映画監督・山崎貴

 山崎貴監督について彼の監督作の印象やインタビュー等を元にキャリアを振り返っていく。

監督作一覧
・ジュブナイル(2000年)
・Returner リターナー(2002年)
・ALWAYS 三丁目の夕日(2005年)
・ALWAYS 続・三丁目の夕日(2007年)
・BALLAD 名もなき恋のうた(2009年)
・SPACE BATTLESHIP ヤマト(2010年)
・friends もののけ島のナキ(2011年)
・ALWAYS 三丁目の夕日’64(2012年)
・永遠の0(2013年)
・STAND BY ME ドラえもん(2014年)
・寄生獣(2014年)
・寄生獣 完結篇(2015年)
・海賊とよばれた男(2016年)
・DESTINY 鎌倉ものがたり(2017年)
アルキメデスの大戦(2019年)
・ドラゴンクエスト ユア・ストーリー(2019年)
・ルパン三世 THE FIRST(2019年)

 まず彼は常々公言している通りSF好き。子どもの頃は「ドラえもん」などの漫画やSFもの小説を多く読んでいたらしい。中でもハードSFっていうよりは広義のSFもの、”サイエンスフィクション”というより”すこしふしぎ”の方が好きだったようだ。そんな山崎少年を熱中させ、映画の世界に入るきっかけとなったのが『未知との遭遇』や『スター・ウォーズ』等スピルバーグ一派によるSF映画の数々だった。
 そして1986年に白組に入社。最初は特撮がやりたいというだけで監督志望ではなく、CMの仕事や映画のスタッフとして働く。伊丹十三監督の作品群でデジタル合成やSFXなどを担当。ちなみに黒沢清監督の『スウィートホーム』でもSFXを担当している。そんな中、これまで請負仕事が主だった白組内で自社制作映画を作ろうという話が出て社員から企画を募集し始める。山崎貴は数年前から考えていたオリジナル企画で日本の妖怪を題材とした大作『鵺/NUE』を提出して企画がスタートする。ちなみに何故『鵺/NUE』をやることになったかというと、社内で企画を出したのが山崎貴ぐらいしかいなかったかららしい。そんなんでいいのか。しかし『鵺/NUE』はかなりの大作、制作費に30億円が必要であったため当然のように停滞する。それならばと『鵺/NUE』よりも低予算でできる企画として再び山崎貴が提出したのが、彼の長編初監督作となる『ジュブナイル』であった。製作費は当初1億5000万円を予定していたが、映画制作会社ROBOTの阿部秀司社長の尽力により制作費は5億円となった。山崎貴は当時のインタビューで結果的に初監督作が『鵺/NUE』じゃなくて良かったと言っている。「初監督作で『鵺/NUE』をやっていたらあまり良いものにはならなかったと思う。それに『鵺/NUE』はやっちゃうと終わっちゃう感じがする、もちろん満足はしないと思うけど」と。しかしいつかは絶対にやりたいと思っているらしく「お金がかなりかかるから興行力を身につけて、技術力ももっと上げなければ」と発言している。監督デビュー作『ジュブナイル』は2000年に公開。好評をもって迎えられ、興行収入は11億円を記録。その後、監督2作目として撮った2002年公開の金城武を主演に据えたSFアクション映画『Returner リターナー』は日本国内のみならず海外でも配給されるなどして、当時のメディアでは日本のジェームズ・キャメロンとまで言われていた。山崎貴はインタビューで「僕らの世代ってサンプリング世代、パクりという言い方もありますが(笑)。そういう影響を受けたものが作品に出やすい」と言っている通り、『ジュブナイル』では『スタンド・バイ・ミー』や『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』等の、『Returner リターナー』では『マトリックス』や『ターミネーター』等の影響がビンビンに感じられる。しかし、そういう青臭さとかも含めて自分もこの初期2作は嫌いじゃないし、ここまではSF映画監督として順調なキャリアの進み方だと思う。問題はここから先だ。
