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〜エデュコレインタビュー:出展団体⑥【見晴台学園】〜

こんにちは!
今回のエデュコレは、関東,東海,関西,九州の4地域で開催し、インターン生も多様な地域から集まってます。このnoteでは、インターン生が出展団体さんに赴き、インタビューをしてきた記事をUPしていきます!

記事を見て、出展団体さんのことをイベント前に知ることで当日がより充実した時間になるかと思います。また、今回参加できなくても、興味・関心のある団体や学校はきっとあるはず。このインタビュー記事が、その団体の活動をより詳しく知る機会にもなればと思います。

是非チェックしてみてください!
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今回のインタビューは、見晴台学園の山田康太(やまだこうた)先生にお話を伺いました。

-見晴台学園がどのような”学校”か、教えてください。

開校から今年で30年になります。今でこそ「発達障害」と言う言葉が社会でも聞かれるようになりましたが、当時はまだ理解が広まっておらず、様々な困難さを持った子どもたちは「学習障害」と言われていました。そういう子どもたちが義務教育を終え、中学校を卒業するとなったときに抱いた、「もっと学びたい」「もっと友だちがほしい」という思いに応え、もっとじっくり長く教育の機会を保障してあげたいという親の願いからつくられました。
「ゆっくり、じっくり、しなやかに育っていく」ことを大切にしていきたいと思ってスタートしているので、開校当初から5年一貫の高等部です。授業のカリキュラムを見ていただくと普通の学校との違いを感じていただけるかと思いますが、教科の枠をかなりゆるやかに、広く捉えています。5年間のうち、最初の3年間を「本科」、後半の2年間を「専攻科」としていて、教科内容やカリキュラムも異なります。
日課についても、生徒のペースに合わせ、じっくり取り組めるように2コマしかなく、午前、午後ともに90分間です。始業も遅めに設定しています。様々な理由があるのですが例えば、遠方から公共交通機関を利用して通ってくる生徒もいますので、通勤ラッシュの時間帯にトラブルに巻き込まれたりするリスクを減らすためです。それでも遅刻してしまう生徒もいるのですが(笑)。授業や帰りの会が終わると大体15時くらいです。そのあと、残って友だちと遊ぶ子もいますし、行事の準備など課題があるときは残ってやっていくなど、最終下校時刻は17時に設定しています。放課後は、みんな自由に過ごしてますね。
開校から5年目に、小学校を卒業する子の親から「中等部も作ってくれないか」という申し出があり、そういったニーズにも応えるため中等部もつくりました。
高等部は、カリキュラムを独自のものにしている関係で、文科省の認可を得られていないため、見晴台学園の高等部を卒業しても、高校卒業の資格は得られません。ですから、これまでの卒業生には、高校卒業の資格がほしいということで、卒業後に別の高校を受験した生徒もいましたし、通信制の高校に通いながら学園に通った生徒もいました。最近は、一般就労やB型事業所に進むケースが多いです。
もともと5年一貫でやってきましたが、この30年の間には、進路を決めきれない生徒、社会に出るにはまだ心配だな、自信がないなという生徒も出てきました。そこで、学園卒業後も、より長くゆっくり学べる場として「見晴台学園大学」を開校しました。こちらも無認可ではありますが、教育期間をもう少し延長して社会に出るまでの時間を保障しようという思いのもとつくられました。
また卒業後、就職した先で自信をなくしてしまったり、どうしても対人関係がうまくいかずに辞めてしまうというケースも出てきたので、卒業後も引き続き支援していこうということで「自立支援センターるっく」という事業所を同じ法人内につくりました。

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授業の様子

―保護者の要求によって開校された学校ということですが、保護者はどのように関わっているのでしょうか。 

独自の言葉ですが“父母立”と呼んでいます。例えば、教員を雇う際にも保護者が関わっていますし、月に1回運営委員会を開き、教員と一緒になって財政の問題を考えたり、生徒の様子を共有したり、行事の準備や運営にも関わってもらったり、と生徒を中心において親と教員が手を取りあい学園の運営をしていくというのが、ずっと変わらないスタンスです。
保護者の方には、もちろん自分の子どもの成長をそばで見ていただきたいですが、自分の子だけではなくて他の子ともたくさん関わってもらうようにお願いしています。行事の時だけでなく、日ごろから親が一緒になって取り組む機会は普通の学校よりも多いと思いますね。


