図1

「日欧EPAとワイン問題」から

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三点に注目したい 
 1.ワイン保護を訴えるのは、お門違い。
 2.ワインの流通フロー全体を俯瞰し、儲かっている人を見極める
 3.本当に危機感を覚えるのであれば、BUYMAをマーク。

関連代表記事 日本食糧新聞 2018.12.17 11809号 01面
https://news.nissyoku.co.jp/news/detail/?id=OKA20181213041601177&cc=01&ic=070
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A 2019年2月、日欧EPA(経済連携協定)が発行される。日欧間の貿易を活性化し双方のGDPを押し上げるという目的の他に、アメリカや中国の進める保護主義政策の対抗馬という位置づけでもある。


B 自国優位になるように各種貿易障壁が張り巡らされる冷めた貿易時代において、日本とEUとの自由貿易EPAというPRは、自由貿易を先導するというメッセージ効果も存分にある。


A このような大きなイベントに対して、「ワインがピンチ」などという小さい話に終始するのはどうなのだろうか。決してワインを軽視するわけではないが、モノの見方が稚拙すぎる。


B 大きく2017年のFOB/CIF実績を見ると*1、次のようになる。

 ■EUの輸出
 ・EU域内が64%で、EU域外が36%。
 ・EU域外への輸出のうち、日本は3.2%。北米22.1%、中国10.5%、スイス8%、ロシア4.6%であり、アジア全体で28.7%。

 ■EUの輸入
 ・EU域内が63.8%で、EU域外が36.2%。
 ・EU域外からの輸入のうち、日本は3.7%。北米15.5%、中国20.2%、スイス5.9%、ロシア7.8%であり、アジア全体で39.3%。


A もう少し細分化して日本側の2017年輸入状況を見ると*2、ワインのインパクトは非常に小さいとわかる。

 1.医薬類: 14,475憶円
 2.自動車: 10,705憶円
 3.有機化合物: 4,328憶円
 4.科学光学機器: 3,853憶円
 5.原動機: 3,237憶円
 6.バッグ類: 2,015憶円
 7.肉類: 2,007憶円


B ワイン自体はインパクトが弱いが、「当事者」の立場に立てば、仮に欧州の優良ワインが安価に攻めてくるとなればひとたまりもないだろう。このような恐怖感が迫ってきているのかもしれないが、これは、「幻想」である


A ワイン関税を見ると、次の選択肢のうち「安い方」から選択される。
  
  1.リッターあたり125円
  2.15%


B 言い換えると、最大の関税額が「リッターあたり125円」ということ。この微々たる額に注目してほしい。750mlで3,000円のワインであれば、ざっくり3%。15,000円のワインであれば、ざっくり0.6%。この程度のインパクトしかない部分に関税撤廃されても、「安価良品がなだれ込む」自体にはならない。


A ワインのような物品が海の向こうから移動して、日本に到着し、消費者の口にわたる。この流れを考えた時に、「誰が儲かっているか」が本質的部分である。その儲かっている張本人が「関税」であれば、関税撤廃はインパクトが大きいが、そうでないのが現状である。


B ワインの場合、輸入代理店などが、その価格を激しく釣り上げている。現地でダイレクトに購入したワインが、通販を介すと5倍程度になったり、或いは、ある料理屋でいただくと20倍になっていたりする。どこで価格が動いているかを認識する必要がある。


A 繰り返しになるが、日欧EPAという議題で、ワイン関連当事者が「海の向こうから安価良品が…」と叫ぶのはお門違いである。本当に身構えるのであれば、それこそBUYMAのような仕組みに対してアンテナ感度をあげるべきだ。BUYMAの仕組みをしっかりと考えれば、「儲かっている人」を「すっ飛ばしている」状況がよくみえる。何を意味するか?安価良品がなだれ込んでくる。


*1 JETRO 世界貿易投資報告 欧州 https://www.jetro.go.jp/world/europe/eu/gtir.html
*2 財務省貿易統計 輸入>EU http://www.customs.go.jp/toukei/suii/html/time_latest.htm

 

/2018.12.18 JK

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