 山崎貴の監督3作目は2005年公開の『ALWAYS 三丁目の夕日』。興行収入32億を稼ぎだし続編が2本作られたにもかかわらず、コアな映画ファンにもの凄く嫌われているシリーズの一作目だ。初期2作と違い、『ALWAYS 三丁目の夕日』は山崎貴が企画した訳ではない。初期2作の制作に関わっていたROBOTの阿部秀司社長が、自分が少年時代を過ごした昭和30年代を舞台に映画を作りたいという願望から生まれた企画だった。最初、企画を聞いた山崎貴は全く乗り気ではなく、なぜ俺がそんなSF要素のない映画を撮らなきゃいけないの?と思ったらしい。阿部秀司社長は『ジュブナイル』『Returner リターナー』とSF映画が続いて3作目もSF映画だとSF映画監督というレッテルを貼られる、ジェームズ・キャメロンも『ターミネーター』の後に『タイタニック』を撮ったと説得し、最終的には「君は空想のものなら表現できるけど、実際にあったものは表現できないんだろ?」と鎌をかけ、結局「できます」と山崎貴が答えてやることになった。このエピソードだけ聞くとこんな安い煽りに乗ってバカなのか山崎貴って思うし、阿部秀司社長にはSF映画監督で何が悪いんだよって言いたくなるけど、まあ決まっちゃったものはしょうがない。ちなみに当時山崎貴は「2作作らせてもらったし、つきあうしかないか」と思っていたらしい。なんだその妻の買い物につきあわされてる夫みたいな嫌々感は。そんな山崎貴的には乗り気じゃなかった『ALWAYS 三丁目の夕日』だが32億稼いでしまい、それだけならまだしも第29回日本アカデミー賞では最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀主演男優賞、最優秀助演男優賞、最優秀助演女優賞、最優秀音楽賞、最優秀撮影賞、最優秀照明賞、最優秀美術賞、最優秀録音賞、最優秀編集賞の12部門を受賞してしまう。個人的に『ALWAYS 三丁目の夕日』はそこまで悪い映画だとは思ってないけど、そこまで悪くないってだけで素晴らしい映画だとは思わないし、明らかに過大評価だと思う。そしてこの過大評価が山崎貴を間違った方向へ進ませる。2007年に公開された続編『ALWAYS 続・三丁目の夕日』では、前作『ALWAYS 三丁目の夕日』が感動作としてヒットしたことを前提に作られており、終盤に小雪演じるキャラクターを短期間に三回泣かすという素人に演出任せたとしてもしないであろうクッソ寒くて安い感動演出を繰り広げる。これはおそらく山崎貴が前作の過大評価を真に受け、こういうの作ればみんなに喜んでもらえる!みんなに褒めてもらえる!と思ってしまった末の彼なりのサービス精神によるものなのではないかと思う。そしてこの過剰なサービス精神はその後の山崎作品でも続き、悪い意味での特徴になってしまう。
 そこまで乗り気じゃない人情モノを2作撮り、山崎貴は再びアクションやSFなど自分の元来やりたかったジャンルの企画を進める。それが2009年公開の『BALLAD 名もなき恋のうた』と2010年公開の『SPACE BATTLESHIP ヤマト』だ。しかしこの2本は同じ理由により失敗に終わる。それは話のスケールに対する予算とのギャップ。『BALLAD 名もなき恋のうた』は『ALWAYS 三丁目の夕日』を経験したことによりもっと遡った時代、戦国時代の話がやりたいと思ったことで始まった企画だ。「本当に戦国時代に行ったらこんな感じだったという風景を見せたい」と意気込んで作ったが、終盤の戦シーンのショボさは目に余るものであった。『SPACE BATTLESHIP ヤマト』は戦艦とSFという山崎貴が一番好きなジャンル。VFXはかなり気合いが入っており、『スター・ウォーズ』のような宇宙戦を繰り広げたりと『Returner リターナー』の時のような映画好き感全開で戦闘シーンはかなり頑張っていると思う。しかしヤマトの船内のシーンになるとまるでダメで、たぶんセットなんだろうけどあのバカでかいヤマトの船内にしてはスケールが無さすぎる。それに加え、後に山崎貴の妻になる佐藤嗣麻子の書いた圧倒的につまらない脚本もあいまって評価は散々だった。この2本に関しては山崎貴もやりたいようにやれずかなり悔しかったのではないだろうか。