―見晴台学園が30年続いてきた秘訣のようなものはあるのでしょうか。

生徒たちが活き活きと過ごしてくれているのが一番だと思います。見学に来た方に「高校の卒業資格はとれないんです」というとお断りされるケースは少なくありません。しかし、それ以上に友だちと関わったり、楽しい時間を共にしたり、そういうことが将来、働いていくうえで支えになっていくことだろうと思っているので、生徒たちには経験をたくさん積んでもらいたいと思っています。お金の使い方がわからないのに就職するっていうのは難しいだろうと思うんです。楽しいことにお金を使ったり、友だちと遊びに行くとか、おいしいもの食べに行くとか、そういう経験していくうちに、もうちょっとお金ほしいかな、とか、あの子もがんばってるから自分も働いてみようかなっていう気持ちが育ってくると思うんです。自分たちが当たり前のように過ごしてきた青春の期間をちゃんと子どもたちにも保障するっていうのがなにより大事かなと思っています。

例えば「生徒自主企画」は、内容に縛りはありませんが、みんなと和気あいあいと過ごす時間を大切にしようという目的でやっています。スポーツをやるところでは大会をやったり、おやつを作ったり、卒業のお祝いをしたり、カラオケに行く企画を立てたり、自分たちで内容を話し合います。なにか食べ物を作りたいとなったら、レシピを調べ、買い物に行く段取りから、作る日程やそれまでのスケジュールを決めるなど全て生徒たちでやっています。

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「生徒自主企画」での活動を生徒が冊子にまとめたもの。


-カリキュラムの中の「ライフデザイン」ではどのようなことをされているのですか。

生徒たちは自分の将来について考えます。将来を働くことだけに結び付けると働くことだけが目的になってしまいがちなのですが、働くことの目的は「自分の人生を豊かにする」ことだと思います。ですから「自分の生活を自分でつくる」ことを大切にしています。
毎年恒例の取り組みだと、年に一回ぶどう農園で実習をさせてもらっています。大まかに説明すると6月~7月にぶどうの袋掛けをし、収穫もして、それを販売するという流れなのですが、だれもがぶどう農家になるわけではないですよね。しっかりと挨拶をする、実習のために夜は早く寝るというように、仕事のために自分の生活を整えていくというのが目的だったりします。去年よりも今年はたくさん袋をかけたいなとか、去年は途中で体調を崩したから今年は最後までやり通したいなとか、それぞれの目標があるとは思いますが「自分ができる範囲でしっかりとやる」ということが大切になってきます。スピードや数にとらわれず、丁寧に、自分のペースでやるというのが大事かなと思っています。

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実習で収穫したブドウは、学園内で生徒が販売も!


-評価はどうされていますか。

学園には成績表がありません。今までできないことばかり学校の先生たちから言われてきた生徒が多いかと思うのですが、その子たちの成長をちゃんと見つめて評価するのが大事だと思っています。そのため、開校当初から数値で評価する成績表は出さず、“評価票”というのを出しています。評価票は8割ほめて2割励ますのが基本です。保護者が書く欄もあるし、教員が書く欄もあるし、本人もがんばったことをふり返り、次の学期の目標を書いたりするスペースもあります。
見晴台学園には、障がいの程度や種別に関わらず、様々なタイプの生徒が通ってきています。「うちの子は大丈夫ですか」と時々聞かれことがあるのですが、障がい名にとらわれず、その子が何に困っているのかというのを探っていきます。「こういう障がいだからどうする」っていうような判断や対処はではなく、関わるなかで、手探りではありますが、みんなが楽しく過ごせるようにするには、どうしたらいいかなと考えながら常々やっています。

ーありがとうございました。

#エデュコレ #educolle #東海