クーポン券ミスド

クーポン券付きの折り込みチラシ

 モノゴトの表面だけ見ていても何も分かりません。思考・分析を深めていくと、工夫や効果が複数段階、連鎖的に見えてきます。

 数年前のある日、切り取り式クーポン券が付いた2種類の折込が目につきました。一つはカラオケルーム(BOX)、もう一つは大型スーパーに併設のシネコン(シネマコンプレックス - 同一の施設に複数のスクリーンがある映画館)でした。いずれも娯楽施設ですが、運営企業は別のところのはずです。そのクーポン券はいずれも、様式・手法において私が初めて見掛けるユニークなものでしたが、似通ったものが2店より偶然同じ日に入ってきました。
 券持参で入場料が割引される、というごく一般的なサービス内容です。ただ、利用者に求められる記入事項が「自宅の郵便番号7ケタ」のみ、である点がユニークです。皆さんはこのようなクーポン券を見たことがありますか?

 

 さて、

この形式にすることによって生まれる、利用者側及び店側のメリットとしてはどのようなことが考えられるでしょうか?
店側の狙い(策略?)はどういったところにあるのでしょうか?

 

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 まずは利用者側のメリットから。
 主なポイントは、「郵便番号しか書かなくてもよい」という手軽さ、でしょう。

 より安い買い物を心掛けている財布の紐が固い堅実な人は、このようなクーポン券収集に熱心であることが多いです。”ケチ”とかそうでないとかではなく、住所や名前等多くを要求されるかつてよく見られたスタイルのクーポン券であっても、値引きを享受するためなら記入の手間を惜しまず利用します。

 でも世の中には様々なタイプの人がいます。すなわち、「いちいち書くくらいなら使わなくても別にいい」と考える人です。記入が面倒臭いし、その店は家から近いわけでもないしわざわざ…、といった感覚でしょうか。

 また、”手間”の要素もあれば、”個人情報を提示したくない”という部分も、利用者側にとっての裁定事項になることが近年では多いと言えます。
 店側はそこをついている。利用者心理を量った上での新スタイルのクーポン券でした。

 

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 次に店側のメリット(あるいはデメリット)はどうでしょうか。

 上述からの繋がりから考察するならば、「(従来のように)住所や名前の情報を得られなくてもよいのか」「これは通常スタイルのクーポン券に比べ、情報という部分で損はしないのか」といったことが懸念されます。しかし、問題がないから店側はこの”郵便番号形式”を採用しているのですよね。

 論点は以下のようになるでしょう。

 個人情報の管理は昨今の法令に基づき、店側にとって煩わしいものになっている。煩わしくならない範囲内で店側が「知りたい」情報はクーポン券の利用顧客の自宅の郵便番号であり、また同時にそれで事足りる。前述のように、「記載が面倒臭いから」を理由に利用してもらえない(来店してもらえない)のは店側が望むことではなく、利用してもらえて初めてチラシを入れた意味があるので、利用を促すために「郵便番号のみ記載」という気軽さを提案した。――となるでしょうか。

 

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 ここからが深いところです。

 この郵便番号の”価値”はいかなるものでしょうか。そもそも新聞の折込チラシを入れるのには莫大な費用がかかります。新聞社の選択と配達エリアの絞り込みとがあり、より効果的な、最大の成果が見込まれるような選択をする必要があります。

 この事例では、「チラシを見て来店した顧客」はまず例外なくそのクーポン券を利用することになります。
 同時に店側は、どこのエリアに住んでいる顧客に対してチラシ効果があったのか、を郵便番号によりほぼ正確に実態把握することができます。すなわち、次回チラシを入れる際の配布先選択においてその結果に基づく判断をすることができます。1回目の折込配布時には、競合店の店舗配置、交通の利便性等を主要素としただけのマーケティングになると推測しますが、2回目のチラシ配布企画において、より無駄の少ない効率的な行動をとることができると考えられます。

 他にも考えられる要素があるかも知れません。皆さんも考えてみてください。一人で考え込むだけではなく、職場や家族で話し合ってみたら楽しいかも知れませんね。

 

 できるだけ安い買い物をしたりクーポン券を集めたりして経済的に賢くなりましょう!ということをここで呼びかけているのではありません。他人が練り出した工夫やアイデアを分析して、自分自身の仕事や生活における発想能力を高める一助になれば、という考え方です☝

※ちなみに、『クーポン』自体が”券”という意味を含む外来語なので、『クーポン券』と言ってしまうと”券”の部分が重複してしまうから誤った語法である --- という説明があるのですが、諸要件を鑑みここではそれに沿うことはしていません😅

 

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