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アジアのUX:その3〜モビリティと情報

アジア旅行レポートの3回目はモビリティ・交通サービスについてです。

車のライドシェアサービス、乗り物のシェアサービス、公共交通機関についてそれぞれ取り上げてみます。日本は交通のインフラが整っているとはいえ、今回体験したサービスはいずれも日本にはない新しいものでした。

共通して感じたことは、情報の使い方が新しいモビリティのビジネスを生み出すということです。では3つの事例をご紹介します。

GrabとDiDi

ローカルでの移動は電車やバスも少し使いましたが、割とライドシェア系のサービスを利用していました。バンコク・シンガポール・ダナンではアジアのUber的な存在のGrabを、中国では同行している友達にお願いしてDiDi に乗りました。

Grabは基本的にはUberと同様に、目的地を設定して近くのドライバーとつながり送ってもらい、支払いは全てオンライン上で自動で引き落とされます。ちなみに競合にGO-JEKというサービスがあります。(Uberに対するLyftのような位置付け)現地で知り合った人と移動したときはGO-JEKで移動しましたが、基本はだいたい一緒とのことです。

対してDiDiは配車サービスに近い位置付けで(僕のときはDiDiでタクシーを呼ぶ使い方が多かったです)、支払いはwechat PayかAlipayで行うという点が違いますが、どちらも旅行者としては目的地をあらかじめスマホで設定できるのが楽です。

今回はGrabをメインに使いましたので、こちらをご紹介します。

まずトップメニューです。配車はもちろん、東南アジア特有ともいえるバイクの配車もあればレンタルもあるし、Uber eatsに当たるようなご飯の宅配などのデリバリーサービスなどもあります。(日本帰ってからアプリ立ち上げたら機能制限になってたので、公式HPから画像お借りします)

このあたりはGO−JEKが先行して出張マッサージのサービスなどから広がったようです。詳しくは僕も一部関わった『ビジネスモデル2.0図鑑』に詳しく書かれています。ベトナムではGrabバイクの宅配の人をよく見ました。

この傾向、1つのアプリでいろんなことができるサービスは中国にも多くあって、例えばチケットの予約から宿の手配なども1つのアプリでできます。代表的にはwechatがそうで、そもそもDiDiもwechatの1つにあったりします。日本ではLINEが近いかと思いますが、感覚的に普及の規模が違うなと思う理由は、地図情報や移動が起点になって発展したからではと考えます。

今回僕が使ったのは配車だけなので、まず目的地を設定します。外国人旅行者としてちょっと使いにくかったのは、目的地が現地語でないと見つけにくかったり、GoogleMapと連動していなかったから、都度確認して入力していました。慣れていないので目的地を地図の位置に直接設定しようとすると、現在地が変わっちゃうのには少し手間取りました。

設定するとドライバーが決まります。乗車位置の場が設定されているので、乗る人もそこまで移動します。たまにチャットでドライバーから連絡がきます。車が来たら、車種とナンバーを確認して乗車します。名前の発音がわからないことが多いので、Uberとは違って名前で確認しあう習慣にはなってないようで、僕はシンプルに「こんちにわ、ありがとう」と最低限の言葉(なるべく現地語で)言って乗せてもらいました。

Grabの車は全般的にかなりいい車が多かった気がします。新しくて内装もキレイで、バックミラーにアプリの情報が映っている車もあって、おそらく現地タクシーよりも車のスペックは高いのじゃないかと思います。運転手もどことなく所得にゆとりがありそうな人が多い印象。

シンガポール以外はお互い英語が共通語ではないこともあり、ドライバーが話しかけるようなことはありませんでしたが、どの国も丁寧でやさしいサービスでした。一度こちらから話かけたとき(LINEを使ってたのでバンコクでもよく使われているのか知りたかった)ドライバーはGoogle翻訳を使って頑張って話してくれ、デジタルをサッと使う柔軟さに関心しました。

到着すると「ありがとう」と言って降りて、あとで評価をするだけです。履歴が残っているので、支払いもあとで確認できるのは助かります。料金はおそらく現地のタクシーと同等くらいかと思いますが、日本のタクシーと比べたらすごく安いし、変な駆け引きのトラブルになることもないので、アジア特有の利便性としてこれを使わない手はないなと思います。(ちなみにGrabはクレジットカードの登録は現地でないとできないようです)

Uberもそうかと思いますが、デジタルの活用によってドライバーが個人の意識で働くので、結果として透明性もサービスの質も高まっています。デジタルは個人をエンパワーメントする(逆にいうと、企業や組織のカサに隠れていた不透明さの要素はこれから解体されていく)ということを改めて考えさせられました。

Neuron

シンガポールは小さい国とはいえ、観光で歩きまわるのはそこそこ大変です。そんなことを思っていたとき、目の前を電動キックスクーターがスーっと通りすぎたので「なんだあれ?」と思ってその場で検索。どうやらいくつかシェアサービスがあるようで、海外の旅行者でも使えるようです。

