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「可能性を探索する」ためのブレインストーミング 【デザインシンキング・コンサル⑩】

こんにちは。DONGURIでデザインシンキング・コンサルをやっています、矢口泰介(@yatomiccafe)です。

アイディアを生み出す手法として、「ブレインストーミング」はよく知られています。

例えば、「和気あいあいと行う」「アイディアを否定しない」というように、常識や思い込みのタガを外して、いかに面白いアイデアを出すか、というための手法、というイメージを持たれる方が多いと思います。

ただ、デザインシンキングにおけるブレインストーミングは、「アイディアを生む」とは少し異なる目的のためにも、行われると考えています。

DONGURIのブレインストーミング・ルール

DONGURIではブレインストーミングのルールとして、

(1) 思考に制限をかけない。自分にNOを言わない。
(2) 量を出す
(3) くだらないことでも、とにかく書き出す

ことが推奨されています。

これは、一見すると「面白いアイディア」を出すためのルールのように思えますが、実は「可能な限り思いつく選択肢を全て出す」ために必要なルールとして認識しています。

先日、とあるプロジェクトにおいて、プロダクトネーミングの検討を行いました。
プロダクトのコンセプトを提示した上で、ネーミングというお題に対して、考えられる限りの「発想」や「連想」の網羅を行いました。

見ていただくとわかるように、アイディアとも呼べない脈絡のない単語の羅列もあります。

このように、複数人でとにかく量を出すことで、お題に対して発生すると思われる発想・連想の可能性を網羅していきます。

アイディアの生成ではなく「可能性の探索」

「アイディアを出す」ことを目的としたブレインストーミングが「アイディアの生成」を目的としているとすると、デザインシンキングにおいて行われるブレインストーミングは「可能性の探索」を目的とする場合が多いです。

「可能性の探索」を目的としたブレインストーミングで求められるのは、まず、できる限り可能性を網羅することです。可能性をできるだけ広げることで、探求すべき「筋の良い選択肢」を絞り込むことができるようになるからです。

前回の記事では、デザインシンキングはまるでAIのように、論理的な枠組みで進む、ということを書きましたが、こういった「可能性の発散➝選択肢の収束」のプロセスも非常に近似しているように感じます。

アイディアの生成は行わない場合も

実は、この形のブレインストーミングにおいてやっていることは「可能性の探索」だけで、「アイデアの生成」は行なわない、ということもままあります。

では、アイディアの生成ではどうするのか、というと、ケース・バイ・ケースで、絞り込んだ選択肢をもとに、アイディアを生むための別の手法に移行するか、選択肢の絞り込みだけ行い、アイデアの生成は個人に渡してしまう、などがあります。

このように、デザインシンキングの「アイディエーション」のプロセスは、必ずしも全てブレインストーミングで完結させなくてもよく、ずば抜けたアイディア、面白いアイディア、今までになかったアイディア・・・等々を出したい場合には、ブレインストーミング以外の手法・仕掛けを用意することもよくあります。

※前回も述べたように、「デザイン思考を超えるデザイン思考」が提示している視点はまさにそのポイントにあると考えられます。

大事なのはプロセスの「運動」が進むこと

デザインシンキングのプロセスにおいては、そもそも単一のステップに大きく比重が置かれることはありません
そういう意味で、「アイディエーション」というステップがあったとしても、そこで卓越したアイデアを出すことは求められていない感じがあります。

デザインシンキングは、プロセスの思考「運動」の性格を持っているため、ブレインストーミングにおいても「次のプロセスに進むため」のアウトプットが求められるという側面があります。

「アイディエーション」はあくまで全体のプロセスの一部に過ぎず、デザインシンキングの運動の中でアイディアの質を高めるためには、

・何度もステップを繰り返す
・前後のプロセスのアウトプットの質を高める

という「運動性」に則する必要があります。

目的を事前に統一しておくのが重要

このように、ブレインストーミングと一概に言っても、実は目的が複数あります。

なので、「ブレインストーミングやろうぜ!」というときには、それが「生成型」なのか「可能性の探索」なのか、あらかじめ目的の認識、望まれるアウトプットを統一しておくのが良いと思われます。

場の目的が統一されないと、出されるアウトプットの内容や水準が食い違ってしまい、建設的な対話が難しくなります。

また、もう一つの難しいポイントとして、ブレインストーミングにおける「合意形成」のポイントをどこに置くのか、という点があると思うのですが・・・機会があれば、また書こうと思います!

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