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「イギリス、デジタル課税」から

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三点に注目したい。
 1.国家存続の危機
 2.国境の概念
 3.対処療法

関連代表記事 TheSankeiNEWS 2018.11.6
https://www.sankei.com/world/news/181030/wor1810300022-n1.html
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A 国家存続、という言葉が頭を過る。国から国民への各種サービスは、国民を豊かにするためにあると言われることがあるが、これは誤解。国家の継続的繁栄という方向性に向けた策でしかない。GAFAのようなグローバルネット企業はその売上規模だけでなく、従来の国境を越えて世界の人々を連結させ、それを動かす力を持ってる。これは従来の国境国家に対して存続脅威であり、「今のルール」が通用するうちに、GAFAに太い鎖を巻き付ける必要がでてくる。

 

B 人間が他の動物とは異なり、人間が人間として他の動物を圧倒し発展した1つの根源的理由は、人間という枠においてフレキシブルにネットワークを形成可能だったからである。従来はこれに物理距離的制約が加わっていたが、GAFAは距離を0にすることを実現し、従来の物理的ロケーションで定まる国境を跨いだ人間的ネットワークの形成を容易にしてしまった。しかも、GAFAにより連結可能になった個人の情報をプラットフォーマとして掌握しており、従来よりもより合理的で恣意的に強烈なネットワークを形成し、グローバルな民を扇動することが可能になってきている。ここにアントフィナンシャルの芝麻信用のような動向や、信用定義を塗り替えるFINTECHの流れが加わる。よって、今後更に指数的に加速する。従来の国家像に対してテクノロジーという革命がおこり、国家を滅ぼそうとしている構図とよむこともできる。


A デジタル税について振り返ると、確かに不公平が存在している。一言でいえば、課税逃れである。課税逃れを実現できる仕組みは、国際課税の仕組みとして、PE(Permanent Establishment)*1という存在を課税する/しないの判断軸に加えてるためである。即ち、工場であったり営業支店のような恒久的な施設があるかどうか、が課税される/逃れられるの重要な境界要素になってきている。


B 言葉には当然定義が存在する。税法上PEとしては、事業を行う一定の場所として定義される。商品保管・商品展示・商品引渡…のみを行う場所は、PEに該当しない、よって、合法的な課税逃れが成立する。例えば、ある国Aにネット企業Xの支店等はないが、倉庫のみ存在するケース。国Aで消費者に商品を渡すも、PEがないという理由で、合法的に法人税を納めない。その代わり、代金の受渡を低税率の国Bに設けた営業拠点との間でネットを介し行い、利益を国Bで計上する。


A このような状況に対して、国際的にBEPSプロジェクト( Base Erosion and Profit Shifting Project)*2 を行ってきているが、グローバルな足並みは揃っていない。このような中ででイギリスがデジタル課税にむけて進んだ(暴走した、見切り発車した)という状況である。内容はGAFAのようなIT大手をターゲットに、2020年の4月から、イギリス内のサービスで得た売上高に対し税率2%を課すという方向性。


B 独禁法関連でのGAFAへの攻撃であったり、今回のデジタル課税は、建前と本音の「本音」が大きく膨らんで見えてしまっている状況に感じて仕方がない。イギリスのデジタル課税は売上に対して2%を課すという内容だが、これは、GAFAなどに対する国民反発感情を宥めるといった内容と、税収を確保するという内容が含まれている。いずれにしても対処療法でしかない。

 

A 売上に課税するのか、VAT(付加価値税)で対応するのかという議論もある。下手に課税すれば、税負担は川下に次々と流れ、消費者がそれを受け止めることになる。本質は「何をもって課税するか?」という仕組側であり、例えば、PEの定義部分に本格的にメス入れするのが本質的対策である。有形/無形のPEを再定義する活動であったり、新時代のグローバル税制(国境を跨いだ税制)について既存延長ではなく、ゼロベースで仕組を作り上げる必要がある。柔軟にネットワークを形成し、柔軟に状況に群として対応できるのが人間の特質である。


B 対処療法を次々と繰り返す状況がグローバルに続くのであれば、GAFAといった企業が「逃れる術」も常に存在することになる。彼らの歴史的飛躍を国家存続危機と受け止めて本質的に対処していくのか、国家をアップグレードするための好機と捉え、GAFAの活躍を国家力に転換する仕組みを作り上げるのか。旧来の国境概念にとらわれた状態で、いつまで「もつ」のだろう。


*1 JETRO Permanent Establishment https://www.jetro.go.jp/world/qa/C-170203.html 
*2 国税庁 BEPSプロジェクト https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/beps/index.htm
*2 OECD OECD presents outputs of OECD/G20 BEPS Project for discussion at G20 Finance Ministers meeting http://www.oecd.org/tax/oecd-presents-outputs-of-oecd-g20-beps-project-for-discussion-at-g20-finance-ministers-meeting.htm

 

 

 

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