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【イベント参加報告】「DRT読書会」に参加して気づいた「リサーチャー」の本質について

こんにちは。DONGURIでデザインシンキング・コンサルをやっています、矢口泰介(@yatomiccafe)です。

去る5/17(金)、Design Research Tokyoのスピンオフイベント「DRT読書会」に参加しました。書くのが大変遅くなってしまいましたが、本イベントは、私にとってかなり重要な気づきを得たイベントになりました。
理由は後述します。

「DRT読書会」とは?

本イベントは、デザインリサーチ・UXリサーチに携わる人たちで作る、不定期のイベントシリーズ「Design Research Tokyo」のスピンオフ企画です。


今回の内容は、アメリカで活躍するデザインリサーチャー・Indi Young氏の著作「Practical Empathy」を読んでの読書会。

自分で選んだ章ごとに「重要と思った点」「疑問点」をサマリとして記載し、発表・討論していくスタイル。みんなでお酒と食事を囲みながらの、とってもアットホームなイベントでした。

・・・が、参加までの道のりが、とても大変でした!!

というのも「Practical Empathy」は、日本語訳が出ておらず、全編英語だったのです。

参加にあたって、ほぼ10数年ぶりに英語の本を読み通す、というチャレンジが課されました(単に怠惰の結果なので同情の余地なし)。

Google翻訳とkindleの辞書をフル活用し、ゴールデンウィークの少なくない時間を読書に捧げました。しかし、その甲斐あり、内容はめちゃくちゃ勉強になり、面白かったです!(頭の悪い感想)

「Practical Empathy」とは?

Indy Young氏は米国を代表するデザインコンサルティングファームAdaptive Path社のファウンダーの一人で、現在も世界中で活躍しています。 

本書籍「Practical Empathy」のテーマは、デザインリサーチで重要視される「共感する力」の高め方、そして共感を仕事にどう活かすのか。

現役のデザインリサーチャーが、リサーチの考え方・哲学から、技法の細部に渡るまで、自身のスキルを棚卸しして、詳細に共有してくれる本は、日本ではなかなかお目にかかれません。
そんな貴重な機会を得たことも、本イベントに参加してよかったことの一つです。

内容はざっとこんな感じ

「Practical Empathy」の章立てと大枠の内容はこんな感じです。大枠の内容は私の言語感なので、詳細はやはり、実際に読んでいただくことをおすすめします!

Chapter1: Business Is Out of Balance
Chapter2: Empathy Bring Balance
▶ ビジネスにおいて定量データばかりが重視される傾向にあるが、共感がなぜ大切なのか。そもそも「共感」とは何か?なぜ必要か?

Chapter3: Put Empathy to Work

▶ 「共感」は仕事に適用することができる。その考え方。そのためには「共感」が、人の思考や意思決定のパターンを探り当てること、と知ること。

Chapter4: A New Way to Listen
Chapter5: Make Sense of What you Heard

▶ インタビューからその人自身や、背景にある「Guiding principles」を探り当てるときの様々なコツ。そして聞いた内容をサマリにまとめるときの具体的方法(英語圏ならではのtipsもあり面白い)

Chapter6: Apply Emapthy To What you Create
▶ サマリーからグループワークに落とし込んでいくプロセスの紹介。

Chapter7: Apply Empathy with People at Work
Chapter8: Apply Empathy Within Your Organization
▶「共感のマインドセットとプロセス」を、職場や組織そのものに適用してみる。

Chapter9: Where Do You Go from Here?
▶あらためて、「共感」マインドセットとは何か

読書会で出た主なディスカッションポイント

読書会では、ひとつの章ごとに、「気づいた点」「疑問点」を発表していったのですが、英語の本と格闘した「同志」という感があり、かなり盛り上がりました!

その中で、特に盛り上がったポイントは以下のとおりでした。(私がまとめたものなので、実際にその場で話された言語感とは異なっているかもしれません)。

①本書で紹介された聞き方を実践するのは難しそう!
「Practical Empathy」では、特にインタビュー中のスタンスや聞き方に、かなりの内容を割いていました。

・自分の思考や、「どう返事をしようか」という考えにとらわれない
・人が話すことに注意を払い、いわゆる「フロー」の状態に入ると理想的
・理解できるまで「なぜ?」「どういう意味?」と問い続ける
・理由ではなく、行動に着目する
・Guiding principles(信念や決定、思考を形づくるもの)を見つけ出す

などなど。
これを全て実践しようとすると、かなり難しいですよね!?

ただ、これらはあくまで「Develop」することが前提とのことなので、精進あるのみだと思いました・・・。

②日本人ならではのTipsがあるのではないか?
「Practical Empathy」は、おそらく欧米を意識して書かれた書籍のため、注意が「アメリカならでは」と思われるところも散見されました。

特に話題になったのが「相手が喋りすぎるときに、いかに聞きたいことを聞き出すか」という項目。
しかし、日本だとむしろ「相手が話してくれないときに、いかにしつこくなく聞き出すか?」という国民性がネックになりそう、という話になりました。

イベントを通じて気づきを得られた点

私自身、最近は名刺の肩書に「リサーチャー」と入れていますが、その仕事の本質や、やるべき範囲、身につけておくべきスキルなどがわかっていないことが多く、「本当にこのリサーチャーと名乗って良いものか・・・」と悩むことも多いです。

このイベントに参加したのは、「リサーチャーとはなにか?」という疑問の答えを少しでも得られたら・・・という希望があったからでした。

勉強会に集まったのは、主催者の野澤さん、「Design Research Tokyo」を主催しているAQ株式会社のみなさんを始め、

・事業会社でリサーチをされている方
・研究所でリサーチをされている方
・マーケティングリサーチからUXリサーチまでされている方
・・・などなど、
「なんのために」「どのように」「どんな経歴で」リサーチをしているかが、良い意味でバラバラの皆さまでした。

皆さんの意見や、仕事内容、考え、つまづくポイント、悩みを聞いて、私は2つの考えを持つに至りました。

1. デザインリサーチは「まだ明確な定義のない仕事」なのかもしれない
デザインリサーチ、とは、デザインシンキングと同じく、おそらく無理に定義をしようとすると、必ずはみ出すものが出てくるような、まだとらえどころのないものなのではないか。

2. ただ「身につけるべき技術」は確実にある
ただ、「Practical Empathy」でも事細かに記述されていたように、デザインリサーチは、文化人類学や、研究におけるリサーチの文脈から、使える技術が引き継がれて構築されているため、
確かに身に着けておくと質を高めてくれる技術があり、それを疎かにしてはいけないのだろう。

したがって、デザインリサーチは

(1)単に「技術アプローチの集積」で理解できるものではない
(2)ただし、身につけるべき技術を疎かにすると質が高められない

という類のものなのだろう、という結論を得ました。

あらためて、素敵なイベントを企画していただき、ありがとうございました!!貴重な気づきを得られたとともに、英語の本を読み通すことができたことも、少し自信に繋がりました(笑)!

みなさんもぜひ、機会があればご参加することをおすすめします!

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