 実写では思ったようなものが描けないと思った、のかどうかは分からないが山崎貴が次に撮ったのは3DフルCG映画、2011年公開の『friends もののけ島のナキ』。「泣いた赤鬼」を原案とし、初めての共同監督として八木竜一とタッグを組む。ただ正直この作品に関しては特に言うことがない。というのもこの作品、単純につまんないのだ。いつもの山崎貴作品にはある、このシーンやりたかったんだろうな、こういうの好きなんだろうな、という要素が全くなく1本の映画として無味無臭過ぎる。八木竜一の方のやりたい企画だったのか、山崎貴的には初3DフルCG映画として実験的な企画だったのか。その次はお金儲けのためか『ALWAYS 三丁目の夕日'64』を2012年に公開する。『ALWAYS 続・三丁目の夕日』の時のインタビューで山崎貴は「一作目を作った時プロデューサー達とこれは続編作っても絶対ろくなものにならないから続編は作らないという話をした。だから作らないんだろうなと安心して別の企画を進めていた。そしたらあまりにも沢山の人が感動してくださっているみたいで、これは作らないわけにはいかないだろという事になっちゃったみたいです(笑)」と言っていた。オブラートに包んでるけど、要は予想以上に稼げたからもっと稼ぎたいって言われたってことだろ。まあ自分は映画は娯楽、それ以上でもそれ以下でもないと思っているが、作る側・お金出す側からしたら映画はビジネス、仕事だということはしょうがない事だと思うので別にいんだけど。つまんないけどヒットしちゃって続編作られるっていうのはどこの国でもある話だ。
 そんな実験的な映画やドル箱シリーズの新作を作り、次に撮ったのは2013年公開の『永遠の0』と2014年公開の『STAND BY ME ドラえもん』。この2つの企画は山崎貴のこれまでの作品の発展系となっている。ここまでの作品で山崎貴が学んだのは、日本の多くの観客は自分の好きなSFモノや戦艦、アクション等よりも人情モノや感動モノを好むということ。それを踏まえた上で戦艦や戦闘機が出てくる戦争映画をやりたいと思った山崎貴は、2009年に文庫化され着々と部数を伸ばしてきて2012年にはミリオンセラーとなった百田尚樹の小説「永遠の0」を映画化する。零戦のパイロットを主人公にした話ではあるがぶっちゃけメインの話はパイロットと妻の夫婦愛である。売れた原作、テーマは夫婦愛。また、SF映画をやりたいと思った山崎貴は昔から読んでいた「ドラえもん」から泣けるエピソードを多く抜き出し1本の映画としての脚本を書いて企画。ネームバリューのある原作、泣けるエピソード、”ドラ泣き”というキャッチコピー。これらの要素のおかげか『永遠の0』は興行収入87億、『STAND BY ME ドラえもん』は83億で2014年の邦画興行収入ランキングで1位と2位を、全体で見ても『アナと雪の女王』に次いで2位と3位を記録した。『永遠の0』は山崎貴の持ち前のVFX技術により描かれた戦争描写はなかなかのものだった。しかしこの映画はかなりの賛否両論作となる。論点は戦争賛美とか特攻を美化している等。まあ原作からしてかなり批判されていたらしいのだが、映画で一番問題となったのが多分ラストの岡田准一が特攻するシーンで彼を笑わせた所だろう。ただ個人的には、この映画に戦争賛美とか特攻を美化しているような感じはあまり感じなかった。個人的に一番問題だと思うのが、単純につまらない事。山崎貴がやりたかった戦争描写はビックリするほど少なく、やはりメインのテーマは夫婦愛なのでそういう描写が長い。山崎貴はあんまり興味ないないであろう(てか興味あるんだとしたらあんな演出にはならないだろ)夫婦愛の話を、彼も変に真面目なので丁寧に結構な尺を使い描写してくれる。この映画2時間24分あるのだが、かなり苦痛だった。こんな薄いストーリーをなぜハリウッドの大作レベルの尺でやるのか理解ができない。『STAND BY ME ドラえもん』はその点、子どもも観れるように1時間35分という良心的な尺なのだが、この映画も単純につまらない。タケコプターでの飛行シーンとか褒めたい所もあるのだが、エピソードが多すぎる。泣けるエピソードばかりを選んでるのも問題だけどそれ以上に一個一個のエピソードをちゃんと処理できていないのは致命的だろう。展開がポンポン飛びすぎて何の感慨も生まれないまま次のエピソードに行ってしまう。ちなみに『STAND BY ME ドラえもん』は『friends もののけ島のナキ』と同じく八木竜一との共同監督。この2本は他の映画ファンの評価もあまり著しいものではないのだが、数字には勝てない。この2本により山崎貴は誰がなんと言おうが日本映画界のトップヒットメイカーとなってしまう。
