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遠雷

まず、井上堯之さんのテーマミュージックが非常に良い。これはこれで音源が欲しくなった。音楽業界から引退されたのがとても残念だ。



 映画の内容は、宇都宮のトマト農家の青年の日常を描いていて、原作者の立松和平さんが実際に職場に通うバスの中から見た風景を小説化したらしく、トマト農園の青年も実在したそうです。

 その小さなトマト農園の隣が大きな団地群で、そのコントラストが面白いです。実際に農地買収の話を持ちかけられたりして、その要求を主人公が一蹴してます。近代化の渦に巻き込まれながらも、けなげに農園を営んでいる姿をリアルに描いてますね。



 そして、若き、石田えりさんの屈託の無い演技が良いです。ハウスでの絡みもエロさ爆発で(笑)まあ、観ててチクチクするんだけどさ(汗)「なんでもない原風景にエロい描写」ってエロさが増すので僕は好きですね。



 あとは、ジョニー大倉さんの演技も素晴らしく、演技者として開花した理由がわかりますね。とにかくラスト近くの「雷鳴轟く大雨のシーン」の演技がリアルです。

 そして、ラストの「青い鳥」を歌う感動的な場面へとナイスな橋渡しになってます。

 この作品は1981年の上映ですが、時代が時代ゆえに、全編「百姓」という言葉が使われています。

 今ではほとんど使われることが無いと思いますが、それをカットしたらこの映画が成り立たないので、カットはされてません。しかし、途中永島さんとジョニーが田んぼで田植えをしているシーンで、スナックの女(カエデ)が「ちゃんと勉強しないと、あのお兄ちゃんみたいになっちゃうよ」と自分の子供に諭しているシーンがあるんです。結構問題のあるセリフですが、こういうものをちゃんとカットせずに放送することの方が「大きな意義」があると思いますね。その上で議論したら?っていう感じです。

 ただ、女装した父親に向かって永島さんが「親父!!頭●×△○」と、一部セリフが消されてました。多分「頭、狂ったのか?」というようなセリフだったんじゃないかな。そこだけ無音になり違和感があったけど。

 さまざまな人間模様を淡々と描いている作品、映像も暗くて、ストーリーもそんなに起伏は無いけれど、こういうトーンの日本映画って現代は確実に少なくなっているような気がします。ちょっと残念。




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