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『猛獣性少年少女 新装版』 中田ゆみインタビュー

電書バトをご利用中の作家さまの「生の声」をご紹介します。

各作家さまのサービス利用に至る経緯や、実際に利用された感想を定期的にご紹介する予定です。
サービスの利用をご検討中の皆さまの一助となれば幸いです。

本企画の【第1弾】としまして、『猛獣性少年少女 新装版』の著者、中田ゆみさまからお話を伺いました。
本作の初出は秋田書店「チャンピオンRED」(2016年8月〜2018年8月掲載)となります。
単行本は秋田書店より全3巻が発売中です。

当初は秋田書店から電子書籍版が配信されていましたが、その後、契約を終了し、2023年4月から『猛獣性少年少女 新装版』として電書バトを利用した配信を開始しています。
配信開始当初から非常に好調な売上げを記録し続けており、読者の根強い人気がうかがえます。

『猛獣性少年少女 新装版』表紙より

主人公の草食系男子を肉食系の美少女たちが奪い合うという、いわばハーレム状態の学園ラブコメディー作品。
世の男子たちにとって夢のような世界が繰り広げられています。
ご興味がある方はぜひお手に取ってご堪能ください。

さて、出版社との配信契約を終了し、作家さまが主体となった電子書籍配信を実現した本作。
なぜそのようなことをしようと思ったのか?
実際に配信してみたら何が起こったのか?
その辺りの詳細を著者の中田ゆみさまにお話しいただきました。

なお、ご回答に当たっては本作の担当編集者が中田さまにヒアリングされた上で、お言葉を取りまとめてくださいました。
この場を借りまして心から感謝申し上げます。


ー「電書バト」へご依頼いただいた経緯をお聞かせください。

まず最初に、今回のご質問への回答は『猛獣性少年少女 新装版』の編集や電書バト様とのやり取り一切を著者から請け負った担当編集者が、著者と相談しながらお答えさせていただいていることをご承知ください。

旧コミックス版『猛獣性少年少女』は私が担当として編集に携わり、秋田書店様で連載されていた作品でした。同出版社から紙と電子書籍のコミックス全3巻が発売されたのですが、第2巻が刊行される直前に紙の第1巻の売れ行き調査をしたところ、中田ゆみ作品にしては初動があまり良くないことがわかりました。

連載はすでに第3巻の3話目まで進んでしまっていたので、著者としては路線を微調整しつつ綺麗に話を終わらせるために、最短でもコミックス4巻までは続けたい意向でしたが、編集部からは3巻で終了するか、もしくは4巻まで続けるのであれば条件面のコストダウン、つまり原稿料の値下げを求められました。

電子書籍は好調でしたし、ずいぶんと性急だと思いましたが、当時は紙のコミックスでの成績がすべてだとも言われました。もともと原稿料は高いほうではなく、また往々にして一度下げた条件が戻ることはありませんから、編集部と別の方策を話し合ったのですが残念ながら3巻で終了となりました。

いつか続編を描きたいという著者の強い意向もあり、しかし秋田書店様と交わした出版契約上、別の出版社や個人で同タイトルの作品を出版できないことになっておりましたので、初回の契約満了時に契約の更新はせず、著者が版権を引き揚げることで双方合意に至りました。合意に際して秋田書店様には紳士的にご対応いただき感謝しております。

余談ですが、結果的に紙のコミックスの部数は増刷こそなかったものの第3巻まで微減にとどまったこと、電子書籍の売れ行きが好調だったことを踏まえると、編集部は十分に利益を確保できたはずです。原稿料の値下げの必要もなければ、著者が望んだ4巻までの継続も何ら問題なかったように思えて残念です。

さて、このような経緯で作品が著者のもとに戻ってきたわけですが、吹き出しのネームも表紙のデザインも新たに作り直さなければなりませんでした。全3巻だったものを6冊に分冊したのですが、単行本未収録作品等を加えて約680ページと結構な量です。同時に作品をお預けする取次も決める必要があり、商業出版の経験しかなかった著者と私にとっては試行錯誤の連続で、他社の連載を抱えていることもあって年単位の準備期間を要しました。

