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Tir Na N'og - 木を想う

私のリアルネームの中には「樹」が棲んでいる。どのような経緯でこの名前になったのか、誰も未だに語ってはくれない。

だが、私の名前に「樹」が聳えていてくれたお陰で、人生の折り返しを目前にまるで長い眠りから覚めたように私は「樹」を想い、「樹」を労わりそして彼等と会話を試みながら生きる、そんな人生の在り方に気づくことが出来た。

生まれてからずっと、青空がどんな色なのか私は知らなかった。どんなに晴れた日も空は青ではなくて緑色で、曇り空はいつも黄色かった。それを私は、東京の空気が汚れているせいだと信じ込んでいた。

色々な事情が折り重なり幼い私の心はズタズタだったけど、生まれつき私の心臓にはほんの短い毛が生えていたらしく、それが心の闇を少しだけ和らげてくれたのだと思う。
だから完全な緑色の空ではなく、ほんの少しだけ青を覗かせた緑色の空がいつも私の頭上に拡がっていたのかもしれない。


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