図1

「ダイナミックプライシングとAI」から

----------
三点に注目したい 
 1.長期的不利益
 2.ダイナミックプライシング×守るべき事項
 3.バリアブルプライシング×ポイントキャスティング

関連代表記事 日本経済新聞 2018/11/30 朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO38359340Z21C18A1TJ1000/
----------

A ダイナミックプライシングは重要な技術であり、その裾野は非常に大きい。特に「ダイナミックプライシング×ポイントキャスティング」にまで踏み込むことで、その効力は一層増す。


B 「高くても納得のいく価格」といったように、価格の「上側」を意識する記事も多いが、本質的には「固定費に対する限界利益の貢献度」を最大化する仕組である。


A 例えば、風情ある旅館を利用した際、「空き部屋が多い」と実感することは多々ある。それはそれで客側からしてみれば贅沢であるが、経営として考えれば、部屋が遊んでいる状態であり、非生産極まりない状況である。伝統的な旅行サイトなどの契約方式をいれこむと、価格をフレキシブルに変動させることは困難となるが、ゼロベースで眺めれば、バリアブルプライシング化しても何ら問題はないし、むしろ「得」である。


B Airbnbの秀逸な点の1つはこのバリアブルプライシング(スマートプライシング)の部分にある。誰も利用せずに固定費が遊ぶのであれば、値を下げて利用者を募る方が良い。ただし重要なことは、「低価格の印象」が根付くというデメリットへの対処である。


A ダイナミックプライシングにおいては「需要と供給のマッチング(バランス取り)」を中央に置く。そして用途により、それこそフレキシブルに、プライシング変更の仕方をデザインすることが重要である。例えば、一泊25,000円で回転率55%の宿があり、しっかりと利益もだし、ブランディングもできているとする。この時に、単に需給バランスをとろうとして価格を下げ公開していくと、回転率残余分の45%が割安な印象を植え付けることとなり、通常の値段での利用者が減っていく可能性がある。表現を変えると、短期利益最大化と長期的・継続的な利益最大化は大きく異なり、安直にバリアブルプライシングを発動すると、長期的不利益を被る可能性がある。


B 用途により最適化するのは本当に重要。宿の例であれば、25,000円/泊の通常価格から下げるときに、ポイントキャスティングとかナローキャスティングと合わせるといい。即ち、過去に3度以上利用していただい方限定で情報を流すとか、所定サイトの有料会員向けの特別情報として設定するとか。或いは、20時になっても空いているのであれば、周囲10kmにいる旅行者向けに情報を発信してもいい。価格が度々下がるという印象が確立することを防止したり、不適切な客層が増えブランド毀損するリスクを下げる…など、事業によって、守るべきコントロールすべき重要因子が存在する。


A 価格をフレキシブルに変えるのであれば、達成したい目的をまず明確にしないといけない。単に変動価格にするだけでは、例えばブランド毀損を招くかもしれない。守りたい部分とダイナミックプライシング化で達成したい事項を考え、全体像をデザインし、更に別の仕組みを付加していくのが理想。これにより、長期的で継続的な利益最大化への道が拓ける。


B スポーツのチケット、飛行機、電車、タクシー、ホテルやアミューズメントパーク、飲食店…バリアブル・ダイナミックプライシングを利用できる分野は非常に多い。これら以外にも、EVで到来するシェアリングカーの世界、スマホセントリックな世界、超電動化社会においては、ダイナミックプライシングの考え方がきわめて重要になる。即ち、配車、宅配、シェアリング、受給電、分散協調型エネルギー管理、バーチャルパワープラント…などの側面で重要になる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?