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真冬の動物園。

ぶらり近場の散歩旅、この日は千葉市動物公園へ。10年ぶりか、いやそれ以上か。風はやや冷たいが真冬の平日、天気もいいということで合わせて187歳の三人組で乗り込んだ。防寒対策はしたもののやっぱり寒い。モンキーゾーンでいきなりテナガザルの雄叫びがお出迎え。かなりのテンションで延々と鳴いている。オスとメスが交互に複雑なフレーズでデュエットするとwikiにはあるのだが、人間にとって心地いいのとはほど遠い。心なしか対面のゴリラもあきらめ顔だ。

人影はまばら、寒風吹きすさぶ動物園にわざわざ出向いてくるのはよっぽどの物好きだろうと思いきや、腹ごなしに入ったレストランは8割方席が埋まっている。どうやら放し飼いの彼らはぬくぬくとしたこの建物に集まっているようだ。レッサーパンダラーメンを注文。サンプルはレッサーパンダの絵入りの海苔が山状に立ててあるのだが、この日はその海苔を切らしているとのことで、小さなシールをいただいた。

割り箸に挟んで出てくるわけではありません。

言うまでもなく千葉市動物公園のスターといえばレッサーパンダの風太で、今や全国のレッサーパンダ一族の頂点に君臨しているといっていい。こんな日でもレッサーパンダ舎の周辺だけは人が集まっている。風太は御年20歳、人間でいうと80歳を越えているとのことで、この日は閉園前に少しだけ姿を見せてお勤めを終わりにしていた。「推し」の出をひとりじっと待っているらしい女性の姿が印象的。

風太。フサフサとした尻尾はすでになく、動作も緩慢になっている。
若者の尻尾はフサフサとしてる。

数時間微動だにせず獲物の肺魚などを狙うその姿で一躍スターダムにのし上がってきたのがハシビロコウ。展示には「寒いときは室内にいます」とある通りこの日はガラスの窓の奥でじっとしていた。オスはその名も「ジット」。常に誰かがのぞいていたので写真はとらず。そのかわり帰りがけにハシビロコウのアイスパンケーキをいただく。

なかなか絵になる奴。売店にあるトートバックのハシビロコウはハードボイルドなイケ
おじだった。

平原ゾーンには定番のチータやライオン、ゾウ、キリン、カンガルーなどが在籍しているが総じて動きがない。すまぬすまぬ、中に入ってぬくんでてもいいのだぞと心の中でいいながらそうかそうかとカメラを向ける。小高い丘を駝鳥だけが元気に駆け回っている。(見出しの写真はキリンとオリックス)

王者の風格でもあり退屈のポーズでもあり。
何かのサインか偶然のポーズかは不明。
フラミンゴを見て行川アイランドを思い出す昭和生まれの千葉県民は多いはず。今は閉園時に逃げ出したキョンが世間を騒がせている。

真冬の動物園は妙齢のカップルがよく似合う。つがいらしき動物の姿を柵越しに見ながら男のコートのポケットに女の手が伸びる。男は思わず女の顔を見るが、女は顔を正面に向けたまま表情も変えない。このあと二人はモノレールに乗って(千葉市動物公園はモノレールの駅がある)ポートタワーに向かう。港を見下ろしながら、女は何かを決心したように口を開く・・・

我ながらしょーもない妄想をしながら寒さをやり過ごしている。それはともかく、なんだか「シベールの日曜日」のピエールとフランソワーズがどこかにいそうな寂しさや愛しさが真冬の動物園にはあった。今度は暖かい時に来ようと言って園を出る。

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