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超私的グルメ(24) 源氏パイ

今でも一部の人には根強い人気の『源氏パイ』は、私にとっては懐かしいお菓子です。源氏パイは、ヨーロッパでパルミエと呼ばれるハート型のパイ菓子を、手頃な価格で提供したいとして考案された三立製菓のお菓子です。

私がまだ小学生の頃、”パイ”などというオシャレなお菓子は、見たことも聞いたこともありませんでした。田舎町で育ったので、町中にも洋菓子屋さんは数件しかありませんでしたし、そこで売られていたのはショートケーキやシュークリームくらいでした。今のように、マカロンだのカヌレなどはもちろん存在していませんでした。

そんな時に母が買ってきたのが、今まで見たこともない源氏パイというお菓子でした。当時の源氏パイのパッケージは、二枚重ねのハート形のパイを、さらに重ねた細長い形をしていました。確かパッケージには、”モンドセレクション受賞”と書かれていたような気がします。もちろん小学生当時、”モンドセレクション”がどんなものなのか知りませんでしたし、”なんか凄い賞なのだろう”くらいの認識でした。パイという食べ物自体が初めてなので、恐る恐る食べました。サクサクした歯ごたえは心地良く、ハート周辺にくっ付いている小粒のザラメが何とも言えないアクセントになっていました。

「うめー!」。いっぺんで源氏パイが好きになりました。源氏パイが美味しいことはすぐにわかったので、その後も何度か母親にリクエストしたのですが、”手頃な価格”とはいえ、滅多に買ってもらえませんでした。そうなると源氏パイ愛がますます募っていきました。しかし、中高生の頃になると、さらに美味しいお菓子が色々と出現してきたので、いつしか源氏パイのことを忘れていました。

しかし最近、近所のスーパーで売られていた源氏パイを発見して、源氏パイ愛が再燃しました。昔のパッケージに比べるとオシャレになったし、大きさがやや小ぶりになった気がしますが、味は昔のままです。

源氏パイの記事を書こうと思ったキッカケは、年末にお歳暮でもらった『キハチの焼き菓子セット』でした。このセットには、焦がしバターのリッチな味わいのフィナンシェや、バニラの香りのバームクーヘン、洋酒付けフルーツの入ったケークアングレに混じって、源氏パイの本家である『パルミエ』が入っていました。

本家のパルミエは、確かにハート形をしていて、見かけは源氏パイにそっくりです。というか、パルミエが本家ですから、源氏パイの方がパルミエに似ています。ただしジックリ見ると、本家・パルミエの形は、”ハート形”というよりは”ウサ耳形”に見えます。またパルミエには、刻みアーモンドとシナモンが入っています。うちの子は、キハチのパルミエを「源氏パイより100倍うまい」と言っていました。

源氏パイの名誉のために言いますが、私はそうは思いません。確かに、本家のパルミエはシナモンのほのかな香りがして、”ちょっとオシャレなパイ”ですが、私は素朴な源氏パイが大好きです。

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