi school(トーシースクール)」に到着。

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ベンツやフェラーリがズラッと並ぶ駐車場に「おお...」と驚く一同。
今のタイは、すべての子どもが学校に通えるようにという点については、この前日に訪ねた移民の子どもたちの一部を除いて、かなり保障が行き届いて来ています。しかし、その内容はまだまだ一斉画一授業の詰め込み型であることが多く、体験的な学びやアクティブラーニング、全人的な教育への転換が求められている、という状況です。
 
そんな中で、富裕層の親たちは、「いい教育」を求めて私立の幼稚園や学校へ子どもたちを送ります。モンテッソーリやシュタイナーなどのオルタナティブスクールはそういった保護者に人気で、このトーシースクールも、仏教をベースにした独自の教育理念とカリキュラムを持つオルタナティブスクールとして有名です。
 
校内に入るとリゾートのような素敵な空間が。

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まずは幼稚園クラスの朝の活動の様子を見せてもらいました。国旗掲揚・国家斉唱が毎日あり、これはこの学校の特徴ではなくタイ全土でそうです。先生たちは大きな声も出さず、静かに振舞っていて、100人以上いる幼稚園年齢の子どもたちが活動に落ち着いて参加していたのが印象的でした。
 
次に会議室で活動についてのお話を聞きます。
校長先生、教頭先生、そしてマレットファンの研修にも参加しているというジェイ先生がお話をしてくれました。

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生活に溶け込んだかたちで仏教の教えをいかに自然に感じてもらうかということを大切にしていることや、保護者の教育も大事だとの考えから保護者研修も力を入れて行なっているということ、さらに2つの外面(身体/コミュニケーション)と2つの内面(心と知恵)の育ちを理念として実践している、教科横断型のテーマ探究学習について詳しく教えていただきました。
印象的だったのは、テーマ探究学習の中で、「恩義」を扱うということ。自分を生かしてくれている親や友達や地域や食や自然に思いを馳せられるよう、例えば「生卵を3日間ずっと持って過ごしてみる」「お米を育てて一粒一粒の大切さを知る」「自分の家族の歴史やルーツをさかのぼってインタビューする」というような様々な取り組みを、学年/発達段階に応じて開発しているようです。


この日は、理科フェスティバルの日で、特に「聞く」ということをテーマに子どもたちは様々な場所に作られた学習コーナーを巡るスタンプラリーをしていました。私たちも少し体験させてもらいます。

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面白かったのは、「デシベルゲーム」。カードを引くと、出た動物とデシベルの数値が出て、その動物の鳴き声でデシベル計の数値がピッタリになることを目指します。なかなか面白く、声のボリュームを学ぶことにもなるなぁと思い、興味深かったです。

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* * *

午後からは、スラオ・サムイン小学校へ。
 
訪問してすぐ、面食らってしまうほどの熱烈歓迎を受けました。まず通された応接室には、なんだか大勢の人が...。聞けば、学校の先生、モスクの方や地域代表の方まで集まってくださったようです。ムスリム文化活動の一環で作られたミルクティーとケーキを振舞っていただき、生徒たちのバンド演奏を(多分5曲ぐらいたっぷり。笑)聴かせてもらいました。

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さらに図書室に移動して、ドラえもんやのび太くんらに扮した子どもたちの寸劇(コミカルな出し物に先生たちが一番大喜び。笑)、タイの各地域の伝統舞踊の披露、そして一人一つ、ミルクティーとサラダセットが入ったお土産をもらうという歓迎っぷり。それらの出し物を全てを仕込み、子どもたちのパフォーマンスを見ている先生たちも、本当に楽しそうで嬉しそうで、先生たちのパワフルさと、私たちや子どもたちをグングン引っ張っていく独特のテンションに、一同大笑い。
予定通りではないのですが、大変素敵な時間でした。
そのあとやっと学校の説明が始まりました。笑
 
ここは、200年以上の歴史を持つムスリムコミュニティに隣接しており、生徒の19%がイスラム教徒です。
「共生を基盤にした教育施設であること。よき人を育てること。グローバル社会に通用する人を育てること。」を理念にしています。
先生も、26人のうち、ムスリムの先生は7人。長い先生は20年、30年とここにいて、教職員も家族のようなものだとおっしゃっていました。
このコミュニティは昔から、文化の違い、宗教の違いを超えて、冠婚葬祭を手伝い合ったり、仏教徒とイスラム教徒が自然に共生してきたのだそうです。タイのムスリムにはマレーシア国境沿いにいるマレー人のムスリムと、バンコクに昔からいるムスリムの2つがあり、後者は国民としての意識も高いのだそうです。
この学校も、土地やお金の寄付があって、建設できたのだそうで、寄付者には地元企業の他、仏教徒の人も含まれていたのだそう。
※ちなみに、学校名に入っているスラオとはモスクのこと。ワット〜という名前の学校も非常に多く、ワットとはお寺のことです。

タイの学校には、仏教のお祈りの時間がありますが、この学校では、その時間、ムスリムの子達は自分たちの方法で自分たちの神にお祈りをします。
また、ムスリムの子どもたちは、放課後は4:00-6:00まで、土日も朝から夕方までコーランの勉強をモスクでするのだそう。それに学校の宿題まで加わると負担がとても大きいので、ムスリムの子どもたちには宿題についてはあまり厳しくしないということもおっしゃっていました。
 
その後、授業の雰囲気を見学。

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ヒジャブをかぶった女の子や、小さな帽子をかぶった男の子が多く目にとまりました。また、隣接するモスクも見学をしていただき、子どもたちや地域の人たちが、ここでどのような過ごし方をしているのかについても教えていただきました。
 
さらに先生がたとQ&Aの時間を設けていただいて、たっぷりおしゃべりをさせていただき(先生方はここでも弾丸トークでした。笑)、帰路へ。
 
振り返りでは、宗教や信仰の影響力の大きさについての驚きや、信仰が自分にとって大事であるからこそ、違う宗教も大事にできるのかもしれないというような感想も語られました。また、信じるということは思考停止になることとどう違うのか、宗教は社会を変える力になるのか、それとも現状を肯定・維持する力になるのか、問いも共有されました。

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(2018/8/17)