 この功績のおかげ、なのかどうかは分からないが山崎貴が次に撮ったのは彼が本当にやりたい企画。2014年公開の『寄生獣』と2015年公開の『寄生獣 完結編』の二部作だ。山崎貴は原作が連載されていた当時からのファンであり映画化したいと思っていたようだが、一度映画化権がハリウッドの映画会社に渡ってしまう。しかし結局ハリウッドでの映画化は見送られ、日本で映画化出来ることになる。ちなみに『寄生獣』がハリウッドで映画化が見送られたのは『DRAGONBALL EVOLUTION』が大失敗した所為であるという噂がある。山崎貴は映画化権が日本に戻ってくる前から企画に関わりたいとアピールしていたというぐらい念願の企画だったが、結局山崎貴が本当に望む形での映画化は出来なかった。というのも山崎貴が最初に書いていた脚本の初期稿は『ALWAYS 三丁目の夕日』等でも共同脚本でタッグを組んだ古沢良太により大幅に書き直されてしまったという。最終的には古沢良太が書いた方の脚本を基準に山崎貴が書いた方の脚本の要素も取捨選択し取り入れるという形になった。それに加えて最初は原作の残酷な描写もしっかりと再現出来るようR-15指定で制作していたが、途中でプロデューサーからPG12にしろと言われたらしい。脚本の方は分からないけど年齢制限の方に関してはインタビューで言葉を選びながらも不満とも取れる発言をしており、やはりかなり嫌だったのではないだろか。脚本の方に関しても普通に考えて自分が昔から考えていた企画・脚本を他の人間に書きかえられたら凄く嫌だと思うんだけどどうなんだろう。まあ結局そんな案配で作られた二部作だが、山崎貴の情熱もあってか出来は普通に良く、映画ファンにも肯定的な意見が多い。自分も前編は好きじゃないけど、完結編は結構好きである。初期の山崎作品のように上映時間がどちらも100分前後なのも好感が持てる。
 自分がやりたかった企画をやった山崎貴は、やはり現代の映画監督らしく好きなことばかりもやってられないのか商業主義臭の強い映画を2本撮る。それが『永遠の0』と同じ百田尚樹原作で2016年公開の『海賊とよばれた男』と、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズと同じ西岸良平原作で2017年公開の『DESTINY 鎌倉ものがたり』。ヒット作の恩恵をもう一度的な感じで企画されたのが分かりやすいこの2本だけど、個人的にはどちらも褒めにくいし貶しにくい微妙なラインな映画だなって感じだった。職人監督的に無難に作った感じで、初期作のような情熱は一切感じなかった。ちなみにもはや山崎貴の十八番みたいになってるDESTINYみたいな頭に英語タイトルが付くやつは殆どがプロデューサーの阿部秀司のアイデアらしく、そこに反感を覚える人の気持ちは分からないでもないらしい。『STAND BY NE ドラえもん』の時のキャッチコピー”ドラ泣き”に違和感を抱く人にも理解があるようで「そもそも泣くか、泣かないかは観客が決めることでしょ。それを最初から『泣けますよ』と言い切るのはなかなか思い切った戦略です・・・」と発言している。あんなここで泣いてください!みたいな演出をするお前が言うことか?と思ってしまうが、実はあのクドい感動演出も阿部秀司のせいなのではと穿った見方もできる。まあどちらにせよインタビューでかなり言葉を選んでいるあたり、デビューからお金を出してもらってる阿部秀司には逆らえないんだろうな。
