第四夜 高灯台 後編

 古代の日本では、おそらくは神話の時代から、女陰を「ホト」と呼んだ。字は御陰、陰所、女陰、含処、陰、火陰、火戸、火門など、様々な表記がある。この物語の舞台である平安時代には、「鮑苦本(あわびくぼ)」などとも呼ばれた。形状が鮑に似ているからであろう。
 日本神話において、天照大神が天の岩戸に隠れた時、アメノウズメは
「胸乳かきいで裳緒(もひも)を陰(ほと)に押し垂れき」
 つまり、乳と女陰を露わにして神々の前で踊り、それを見た神々は大いに笑ったという。
 また、鎌倉時代に書かれた「沙石集」には、和泉式部が夫の愛を取り戻す方法を巫女に聞くと、性器をさらしながら、叩いて踊るよう言われたが、恥ずかしがってしなかった(結果的に夫の愛は戻った)というエピソードが記されている。平安時代中期頃までは、ハレの場で女性器を露出することは、普通に行われ、かつそれは見ている人に、エロティックな感情よりむしろ、笑いを呼ぶものであったらしい。


 高灯台の灯を消しておいてよかった。
 私のホトは今、拾の目にさらされている。灯があれば、それが潤んでいるところまで、はっきりと拾の目に映ってしまったに違いない。
 拾が、私のホトにそっと触れる。
「あっ……」
 それだけで思わず声が洩れる。
「濡れております……」
 恥ずかしくて答えられなかった。
 でも、もっと触れて。押し開いて。くじって。指を……差し入れて。
しかし、拾は、わずかに指先で触れたのみで、手を動かそうとはしない。どうしていいか、わからないのだろう。
 だから、私から腰を動かした。
 ああ、どうか、私のことをはしたない女だと思わないで。ただ、あなたにもっと、触れて欲しいのです。
 拾の指が、私の腰の動きで、私のホトの回りをめぐる。
 ああ。
 拾の手のひらが、私のホトを押し包む。
 それでは足りない。
「ホトに……口を……つけて……」
 私はようやく、それだけを口にした。
 拾の唇が、恐る恐る、私のホトに触れる。
 舌が、秘裂を、上下に舐める。
 私は思わず、拾の頭をつかみ、拾の顔をホトに押しつけた。
「ああっ……!」
 拾の舌先が、私の中に入ってきた。
 その時、乱暴な足音が響き、夫の手にした灯が私たちの、はしたない姿を照らし出す。
「何をしている……!」
 半年も通いのなかった夫が、よりによって今夜、どうして。

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