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【デザインシンキング・コンサル⑧】「場の文脈を可視化する」ことの意味と効果

こんにちは。DONGURIでデザインシンキング・コンサルをやっています、矢口泰介(@yatomiccafe)です。

グラフィックレコーディングに注目が集まっています(すでに注目を集める、というフェーズは過ぎているかもしれません)。

グラレコは、会議やイベント、セミナー、講義などにおいて、記録され、流れを追ったり、後から共有したりするのに用いられます。
グラレコを見たり、習ったりしている方も、非常に多いのではないかと思います。

また、グラレコのほかには、RTD(リアルタイムドキュメンテーション)や、ファシリテーショングラフィックなども注目されています。

このように<場で話されたことをリアルタイムで記録する手法>が、一過性のブームでなく、確かなポテンシャルを持って、様々な現場で求められているのを感じますが、
なぜ、グラレコを始めとした<リアルタイムの記録>は、これほど求められているのでしょうか?

今回は、これらの強力なツールの効果性(と、それが生み出す潜在的需要の正体)について、私自身がこれらのツールを用いた経験からではありますが、考えてみたいと思います。

「可視化すること」の効果

グラレコやRTDの有効性については、たくさんの意見や議論があると思います。その効果性は、「話されたことが可視化される」ということから生じる部分が非常に大きいと思います。

経験のある方も多いと思いますが、会議や議論を進めていくうち、話がズレていったり、一部の人たちがヒートアップするか、文脈を追いきれなくなって脱落していく、ということが起こります。

この「議論の空中戦」は、文脈をリアルタイムで可視化して地に足の着いた議論を進めることによって、ある程度防ぐことができます。

また、リアルタイムドキュメントに残すことによって、後から会議の流れを追うことができる、前回の流れを踏襲できる、という効果もあります。

当事者化の効果

私の場合は、この<リアルタイム記録>の効果性を特に感じるのが、ファシリテーションと同時に行う場合です。

ファシリテーションを行う立場からすると、私がこの「可視化」の力を最も実感するのが、議論に参加している人たちの当事者意識を高められる、ということです。

私の場合、ホワイトボードを使って、議論をとにかく書き出して、構造化していくというファシリテーションスタイルをよく行います。

そのときに起こるのは、以下の運動です。

* 質問
* 問いかけ
* 回答
* 更なる問いかけ
* 回答によって生まれた新たなテーマ
* さらなる問いかけ

この問いかけと回答を繰り返していく運動、さらにそれを可視化することによって、どうやら、参加者に「自分たちでこの場を作っている」という感覚が生まれるらしいのです。

私の場合は「ホワイトボードにどんどん書く」というストロングスタイルでリアルタイム可視化を行います(あまりグラフィカルではない・・・)。それでも「当事者化」の効果はより強くなります。

当事者化を高めるスタイル

デザインリサーチの文脈において場を持つとき、ファシリテーターは上の「問いかけ→回答」の運動を行い、定性情報の取得と情報の構造化を行います。

仮説を組み立て、それを問いかけによって検証しつつ、自身の<腹落ち感>を追い求めていきます。

最終的に、ファシリテーターが自身の腹落ち感を追い求めてリアルタイム記録を行うと、参加者も腹落ちしていく、という状態になります。
(自身の経験から言うと、ファシリテーターが、場の文脈の先を読んで、仮説を作り続けている状態だと、この「腹落ち感」が深くなります)。

いうなれば、ファシリテーターと参加者が一緒になって場を作っている、というような感覚が生まれます。

※同様の内容を、以下のインタビューで語っています。

事程左様に、グラフィックレコーディングをはじめ、<リアルタイムでの記録>は、単なる記録ではなく、場で行われている「対話の質」を高めるのに貢献する、強力なデザインツールであると思います。

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