図1

「デジタルとモノづくりとXaaS」から

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三点に注目したい 
 1.デジタルの本質は、のっぺらぼうに表情を与えること
 2.顧客効用最大化にむけて、プロダウトとサービスが整備される
 3.プロダクトはインターフェース・イネーブラー、XaaSを考慮すべき

関連代表記事 IT Leaders 2018年12月6日(木)
https://it.impressbm.co.jp/articles/-/17122
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A モノづくり企業のデジタル化は、日本の産業を支える意味でも重要であるし、当然、多くのモノづくりに関わる人々の人生という意味でも重要である。


B デジタル×モノづくりは、GEやシーメンス、或いはファナックなどのプラットフォーム戦略が伸び行く中で、まだまた「未対応」な企業がほとんどであろう。正直ベースでいえば、「で、どうすればいいの?」という企業が多数ではないだろうか。話していると、そう感じる。


A 「デジタル×モノづくり」には大きく2つの面があるが、モノへの対峙の仕方が旧来のままであるケースが非常に多い。AI、IoT、プラットフォーム…と言っても、モノへの対峙の仕方、換言すれば顧客に対する姿勢が従来のままであれば、本質的な変化は望めず、デジタルで生産性が改善したという程度に留まることになる。
 
  1. 生産効率を改善する
  2. XaaS的なサービスを提供する


B デジタル化の本質は、「顧客起点」思考にある。プロダクトを複数のチャネルを通じて、無数の「のっぺらぼう(顧客)」に届けるのが従来のFLOWである。ここで起きているのはプロダクトが移動し、顧客の手に届くという流れであって、「どの顧客が」プロダクトを手にしたかは無視されてきた。デジタル化するというのは、「顧客の個別の顔を認識し表情を与える」ことであって、大きなセグメントとして把握することではない。


A 顧客の顔が明確だからこそ、彼ら/彼女らに届けるべきプロダクトを把握できる。重要なことは、プロダクトというのはインターフェース・イネーブラーでしかない、ということである。プロダクトは顧客が抱える未決課題を解消するためのツール(手段)であって、このプロダクトを通じて、顧客の効用を最大化していく。よって、プロダクトは顧客効用を最大化する目的に対して、最適化されるべき。


B 思考の順番が、技術やセグメントから出発するのではなく、顧客の未決課題からにかわる。重要なことは、顧客効用最大化というのはパルスでなく、流れる時間に対して実現されるべきことであるということ。よって、顧客が抱える課題の時間変化を考え、どのようなポイントから解消し、どのようなイベントを繰り出していけば、効用が最大化するのかを考える必要がある。これは、顧客の顔(意見)というファクトベースの思考だけでなく、「これは嬉しい!」「素敵だ!」「快適だよ!」といった人間的感性に基づいた思考を存分に合わせこみ、デザインされる。


A 景色が変わる。時間軸に渡り顧客効用を最大化するということは、プロダクトを顧客に渡して終了ではなくなる。当然だが、収益原理も大きく変わり、P/Lもその姿を大きく変える。


B 同じことは、顧客効用を最大化させるための活動にも言える。Customer Successを実現するために顧客に真摯に向き合った活動が必用だが、それらは経費ではない。LTV(顧客の生涯価値)を考えれば、原価として扱う方が綺麗に感じてくる。


A 顧客の快適性を起点にすれば、マーケティング機能はプロダクトを提供する「前」だけでなく、「後」にも投入し、「後」をより重点的にケアする必要がある。プロダクトを引き受ける顧客を増やすだけでなく、顧客といつまでも良質な関係性を構築する必要がある。


B こう考えると、マーケティング費用は、新しく付き合い始める顧客を増やし、まだ相思相愛になりきっていない顧客との関係性を改善し、確実に生成するcARR(confined Annual Recurring Revenue)を増やす(=未来のcARRを増やす)ための費用といえる。マーケティングはメーカーでいう設備投資的なものとして機能するので、その費用を、顧客の妥当な存続期間にわたり償却するように扱っても、何ら不自然でないと感じてくる。


