歯科医師と歯科技工士

技工士、という職種は非常に、非常に過酷な職業である。

わたしは歯科医師をしているが、わたしの父は歯科技工士をしている。

幼少から父を見て育ってきたわけであるが、日付をまたぐまで仕事をしている、そんな姿は日常であった。長時間労働、である。

個人開業のラボであるから、いわゆるセルフブラック、というやつである。父に限らず、歯科技工業界は長時間労働を長年の慣習としてる文化がある。

歯科医師は、標榜の診療時間に則り歯科診療を行い、一方、技工士は診療時間なんていう概念はない。技工物製作数という言わばアポ数の上限はなく、来る仕事は拒まず。なんでもやりまっせ、というところである。希釈しても濃いブラック、な労働環境であろう。

で、

離職率が高いの!助けて!って

今や、技工士養成の学校も定員割れ、ひどいところは学校の閉鎖まで行われているのが現実である。

あまり取り沙汰されていないためあまり認知されていないかもしれないが。実は今、技工業界は非常に危機状況である。技工士全体の高齢化、後継者不足による技術継承の問題。

もちろん技術のデジタル化は進んではいるのだが、銀歯1本にしても、最後のツメの作業は今でも手作業が求められるところは多い。

でも、問題の本質はなんなのであろうか。

本来的には、歯科診療に不可欠であり、大変に重要で、歯科医師にとってなくてはならないビジネスパートナーなのであるはずである。しかし、一方は時間通りの労働、一方はブラック企業。

技工士が、患者さんの口腔環境の改善に寄与し、人生の価値を高める大いなる役割があることには異論はないと思うが、果たして、技工士という業種が夢と希望にあふれた環境となっているのであろうか。

歯科医師の下請け的存在として扱われる状況を問題視したい。

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