座布団の舞

トランプ大統領が現役大統領として初めて大相撲を観戦された。
これに際して、セキュリティ上の問題から「座布団投げ」が固く禁じられたことについて、一部では相撲の歴史・伝統が侵された、とする批判もあるようだ。

気になったので「座布団投げ」について調べてみた。

興行としての相撲が始まったのが17世紀ごろらしいのだが、江戸時代には「投げ花」と呼ばれる習慣があったそうだ。
これは、客が自分の屋号の書かれた羽織や帽子を投げ込み、力士がこれを返しに行ったときにご祝儀がいただけるというもの。

明治42年(1909年)に投げ花が禁止され、現在の懸賞金に変えられた。
この頃、投げ花に代わる賞賛の意思表示として生まれたのが「座布団投げ」であるという。

ただ、この「座布団投げ」は危ないということで本当は禁止されている。
日ごろから禁止のアナウンスはあったようで、傷害などで刑事責任が問われる場合もある、という強い内容もあったようだ。
今回は改めていつもより強く周知した、ということだろうが、「トランプ大統領のせいで禁止された」というのは濡れ衣のようである。

ちなみに江戸時代の「投げ花」がいくらくらいだったのか気になったが、ざっと検索する限りではみつからなかった。
ただ、力士がわざわざ取りに伺うというくらいだから、子供の小遣い程度ということはないだろう。
現在の懸賞金が一口62000円ということだから、同等程度の金額だったのではないだろうか?
一般庶民が気軽に投げていいものではなさそうだ。

「座布団投げ」が始まったのがおよそ100年前で、それなりに長く、「伝統」と感じる人も多いかもしれない。
しかし、興行としての相撲は江戸時代までさかのぼり、天皇の御前での相撲大会は少なくとも平安時代までさかのぼれると言う。

1000年近い(あるいはそれ以上?)の相撲の歴史の中で見ると、「座布団投げ」の習慣は比較的最近のものであるし、そもそも禁止事項である。
それを「相撲の伝統」と主張するのは些か無理があるのではないだろうか?

「座布団投げ」で実際にけが人が出たこともあるというし、リボンや花束、紙ふぶきなど、もっと安全なものに切り替えていくことも検討してみてはどうだろうか。

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