A プロダクトを引き受けた顧客と関係性を構築し、顧客が顧客として居続けてくれることが重要であるのであれば、自分たちのもとから離れていく顧客を誠実に送り出すとともに、どのような理由と頻度で離れていくのかを、必ずモニターしたくなる。


B そうであれば、よく言うchurn (チャーン)が重要。関係構築により確実に生成する年間の経常利益であるcARRを活かし、プロダクトを通じたコミュニティを拡大・深耕するためのバッファーを厚くするためにも、チャーン(顧客が顧客でなくなる数、規模、割合など)に真剣に目を向け、それを踏まえ、顧客の思いに対する新しい気づきを得て、効用最大化へと真摯に向き合う必要がある。


A 或いは、R&D費用を考えると、今後も顧客と相思相愛で居続けられるかどうかを左右する「新しい関係性の構築」に対して、製品改良(サービスの継続投入)として貢献している意味合いが強い。


B その考えに基づくと、普通のP/Lではなくて、未来確定収益であるARRから始めて、チャーン、そして費用項目としての原価・R&D費・一般管理費を除いた状態を、経常利益と捉えるのも、綺麗である。


A ここまでくれば言うまでもないが、未来確定収益であるcARRを中心に考えることができるようになるというのは、換言すれば、「収益が極端に安定化する」ということである。


B 安定して確実に生成する収益cARRがあるからこそ、新たな顧客を呼び、customer successを実現して相思相愛になるための投資も、適切に正常な精神構造で実施できる。


A 従来のモノづくりは、例えば、その外観を軽視する傾向にあった。或いは、パッケージや梱包形態もそうであろう。しかし、顧客効用最大化という観点に立てば、使っていて「違和感がない」デザインであったり、持っていて「自信になる」外観であったり、或いは、開封したときに「テンションが上がる」状態などを、1つ1つ設計していく必要がある。即ち、Customer Journeyに則り顧客に快感を与え続けることをデザインし、それに最適なプロダクト(インターフェース)を設計していく。


B このようにして導かれたプロダクトをその通りに作り上げるのが、モノづくりの実力の見せ所である。従来技術で無理であれば、開発し実現するだけである。自社技術で無理であれば、他社をまきこむ必要がある。投資で工場を建てる時間がないのであれば、アウトソースを考え、例えば主要装置をそこに自己投資でいれこむという手もある。


A モノづくり企業と話していると、「モノを自分たちの手で作ること」に拘る傾向があるが、これは違う。自己中極まりない。要求された設計に対して、必要な機能部品を見極めることができる力であったり、プロダクトごとにQC/QAを的確に設定できる力であったり、未達の技術を一気に開発しきる力であったり、高い部品調達力であったり、OEM先を適切にマネジメントする力であったり・・・・etc. このようなモノづくり企業が培ってきた力を、顧客効用を最大化するように、適宜使い分けていく必要がある。自分たちで作り上げることにはほとんど意味はない。


B 自身でモノを作り切ると考えるのは、自己中であり、顧客思考ではない。自社の技術を利用したい・・・これも違う。デジタル×モノづくりといった時に、製造をデジタル化させるとか、プロダクトをデジタル武装させる…と考えるのは、自社中心の視点であり、本質的転換にはならない。


A やるべきは、本当に顧客に寄り添う思考ができる企業へと変身することである。Customer Journeyに沿って、Customer Valueを最大化させる。それを実現するためには、顧客を個別認識し表情を与える。そして、顧客の個性と長きに渡り付き合い続ける必要がある。


B だからこそ、デジタル転身が必須である。そして、プロダクト(インターフェース)やビジネスモデルは、顧客効用を時間にわたり最大化できるように、デザインされる。顧客の快感が最大化するこのようなプロダクトを、モノづくり企業は、意地でも現実化させる。当然、このようなプロダクトやビジネスモデルを生み出し、運用できるような、組織整備も必要になる。


B 単にIoTを入れました、効率化しました、ログをとりました。これでは、話にならない。よくIoTにおいて、取得した情報をどうやって買ってもらうか?というが、あれは間違っている。逆だ。

/2018.12.13 JK

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