 そして2018年には公開作が1本もなく、何してんのかと思ったら2019年はまさかの公開作3本である。まず『アルキメデスの大戦』。予告編の感じからは『永遠の0』路線の戦艦や戦闘機のVFXがやりたいだけの薄い話を大作級の尺で垂れ流す映画になる予想してたのだが、実際観てみるとそんなことはなく欧米列強との対立を深めていた昭和8年の日本を描きながら現代の日本を風刺したような秀作に仕上がっていた。勿論エンタメとしても楽しめる作品で、VFX、キャラ萌え、演技合戦、など山崎作品の良いところを残したまま、クドい感動演出、うるさい音楽、わざとらしい演技、などの悪いところが出てこず山崎貴最高傑作と言って差し支えない出来だと思う。現代の日本が進む雲行きの怪しい道を暗示しているラストも素晴らしかった。『永遠の0』の時のインタビューで「こんな思いをして守った国の今がこれってことですよ。そんなに胸を張ってちゃんとこうなってますって言えるかどうかっていうのは悩ましい。昔の人達に恥じない国を作っていけるようにみんなで頑張っていかなきゃならないんじゃないかなっては思いますね」って言ってたので、少なくとも現代の日本が素晴らしい国だとか思ってるような人ではないんだろう。
 『アルキメデスの大戦』は戦艦”大和”を題材にした映画が撮りたかった山崎貴が自分から出した企画らしいが『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』は自分発信じゃないらしい。というかそもそもゲームの映画化自体にあまり良い印象を抱いていないようでゲーム映画化で成功したためしがないと断っていたがあまりにも何度も頼まれたのでやることになったようだ。ただ総監督と脚本にクレジットされているが、インタビューを読んだ限りでは脚本はほぼ原作・監修の堀井雄二との共作だし、「自分は立ち上げの時に動いただけで現場を回したのは監督の八木竜一と花房真」らしいので演出も細かい所はやってないのだろう。つまりぶっちゃけ総監督ってのは名前貸しただけなんじゃないかな。ネームバリューとかもあるだろうし。故に個人的には監督作ってよりは脚本参加作っていうイメージ。評価はかなり割れていて、主にラストのオチの部分を受け入れられるかどうかが論点。個人的な評価としては、前半はCG技術やアクションは悪くないけど話が急展開すぎて何の感慨も生まれないまま話が進んでいくのでダメだと思っていた。中盤は普通。終盤とオチに関しては肯定派。まあ否定派の意見も分かるけど、最近ゲームをあまりやらなくなってしまった自分はあの終盤の展開を観て昔のゲームに熱中していた”あの頃”を思い出して結構感動して泣いてしまった。ただその時の泣いた勢いでド傑作だとツイートしたことは少し後悔している。冷静になって考えてみるとやっぱり前半はつまんなかったし、オチの見せ方もあまり上手くない。まあ肯定派であることに変わりはないが。あとちょっと思ったのは、テンポが悪い意味で速い問題に関しては山崎貴じゃなくて共同監督の八木竜一の方の作家性なんじゃないかな。勿論子ども向けだから一般映画と比べて時間を短くしているのと、その上映時間に見合わない一般映画級の尺が必要な脚本を毎回書いてくる山崎貴も悪いんだろうけど。
 山崎貴のキャリアを振り返っていると『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』のあのオチはある意味山崎貴から大人(商業主義)に対しての「好きなことやってなにが悪い」っていう反抗的なメッセージとも取れる気がする。結構インタビューとかでえ、それ言っていいの?的なことを言う人だと思うんだけど、やっぱり自分の今の状況に不満を抱いてるのかな。初期からやりたいって公言してる『鵺/NUE』とかSFのオリジナル企画も未だに実現できてないし、実現した企画も予算問題とかで上手くいかないしやりたいようにやらせてもらえない。ぶっちゃけこの人は監督3作目の『ALWAYS 三丁目の夕日』をちゃんと断るべきだったと思う。そして初期2作の勢いに乗ってSFオリジナル企画をあと1,2本やればよかった。そしたらもしかしたらハリウッドからの誘いなんかもあったかもしれない。『Returner リターナー』が海外でも配給されたことを考えるとそこまで非現実的な話でもないと思う。まあ今、山崎貴がどんな思いで作品を作り続けているのかは分からないが次回作『ルパン三世 THE FIRST』は予告編の時点から不安で仕方ない。山崎貴の3DCG映画としては初めて共同監督でなく単独での監督なので、そういう意味では楽しみっちゃ楽しみだが。

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