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雨の彼方から

温かな体を乗り捨てた後の人は、どこへ向かって行くのだろう‥。

幾千もの記憶や思い出を両の透明な手の中に抱き寄せ、二度と誰にも聴かれることのない歌をうたいながら人は新しい居場所を求めて少しの間、この世とあの世の狭間を漂い続ける。


現世の弟と、今は音信さえ途絶えたまま現在に至る。
親族の愛に恵まれない理由の一つ、それは直前の過去世で私と当時の(過去世の)弟が深く愛し合ったからだと、或る時知った。
それはまるでありふれた日常の一コマのように突如夢に現れた記憶だった。

そして私はその弟と、現世のとある場所で文字だけの再会を果たしている。
直前の私はイタリアはトスカーナで生まれ育ったが、弟は私が先立った後数年を生きて病死している。何かの感染症だと、雨の向こう側から届いた声が告げた。

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