脳腫瘍は突然に

なんか、頭痛がするし、気持ち悪いな…

そのぐらいの感覚しかなかった

それは風邪と言われれば風邪だし、疲れていると言われれば疲れ

誰にでもある感覚だと思う。

その程度だから当然仕事にも行った

仕事してれば、気が張って気にならなくなるだろう…

しかし、体調は良くなることはなく、仕事の責任者に相談した

「すいません、朝から頭痛と、あと気持ち悪いです」
「大丈夫?熱は?」
「熱はないです」
「熱が出ないインフルエンザもあるらしいよ?、とりあえず今日は帰ろうか」
「わかりました、病院で検査してもらってきます」

私は近所の内科を受診し、インフルエンザの検査を受けた

内科医「何も出てないねぇ」
私「風邪でしょうか?」
内科医「そうだねえ、しかし、何か出さないとね」

そう言って、頭痛薬を処方してもらった。

その帰り道、食欲があまりにもなかったので、フルーツゼリーを買って帰った…これなら食べられるかな?

そして家に帰り、会社へ連絡する

「インフルエンザは陰性でした明日は出勤します」
「大丈夫?一応明日も休んでも大丈夫な人事にはしてあるよ?」
「大丈夫です、薬をもらいましたので」
「了解です、無理はしないように」

その日一日寝込んだ

「お父さん、お茶入れて」

家族には迷惑をかけたが、気持ち悪く、とても動けなかった…体調は、なんだか、悪くなってきている

しかし、今までの人生ずっと健康だった私は、そこまで気に止めず、就寝した

明日になれば体調も戻るだろう…

次の日…やはり体調が悪い…とりあえず薬を飲もう

私は頭痛薬を飲み会社へ出勤した

「おはようございます」
「おはよう、大丈夫?とりあえず体の負担は軽い場所につけてあるから、様子みながら仕事して」
「すいません、迷惑をかけます」

色々な同僚から声を掛けられる

「大丈夫?」
「…大丈夫です」

本当は大丈夫じゃなかった。しかし強がってしまう性格なので、尋ねられれば大丈夫だと、言って気丈に振る舞っていた…

そんなときだった、いきなり

それは今まで体験したことのない違和感で、さすがの私も強がってなどいられなかった
なんと目の前に水面が見えたのだ

「あれ、なんだこれ」
「どうした?」
「なんか目がおかしい、あの、なんか、水中眼鏡に水が溜まってるみたいな…そんな風に見える」
「なにそれ?ヤバくない?…~さーん(責任者の名前)」

「とりあえず帰ろうか?どうしようかな?送るけど?運転危ないでしょ?」
「大丈夫です運転できます、今は普通に見えてるんで」
「いや運転するよ」
「本当に大丈夫です。運転できますから」
「…そうか、しかしな、とりあえず~病院に行きなさい、目ならもしかしたら脳かもしれないから」

「わかりました」

そうして、私は~病院へ向かった。地元では脳神経外科が有名な病院だった

「急患ですか?」
「はい」
「どのような症状で?」
「頭痛と吐き気、あと目の前に水が溜まってるように見えるんです」
「そうですか、間に合うかな?…医大から先生が来ているんですけど、お昼で帰ってしまうんです、ちょっと待ってください」

受付の人は急いだ様子で、予約をとってくれた、私の病状のせいだろうか?
「とりあえず頭のCTと胸のレントゲンを撮ったら戻ってきてください」

私は言われたようにCTとレントゲンを撮って脳神経外科の前へ来た

お入り下さい…

「ここみて下さいね」

そう言って先生は自分の鼻を指差した、そこへ私の視点を固定させたまま、両手の指を動かして

「ここは見える?ここは?」

と確認していった

そしてCT画像に向き直り、画像を指差して小さく呟やいた

「これなんだけど…脳腫瘍だと、思う」

「え?」

全く予想していなかった答えだった。脳腫瘍?…人生で初めて、自分の死について考えた瞬間だった

「可能性はどのくらい?」

「9割は脳腫瘍だと思う、出血もないし…ショックだと思うけど、これでもうダメだとは僕は全然思ってないよ、脳腫瘍も色々とあるからね、それにここには脳外科の良いお医者さんがたくさんいるから大丈夫」

その医大の先生に紹介してもらい、この病院の脳外科の先生の診断を受けた。妻にも連絡し、一緒に話を聞いた

「これが脳腫瘍…とても大きい…そしてこれが脳浮腫…ここが脳の真ん中なんだが、腫瘍に圧迫されてここまで変形している…これは、どうやっても取らないとだめだろうねぇ」

何故か妻の顔ばかりを見ながら説明していた。本人は動揺するからあえてなのかよくわからない

「良性か悪性かって今の段階でわかるんですか?」

「良性か悪性かって言ったら、良性の部類ではあると思う…しかし調べてみないとわからないし、良性の良性もあれば、良性の悪性、悪性の悪性もある」

「入院するのでしょうが、どれくらいの期間になるのでしょう?」
「二ヶ月は見といて下さい、そして、この大きさだとあまり待ってはいられないでしょう。こういう腫瘍は血がものすごい出るんです、ドバドバ出る。だから検査も必要だし、その為の処置も要るでしょう、その行程を短い期間に行わなければならない。入院はいつから出来ますか?」

「今日からお願いします」

そうして、私の脳腫瘍との戦いは慌ただしく始まりました