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【NYM】GM探しの旅

問題を分割して個別に解決する (divide and conquer) は複雑な状況への対処の基本ですが、まさにこの点に苦労しているプロ野球チームが存在します。

短期的ビジョン、中長期的ビジョン、フロントの人事、選手の獲得/放出、等々は相互に絡み合った問題ですからいかに問題を切り分けて解決するかが肝心です。しかし、それが可能となるためにはチームを管理する責任者(General manager)を明確にするのが大前提です。

この大前提を達成するのに相当の苦労をしているのがNew York Metsです。今年だけで、猥褻画像を女性に送りつけたJared Porter飲酒運転で逮捕されたZack Scottという2人のGMが解雇されているのです。Scott氏が今月解雇され、GMの座が空席となっているMetsに関して様々な風刺的ツイートが投稿されています。

このような状況下でも、Metsは今年FAのNoah SyndergaardMicheal Confortoの両名にQualifying offerと呼ばれる拒否時の補償付きの残留オファーを提示しています(Confortoには拒否されました)。さらにKris Bryantとの交渉も行っているようです。これらの動きには賛否両論あるところですが、GM決定という観点から難しいのは、この動きを受け入れられる人間しかGM候補になりえないという点です。要はすでに漕ぎ出した船の船頭を任されるような状況になってしまうのです。行き先が自分の目標と相違なければよいですが、そうでなければ受け入れることはないでしょう。

更に難しいのは、Metsのオーナーの特殊性です。MLB全球団でも最強の資金力を持つオーナーSteve Cohenは、Twitterでもファンと交流し表向きの発言を行っていることから、チーム編成に対しても大きな発言力を行使する可能性が否定できません。ゆえに自らにどれだけの裁量が与えられるのかという点で候補者が不安になってしまう可能性があります。これは、実効性は低いが投資家受けするプレゼンで大量の資金調達をしてしまったITベンチャーが雇われ社長を探している状況に似ています。他に活躍の場を見つける機会と自信があれば、敬遠してしまうのではないでしょうか。

以上のように惨状を嘆いていたところで、新たなMets GMとして最有力候補が挙がっているようです。Adam Cromie氏(元Nationalsのassistant GM)です。彼は弁護士になるために2017年を最後にチームを去ったことで知られています。2019年にWorld Seriesを制覇したNationalsのチーム再建を支えた人物として、実力は確かでしょう。ただし、現場を離れていたために、彼が就任した場合には球団社長のSandy Alderson (GMオファーを蹴った人物の一人、"Money ball"で知られるBilly Beane氏の師匠としても知られる)が編成に関わるのではないかとも言われています。

New York Messと言われたMetsをコントロールする(そのためには暴れん坊の選手たち球団社長やオーナーからの圧力と戦う必要がある)ために必要な資質は相当のものです。しかし、近年最高のMets GMとなるハードルは随分と下がっています。次のGMには、(就任中に犯罪を起こさず任期を全うすること、そして)チームに具体的な中長期的ビジョンをもたらすことを期待したいと思います。

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