知財部門がイノベーション活動に絡んでいこうとすると

 私が属していた知財部門とは、企業の技術戦略と近いようで遠い組織でした。特許などの知的財産は技術開発の最後のアウトプットとして、その成果は独占され、時には金銭的価値を創出します。しかし、近年、特にコンピュータ・ソフトウエア分野では、技術のオープン化が進み、技術そのものの価値は下がっているように思われます。それに準じて、企業内における知的財産の価値が下がり、知財の価値を拠り所に成立していた知財部門はその存在意義の再定義を始めているのではないでしょうか。少なくとも私の周りではそのように感じることも多かったような気がします。

イノベーションが求められること

 あくまで、自分の経験や見聞きした話だけなのですが、知財の価値が過去に比較して下がっていると感じている業界は、知財の活動をイノベーション活動と結びつけて、組織の再定義を模索している感じがします。私が属していた組織でも、伝統的な知財活動に加えて、イノベーションに貢献することを新たなコンセプトとして考えていました。そもそも、イノベーションの定義もいろいろありますが、自分の理解も追いついていないので、それについてはここでは、あまり言及しないことにします。
  イノベーションという言葉を閉塞感の感じられるビジネスに対し、新たな道筋を開くキーワードとして活用している企業は多いと思います。新結合であるイノベーションは基礎的な技術の発展が明確には定義できない現代では、既存技術の組み合わせや活用で新たな経済価値を生み出すという意味において、企業戦略の正しい方向性なのかもしれません。
 ただ、イノベーションの具体的な方法ってわからないんですよね。少なくとも、自分は企業に属しながら、経営層が掲げるイノベーションの戦略に具体的なものを見出すことはできませんでした。自分の能力の問題なのかもしれませんが・・・・

知財部門だってイノベーション

 知財部門は企業における技術開発の成果を取り扱う部門です。しかも、なかなか一般的には理解しがたい法律的な専門知識を持ってことにあたるので、かなり外部から頼られる存在でした。ただ、伝統的な企業戦略、とくにものづくり系の企業における技術戦略のような、中長期的な投資と、継続的な研究開発だけでなくなったとき、知財部門は待ちの姿勢だけではいられなくなりました。独占性を求める成果物が少なくなってきたからです。企業は独占性よりも、新たな組み合わせである新結合を持って、技術とビジネスの両面を考えた戦略に傾斜しています。だから、知財部門は企業における自分の立ち位置を再定義するために、イノベーションに絡みたくなります。

知財部門がイノベーションに絡もうとすると

 特許マップを作ります。そしてポートフォリオ(その評価軸の設定にあまり意味がないのですが)をつくり、最終的には空白領域を定義することで企業の方向性を見出そうとします。でも・・・・これは自分が特許の戦略に絡みながらも、矛盾を感じていたのですが、過去からの技術戦略の成果である(異論はあると思いますが)特許マップに空白領域があるということは、様々なプレイヤーが群雄割拠している業界で、誰も注目しない、つまりマーケットがない、という判断になるのではないでしょうか。誰もいないから、きっと勝てるはず、確かにオンリーワンになるかもしれませんが、寂しいオンリーワンです。知財という成果物からバッキュキャストした特許マップによる戦略策定は、短期的に物事の趨勢が決まる業界では、もう難しいのかもしれません。

 知財部門は今までの知的財産権の維持・管理から新たな姿に転身する必要があるのだと思います。もちろん、業界によって事情は異なると思います。素材を中心としたビジネスでは、知財による独占権の獲得はビジネスの成否に影響をしてきます。しかし、総じて伝統的な知財部門は変化を求められています。私の所属していた組織では、未来の特許を考えるワーキンググループを10年前に開始しました。しかし、あまりうまくはいかなかったのです。なぜ、うまくいかなかったのか、企業におけるイノベーションの重要性がます中で、自分たちの活動が思いもよらなかった方向に変わっていきました。それについては、また書いていきたいと思います。

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SHY

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