最終的に電書バト様に『猛獣性少年少女 新装版』の取次をお願いしようと決めたのは、ロイヤリティが業界トップクラスだったこともありますが、それ以上に漫画家の佐藤秀峰先生が始めたサービスだからというのが大きな理由です。

佐藤先生の「note」の記事や旧ツイッターでの発言に共感できたことと、それと比較して同業他社が発信されているサービスや考えは、どこか編集や経営側からの目線に感じられて響きませんでした。佐藤先生は漫画家として作品を生み出す大変さをご存じですし、だからこそ「作品を預かることの重さ」も理解していると感じました。また、それが電書バト様の漫画家ファーストの理念だと考えると腑に落ちました。

『猛獣性少年少女 新装版』では描き下ろしの続編も盛り込む予定でしたが、著者の多忙により叶いませんでした。何より『猛獣性少年少女』は2年もの間、電子書籍市場から姿を消しておりましたので、まずは装いを新たに市場に再投入して読者の目にふれることを優先しましたが、いずれ続編を執筆できるタイミングが来ましたら、また電書バト様にお願いするつもりです。


ー「電書バト」をご利用いただいたご感想をお聞かせください。

ファーストコンタクトから徹頭徹尾、対応が丁寧だと感じました。最初は丁寧すぎるメールや資料に目が滑ってしまったのも事実ですが、一つひとつ冷静に項目を追っていくと、しっかりと理解できるように作られておりましたので、第1巻の入稿以降は問題なくスムーズに進めることができました。

当初は電話での対応がないことにも不安を感じておりましたが、問い合わせメールのレスポンスが早くて的確なので、逆に効率がよいと感じるようになりました。また担当様から入稿のたびに作品に対する感想をいただき、著者ともども大変励みになりました。


ーご利用前後でロイヤリティ収入などに変化はありましたか?

秋田書店様の旧コミックス版『猛獣性少年少女』全3巻は電子書籍では大変好調な売れ行きだったので、すでに多くの読者の手元にお届け済みで、当然ですが焼き直しとなる『新装版』は苦戦を覚悟しておりました。

しかし料率の高さに加えて、旧コミックス版を持っているのに、さらに『新装版』をお求めくださった熱心なファンの方が大勢いらっしゃったり、再びタイトルが市場に露出したことやインパクトのある販売促進施策をおこなっていただいたことで新規の読者を獲得できたりと、お蔭さまで旧版の電子書籍のロイヤリティと同等以上の高い売り上げをいただいております。これは想定外のことでした。


ー「電書バト」をご検討中の作家さまに一言お願いいたします。

電書バト様は大切な作品を安心して預けられる取次だと思います。電子書籍は編集の立場から見ても料率や手数料が複雑になっていて売り上げがブラックボックス化しやすいと感じます。また大手出版社の電子書籍の作家ロイヤリティは紙と比較して同程度の「定価の10%程度」に収まるよう調整されていますので、お世辞にも高いとは言えません。

少し話はそれますが、とある中堅出版社で別の作家の仕事を請け負ったとき、私は作家が出版社と交わす出版契約書にも目を通すようにしているのですが、そこに記された電子書籍の料率が、何のアナウンスもなく、かつて同社で請け負った別作家の料率よりもシレっと下げてあったのには呆れてしまいました。

信頼していた出版社でさえこれですから、小さな編プロやエージェントが間に入っている場合などは裏で何をされているか、まさにブラックボックスです。そういった意味でも料率や個々のストアの売り上げを全てオープンにしている電書バト様では不安を感じることは一切ありませんでした。


以上、電書バトご利用者さまへのインタビュー企画【第1弾】としまして、『猛獣性少年少女 新装版』の中田ゆみさまからお話を伺いました。

ご丁寧にお答えいただき誠にありがとうございました。
お話を伺い、作家さまの作品に賭ける想いを深く感じることができました。
電書バトとしましても作家さまのご期待に添えるよう、気持ちを新たに取り組んでまいります。

それでは、本企画の【第2弾】も近日の公開を目指して準備を進めておりますので、どうぞお楽しみに。

これからも「電書バト」をよろしくお願いいたします。


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