図1

「昭文社の不調」から

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三点に注目したい 
 1.「自社売却(身売り)」という戦略
 2.デジタル化 ≠ デジタル武装
 3.マップル×SUICA

関連代表記事 IT Media NEWS 2018年12月14日 10時37分
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1812/14/news077.html
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A 「まっぷる」などを扱う昭文社が19年3月期の業績予想を下方修正し、同時に、希望退職者を募るに至った。時流を捉えられずに、明後日の方向の戦略を打ち出し、崩壊に向かった企業の一員になろうとしている。


B 下方修正の状況と、昭文社の考える原因は次の通り*1。 
 
 ■下方修正
 ・売上: 9.91B円⇒ 9.34B円
 ・営業利益: 90M円⇒ -350M円 (赤転)
 ・経常利益: 150M円⇒ -224M円 (赤転)
 ■理由
  1.出版物の売上減少
  2.無料ナビアプリがPND(ナビゲーション端末)の販売を減少させた
  3.広告などの売上の見込みが立たなくなった…等

 

A 旧態世界に居座り続けている様子が、よくわかる。未だに出版物依存しているという状況。無料ナビアプリが他収益源に許容できない負の影響を与えるという構造。ゼンリンと比較して、カーナビ用データや自動運転車向けのデータ販売の違いを指摘することもできるが、本質的ではない。


B スマホセントリックな世界はますます伸びる。カーナビがスマホに浸食されているのも事実であり、この傾向はますます加速する。スマホを通じたアプリ(サービス)に対して、消費者が参加型で地図情報を更新できるため、地図としての充実度は高まり、消費者の未決課題の抽出効率・数も飛躍的に増大する。そんな世界である。


A 小売業がネット企業に浸食されているのも事実である。ボリュームでみればリアル店舗はまだまだ超の付く重要領域であるが、それは「今までのままでいい」ということを意味しない。ネット系企業がネットサービスを開始し、その後、リアル店舗に進出している理由な何か?。この本質を抑えねば、リアル店舗としての大きな飛躍は望めない。


B テクノロジーというのは、時代を非線形に変化させるトリガーとなる。特にデジタルの破壊力は半端ではない。「PCがタブレットやスマホに急激に進化した」ことは、誰でも感じている。これを裏返すと、「ITシステムであっても、すぐに陳腐化する」という表現になる。


A ERP(Enterprise Resources Planning )やCRM(Customer Relationship Management)を導入し「IT化」した企業が、現在は足枷と化したこれらのシステムに束縛されているという状況でもある。


B 急速に進化するテクノロジーにいかに追従するのか。追従できる組織系にしておくことが、重要である。


A 昭文社に目を向ければ、自社中心で考えている以上、打開策は見えてこない。地図情報をコア技術・ケイパビリティ要素として捉えるのであれば、地図情報に対して、顧客が望む状況を理解できなければ意味がない。裏を返すと、顧客とのリアルタイム接点を採れるように変貌し、その上で、リアルデバイス・書物などを提供するのであれば、上手くいく可能性は高まる。


B 私が昭文社を経営しているのであれば、ITプラットフォーマへの売却を検討する。昭文社の規模や人財から見て、本質的にデジタルシフトするのは困難である。デジタルシフトというのはデジタル投資だけでなく、HR戦略、HRMシステム、組織構造、或いは組織文化・風習も、デジタルを駆使できるように変化することを意味する。


A 地図競合のゼンリンは、知・時空間情報の創造により人びとの生活に貢献するという使命感のもと、地図のデジタル化を進め、例えばGoogleMapとも連携している。また自動運転社会を明確に描き、ダイナミックな3D地図に積極的にコミットし、複数の企業と連携もしている。


B 昭文社が電子地図に乗り出したとしても、時すでに遅し。日本でいうゼンリンと差別化できて効用価値の大きな地図の在り方を見出すのは、昭文社としては難しいだろう。よって、地図電子化戦略はありそうであり得ない戦略となる。


A 地図の経験値というのは非常に大きく、例えば、SNSやレジャー施設・飲食店などとの連携で新しい価値を創出しやすい。しかしながら、昭文社のデメリットは、自前化できないという事である。一度システムを作って終わりとはならない。絶え間ない改変を、ユーザ視点で継続させることで、カスタマーサクセスを導く必要がある。よって、地図のノウハウは利用できるが、自前では無駄にあ終わる可能性が高い。


B 「身売り」というとネガティブイメージが付きまとうが、そんなことはない。現状と未来への軸を見たときに、無駄に突き進み崩壊するのは愚策である。現時点で他社への売却を考え、その中で、ゼンリンの歴史を武器に新しい価値を創出し社会を動かすのは、立派な戦略である。心情的に「売却」「身売り」…とネガティブ色がでるかもしれないが、そこは社長を筆頭に役員層でで社員を鼓舞しケアすべきだ。


A ゼンリンのもつノウハウを考えれば、ダイナミックに顧客の動向を獲得できている企業とのタッグが面白い。例えば、SUICA(JR東日本)などどうだろう。モバイルスイカを本格的にXaaSよりにシフトさせて、ゼンリンのマップノウハウと相乗させていく。或いは、旅行関連とのタッグも面白い。物理的に人が動き、それをダイナミックに補足できるITプラットフォーマに対して、自社の価値をピッチするのは有用である。


*1 昭文社 IRニュース http://www.mapple.co.jp/corporate/ir/news/

/2018.12.18 JK

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