僕は一番数が多そうなNeuronというアプリをダウンロードしてみました。クレジットカード登録などを済ませたあとにトップ画面にいくと、マップ上に現在地と近くにあるNeuronの電動キックスクーターが表示されます。

電動キックスクーターが置いてある場にいって、ハンドルについているQRを読み込みます。そうすると自分が使えることになりロックが解除されます。(解除しないで触ると警報音がなります)最初にスマホで簡単なガイダンスを見たら、あとは乗るだけ。

乗り方は簡単です。最初に足で蹴り上げてから右のグリップを握って加速。スピードは2段階あって、自転車専用レーンでは20km/hまで出せますが、通常は10km/hを歩道で移動します。自転車よりも小回りが効くので、都心部の移動にとても適している乗り物だと思います。

乗って気づいたことは、街中はほぼ段差がないこと。建物の通路部分を通ったりもしますが、階段があるところにはすべてスロープがついています。これは道路のインフラが整っているシンガポールならではの交通手段だなと思いました。

(誰かに写真撮ってもらえばよかった...)

使い終わるときは決められたスポットに乗り捨てします。そのあたりでもできなくはないですが、その場合はペナルティ料金が発生します。終了のボタンを押して、最後に停めた状態を写真で撮って送ります。これによって、この電動キックスクーターはこの場所にあることを証明する紐付けになるのでしょうが、利用者も安心できるいいタスクだと思います。

10分で200円弱くらいなので、料金は安くはないですが、旅行者が使う分には申し分ない、とてもいいサービスです。

これを体験すると、シェア自転車は大きすぎる印象を持ってしまいます。電動キックスクータの方が設置場所がコンパクトで怪我の心配も少ないと思います。中国ではシェア自転車が流行っていますが、僕が中心部にいたからかあまり使っている人は見ませんでした。

日本では電動キックスクーターの使用は法律的に公道ではNGですが、体験した僕としてはシェア自転車よりも利便性高く安全だと思うので、日本でも普及してほしいものです。こうしている間にも、中国では電動の乗り物で遊んでいる子どもがいました。

地下鉄のMAPのグラフィックデザイン

3つめはデジタルが関わらないですが、上海とシンガポールの地下鉄がとてもわかりやすかったことに関心しました。地味ですが、路線図のグラフィックデザインが秀逸だと思います。

僕が関心した点は主にこの3つ

・路線が全部番号で表示
・線路の先に路線番号が書いている
・切符は目的地をタッチパネルで選んで買うだけ

色弱で外国人の僕にとっては、路線図の先に何号線と書いている表記は本当にありがたいです。東京の路線図って色と対応づけさせる形で●●線と書いていますが、あれは僕でもいまだによくわかりません。このあたり、割と新しくつくられた上海とシンガポールだからできたことだとは思いますが、日本でも見習うべき点はあると思います。

ちなみにキャッシュレス社会といわれる中国ですが、地下鉄は券売機をつかって現金で切符を買えます。

シンガポールも同様ですが、ペラっとしたカードが実はSuicaのようにデポジット型になっているので何回も使えます。確か7回使うとちょっと割引になるらしいです。

まとめ

モビリティのサービスについてまとめます。

交通サービスは地図情報がベースとなって、コミュニケーションのしやすさ、支払いの簡便さ、行き先や手順のわかりやすさ、といった価値をユーザーに提供しています。そして、全体に向けてはシンプルな情報を、個人に向けては動的でインタラクティブな情報を扱っています。

デジタルに関していうと、インタラクティブな情報を活用できるかということが大切になっているのではと考えます。移動手段の選択肢が広がり個々に最適化された交通サービスを提供するためには、情報がカギとなります。

それは単に『車内広告で好みを知る』といったような事業側の視点ではなく、今回ご紹介したような『ユーザーが心地よいと感じられる体験価値』につなげることが重要です。日本ではまだそれが十分ではないような気がします。

例えばレストランに行く時、すぐに知りたいのはお店までの行き方だったりしますが、グルメサイトだと地図ページにいくまで時間がかかったり、地図画面が小さくてわかりにくかったりという経験があるかと思います。こういったことをモビリティサービスという観点からつくるという視点が、これからのビジネスで求められてくるのではないでしょうか。

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こんな感じで便利な交通サービスを体験してきましたが、最後にもう1つ。バンコクでは割とバスも多く利用しましたが、アジアらしさを感じさせるバンコクのバスは、運転手の他に車掌さん的な人が1人いて、乗ったあとに目的地を聞いてその場で料金を払うという仕組みです。

この料金箱が興味深いです。お札は指に挟んで、細かいお金は箱のなかに分かれています。個人的にこういう現場の工夫が生み出したスタイルは大好きなので、利便性がどんどん発達していっても、一方でこういった要素はなくならないでほしいなー、とも思ってしまいます。

デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。