リバースイノベーション_メモ

輸出ではなく現地でつくって世界に広げること:リバース・イノベーション

僕もメンバーとして関わっているビジネス図解研究所(通称:ビスケン)でもnoteでマガジンを書いていますが、3月の特集テーマはインドで、今回このテーマで僕は全体の編集を担当しました。記事はこちらです。

この取組みでインドのユニークなビジネスモデルの事例を調べていくうちに、『リバースイノベーション』が1つの重要なキーワードになることに気がつきました。(インド特集の後半の方にポイントを書いています)

言葉は知っていたけど、深いところまでの理解はなかったので、これを機会にあらためて本で勉強してみました。誰かに聞かれたときにサッと説明できるように、本書の内容をここにまとめてみます。

リバース・イノベーション
ビジャイ・コビンダラジャン、クリス・トリンブル(著)
渡部典子(訳)小林喜一郎(解説)
ダイヤモンド社 2012.09

まず、基本的な考え方から。リバース・イノベーションとは言葉通り、イノベーションんが逆流していく現象を表していますが、具体的には国と国の関係性を意味しています。一行でまとめると、

途上国で最初に生まれたイノベーションを先進国に逆流させること

になります。具体例としてはインド特集でも紹介した、貧しい人は無料で治療を受けられる『アラビント眼科病院』や、生理用ナプキンの『ayaashree Industries』があります。どちらも、インド国内に安価でビジネスがまわる仕組みをつくりつつ、それが先進国の製品やサービスに劣らない質であり、インドから国外に広まっていく取組みです。どうやってそれが実現できているかは、詳しくはこちらに書かれています。

では、このリバース・イノベーションを生み出すためには、どんなことを意識することが大切なのか?ということについて、ここで2つの思考の切り替えを紹介します。

1. 富裕国の成功体験を捨てる

例えば日本人である僕が、日本の価値観で途上国へのサービスを考えると、現地では受け入れられないものになってしまう可能性は高いです。リバース・イノベーションでは下の5つのギャップを認識しておくことが大切ということです。

・性能:安かろう悪かろうはダメ、超割安だけどけっこう質がいいこと
・インフラ:未整備の状況をチャンスととらえること
・持続可能性:環境にやさしい=市場ニーズが高いと認識すること
・規制:製品の普及によって規制を変えていくこと
・好み:現地の人をよく知ること

特に性能に関しての誤解は多く、ただ低価格のモデルを輸出してもうまくいきません。ここが難しいところですが、言い換えると、先進国ではつくれない、現地のニーズやリソースを活用することが成功のヒントであるともいえます。

またインフラに関してはリープ・フロッグの考え方が役立ちます。リープ・フロッグとはカエルがジャンプすることですが、ここでは一足飛びに新しい技術が広まる現象を意味しています。例としては、固定電話の回線よりも携帯が先に普及したアフリカや、先進の認証技術を使って大多数に普及したインドの国民ID(これも特集記事で紹介しています)などがあげられます。

2.輸出ではなくイノベーション開発

外から静観した立場でいるのでは、絶対にリバース・イノベーションは根付きません。なので、現地で開発をするために知恵を絞る必要があるし、誤解や不安を解消する必要があります。例えば、「現地での開発と販売は利益率が低すぎるのでは?」という考えに対しては、人の数の多さや、まだ掘り起こされていない需要の高さなど、市場規模の大きさ、といった可能性を見つけていく必要があります。

そのためには、組織の意識改革も必要になります。特に先進国の会社が現地に進出する場合は、本社の価値観で組織が構成されがちですが、それでは現地から生まれるリバースの流れをつくることはできません、資源・権限・マインドセットなどを現地に合わせる必要があります。収支の算出や評価制度も、現地オリジナルのものにしないと、実行段階でつぶされていまうことになるということです。

商品やサービスと、組織や個人の意識、あらゆる面から捉え方の意識を変えていかないとリバース・イノベーションの流れをつくることはできません。

・・・・・

以上が、僕なりに大切だと思ったことをまとめてみた内容になります。本書ではたくさんの事例と合わせて、戦略実行のための方法論がかなり具体的に書かれているので、国外にビジネスを考えている人は一読をお勧めします。

全体を通して印象的だったのは、先進国側からの見方で捉えるのではなく、現地の視点に立ってどうイノベーションを起こすか?あるいは、新興国から先進国や世界全体に広めていくためにはどういったビジネスが考えられるか?という考え方です。この視点が持てるようになると、世界のビジネスの取組みがまったく違って見えるようになるかもしれません。

僕もインドのビジネスモデルを通じて多くのことを学んだので、他の国の取組みに興味を持ってもらえればと思います。僕は最近、中国について調べることがあったので、それについてはまた近いうちに。

ちなみに最近のインド経済については『インド・シフト』がおすすめです。ここにはたくさんの事例が載っていて、今のインドを知ることができます。過去ブログで書いたまとめも貼っておきます。


この記事が参加している募集

推薦図書

デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。