映画を観た記憶33 2024年2月4日    ピエル・パオロ・パゾリーニ『テオレマ』

Amazon Prime Videoでピエル・パオロ・パゾリーニ『テオレマ』を観る。
冒頭のシーンの工場経営者が労働者へ工場を渡した、ということをテレビ局がインタビューするシーンからただならぬ雰囲気が感じられる。
本作品もまた定型的な物語や撮影がされているのではない。テレンス・スタンプ演じるある青年がブルジョア家庭に同居し、その家庭の一人一人が、その青年に取りつかれていく。家政婦までもがとりつかれていく。アンヌ・ヴィアゼムスキー演じる娘も取りつかれる。アンヌ・ヴィアゼムスキーはゴダールの『中国女』『ウイークエンド』出演したあとである。アンヌ・ヴィアゼムスキーが本作では異様に幼く見える。しかし、ゴダールの2作では幼くは見えなかった記憶がある。
青年が家庭を出て、その後、家庭の一人一人が奇妙な行動をとりはじめる。家政婦などは、聖人のごとき、空に飛び、浮かんだままである。アンヌ扮する娘はまばたきをしないまま病気になって、手を拳状に握りしめたままである。主人の妻は、若者に誘われ、いきずりのゼックスをする。主人は駅で全裸になってしまい、火山みたいなところで絶叫する。
謎の映画である。
しかし、見ごたえはある。屈折した思想らしきものを感じる。
ハリウッドでエンターテイメント映画を撮らないのであれば、映画作家は、パゾリーニの謎映画の方向へ進んだ方がよいと私は考える。
欧米を嫌う人は多いが、なんだかんだいって、パゾリーニのような映画が成立していしまうのは、やはり文化的成熟度が高いな、と私は考えるのです。『テオレマ』にはジュリアーナ・マンガーノやテレンス・スタンプという一流俳優が、『テオレマ』という謎思想映画に出演するのは事件というか、歴史というか、偉大な出来事です。
『テオレマ』は、若松孝二的な雰囲気もなんとなくある。駅で、マッシモ・ジロッティ演ずる工場経営者が全裸になるのをロングで撮影するのは、若松孝二に通じるものを感ずる。
偉大過ぎる映画である。

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