圧倒的な大きさと、絶望的な硬さで。

8月8日 曇り時々雨

「今のところ、テント排除の動きはありません」と、のんびりムードだったN1裏テント。その一方で、N1表では機動隊と市民とが対峙する緊迫した空気があった。

工事車両はN1表にやってくるのだ。そこには元々、9年間座り込みを続けたテントがあった。しかし先日大きく報道された通り、防衛局によって、何の法的根拠もないまま暴力的に撤去されてしまった。

ゲートの前には尋常でない数の警官と警備員。ヘリパッド建設反対派の市民と対峙している。あちこちから怒号が飛ぶ。しかし多勢に無勢。じりじりと囲まれ、押し出され、分断させられる。

「下がってください」、「車が通ります」しか言わない機動隊とは対照的に、市民の側はみな様々なスタイルで抵抗していた。怒鳴る人。論理的に詰め寄る人。情に訴える人。笑わせて対話の糸口を探す人。黙ってカメラを回し証拠を残す人。

やがて砂利を満載した巨大なダンプカーがやってくる。それぞれが前後にパトカーと覆面、装甲車を従えるという過剰な警戒。ノロノロ運転でゲートへと向かう。

それに合わせて市民たちも一斉に動き出す。ある人はプラカードを掲げ、またある人はトラメガで怒号を上げる。車上の市民はドアを開けて進路を塞ごうとする。僕も勇気を奮い起こして身を車道に投げ出そうとしたが、あっという間に警官に制止された。

6台のダンプカー。圧倒的な大きさで僕らの勇気を挫き、絶望的な硬さで対話を拒絶する。ヤンバルの森を破壊し、人々の生活を簒奪する。それが砂利を満載し、僕らの希望を踏み潰しながら、ゆっくりゆっくりとゲートへと吸い込まれていく。

僕は何のためにここに来たんだろう?涙が溢れそうになって、鼻を鳴らした。何もできない。機動隊3人に抑え込まれながら、僕は必死に手を伸ばした。しかし要塞のようなダンプカーは、その3メートルも先を通過していく。何も、出来ない。そして愚かしいように、それと全く同じことが6度も繰り返されることになる。

しかしトラメガを持った坊主頭の男性が僕らを鼓舞する。ゲートの前に向かいましょう!2人ずつの警官が、僕らそれぞれにピッタリとくっいてくる。橋の上からヤンバルの山々と豊かな川を見下ろす。東京から来た警官たち、この完璧な景色を見ろ。足りないものなんかあるか?ヘリパッド?要るわけないだろ、そんなもの。

最後のダンプが行ってしまった後でも、僕らは笑顔だった。警官たちを、お前らもう仕事終わりだよ、早く帰れ!と蹴散らす。そして坊主頭の男性は「皆さま、お疲れさまでした!皆さまのお陰で、工事を2時間も遅らせることが出来ました!これは快挙です」と演説。みな万雷の拍手で応じた。

人数がこの2倍いれば、もっと工事を遅らせることが出来たろう。10倍なら、本当に搬入を阻止することも出来たかもしれない。でもとにかく出来ることはやった。当初は数週間の予定だった工事を、9年間も引き伸ばしているのだ。そしてもちろん明日も続く。胸を張ろうと自分を励ました。

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