年収1000万円の貧乏人 年収300万円のお金持ち

──特集「年収1000万円の不幸」インタビュー特別編

伊藤邦生(ゴールドスワンキャピタル社長)

『週刊ダイヤモンド』5月3・10日合併号では、「年収1000万円の不幸」という特集を組んだ。ここでは特集関連のスペシャルコンテンツとして、『年収1000万円の貧乏人 年収300万円のお金持ち』の著者、伊藤邦生氏へのインタビューを掲載する。国内大手証券会社を経て資産コンサルティング会社を起業し多くの富裕層に接する伊藤氏に年収1000万円層でもお金持ちではない理由を聞いた。


年収は上がらないのに
“ちょっといいもの”を買ってしまう

――本を書いたきっかけについて教えてください。

私は日本の大手証券会社で長く働いてきました。その時に感じたのは「年収とその人の経済的豊かさは関係がない」ということです。

ロジャー・ハミルトンという人の著作『億万長者 富の法則』のなかに「今日から働かなくなったら、どれくらい生活ができるか。それが長いほど豊かだ」という趣旨の一節があります。

例えば、1億円の貯金があっても、1年に1億円使ってしまう人と、1000万円しか持っていなくても、1年に200万円しか使わない人なら、後者のほうが豊かだということになるわけです。

当時、私が勤めていた証券会社の先輩に、1000万円以上稼いでいても、消費者金融からお金を借りている人がいました。給料日の昼休みに、私の目の前で携帯電話で返済の話をしていました。

また、証券業界には伝説的なディーラーがいましたが、私が知る方は年収十億円も稼いでいるけれども、借金で首が回らないとも噂されていました。

――なるほど。それではいくら稼いでも足りませんね。

結局、お金っていくらでも使い道が用意されているんですよね。今、クルーザーにハマっている人がそれに飽きたとしても、次はプライベートジェットという感じで。でも、それをやっていたら、資産を際限なく増やし続けなければならない。

一般のサラリーマンも同じで、もはや、年収はかつてのように右肩上がりにはならないはずなのに、その発想から抜け出せずに生活している。

年収700~1500万円は、世間では勝ち組と認識されていますが、実際はそこまで豊かな生活はできないはずです。まず、税金に200万円とられて、さらにお小遣いを抜くと、ほとんど残らない。

それなのに、子どもを私立の学校に入れたり、 買物の際は、同じようなものがあれば“高いもの”、“ちょっといいもの”を選んでしまうわけです。

あなたは自動車会社や
居酒屋のために働いていないか

本来なら、以前より出費を低くして生活することは簡単なはずなのです。ユニクロのようなファッションも登場していますし、スーツだって、以前のよ うにサラリーマンなら百貨店で購入してというわけではなくても、格安スーツの店も増えた。外食だって、安くておいしいものがあふれている。

大手証券会社にいた時は、「毎週飲みに行って、ボーナスを頭金にして外車を買う」というのが、常識になっていました。

そんなとき、私は『バビロンの大富豪 「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか』という本に出会いました。

そこには「あなたは誰のために稼いでいるのか」ということが書いてあり、結局、自分の手元に資産が残らないということは、自動車会社や居酒屋や洋服屋のために働いているんだと気づかされました。それが私が生活を変えたきっかけです。

――現在、高い年収をもらっているサラリーマンも変わることができるでしょうか。

もちろん、きっかけは本だけではなくて、例えば、しっかりした奥さんと結婚したとか、子どもができたとかいうタイミングでもいいでしょう。ただ し、すでに40~50代になっていて、子どもが私立の学校に通っていてなど、生活基盤が固まっている人は一大決心をする必要がある。

出費で大きいのは、自動車、家、学費で、その裏には見栄がある。やりくりでどうにかなる部分ではないので、気持ちを大きく切り替えないといけない。「自分は見栄で破綻してもいいのか」くらいに深刻に考えなければいけませんね。

いとう・くにお/1976年生まれ。京都大学大学院卒業後、国内大手証券会社に11年勤務。日本国際、ジャンク債、外債、債権デリバティブなどのトレーディング業務を経験し、その後、不動産の私募ファンドの組成なども担当。2011年資産コンサルティング会社ゴールドスワンキャピタル設立。

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