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【連載小説】新説 桃太郎物語〜第十四章  (毎週月曜日更新)

【第十四章 “桃太郎 対 青鬼”の巻】

桃太郎と青鬼は激しく戦いました。

青鬼はその指から放たれる“糸”を鞭の様にしならせて、自由自在に操ることにより、桃太郎に襲いかかります。その早さと切れ味は尋常ではなく、大きな岩も一刀両断するほどの鋭さでした。

しかし桃太郎も宮本武蔵との修行によってかなり腕を上げています。

「…ほう…。」

峠の村では青鬼の攻撃すら見えなかった桃太郎ですが、今はしっかりと攻撃をいなし続けています。そして、機を見計らって青鬼の間合いに入り切りつけました。

青鬼はその攻撃をかわし、桃太郎と一旦間合いを置くと、

「…。何があったかは知らぬが、前とは訳が違う様だな…。」

『…今までただ手を拱いていた訳じゃないぞっ!』

「それではもう少し本気を出させてもらおうかっ!!」

青鬼はそういうと、糸をさらに早く、激しくしならせて攻撃を仕掛けました。

桃太郎は四方八方から降り注ぐ激しい攻撃を必死で避け続けました。先ほどとは違い、全てを避け切ることはできませんでしたが、致命傷になるほどの傷は負いません。
その攻撃をかわし続けて、少しずつ慣れてきた桃太郎は、青鬼との間合いを徐々に詰めていきました。

そして青鬼の激しい攻撃の隙をついて、切りつけました。

「…っくっ…?!?」

青鬼は桃太郎の一撃をすんでの所で避けましたが、腕に少し傷を負いました。

『どうだっ!!』

勢い勇んで叫んだ桃太郎は叫びました。

「…なるほど…。私の体に傷をつけるとは…。……この世にお前の体が…何も残らないくらい粉々にしてくれるっ!?!?!!」

青鬼は怒りをあらわにしてそう言うと、先ほどとは比べ物にならないくらい早く、激しく糸をしならせて攻撃を仕掛けました。

『…っなっ?!?!?!』

流石の桃太郎も面食らうほどの攻撃に、刀で受けながら避けるのが精一杯です。さらに、あまりにも攻撃が激しすぎて間合いを詰めるどころか、どんどん青鬼との距離は離れていきます。

「どうした桃太郎っ!?!?!」

青鬼は怒りのままに攻撃を続けます。

『…っくっ…。…このままいつまでも受けているだけじゃ、いつかやられてしまう…。…でもあまりにも攻撃が激しすぎて…近づくことすらできない…。…考えろっ…、考えるんだっ…。』

青鬼の猛攻は激しさを増していきました。


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青鬼の攻撃は続いていました。桃太郎は致命傷は免れていましたが、徐々に傷つき体力をどんどん奪われています。しかし、桃太郎の目はまだ死んでいません。むしろ先ほどよりも正気に満ちてきています。

「そろそろ年貢の納め時だな…。そろそろ楽になったらどうだっ!?!?!」

そう言った青鬼に対して桃太郎は言いました。

『…お前の言う通り、そろそろ限界が近い…。最後の一太刀にかけるっ!!!』

今まで桃太郎は青鬼の攻撃を、その場で剣で受けながら避けていましたが、突然左右に激しく動きながら避け始めました。

「左右に動いても無駄だっ?!?!私の攻撃を避けることはできるが、肝心の間合いは全く詰められないぞっ!!近づけなければいつまでたっても私には勝てんっ?!?!」

『…青鬼…。………………っ勝負だっーーーーーーーーっ?!?!??!』

桃太郎はそう叫ぶと、今まで左右に避けていた動きをやめ、一気に青鬼目掛けて突進しました。

「…馬鹿めっ!!切り刻んでくれるわっ??!?!?」

青鬼はそう叫ぶと同時に、今まで左右に広げていた手を交差し、糸の刃を桃太郎目掛けて攻撃しました。

しかし、糸の先が交差するよりも桃太郎の踏み込みが早く、桃太郎は青鬼にどんどん近づいてきます。

「…っなっ…?!?」

『うぉぉーーーぉぉーーーー!?!?!』

…!?!?…っ………!!

……。

…桃太郎と青鬼が交差し…

お互い身動きすらとりません…。

…あたりは…

…うるさいほどの静寂が…

包んでいるのでした…。


…………………………………………………………………………………………………………………

…、

………、

………………。

決戦の場には、物音一つしない静寂が支配していました。

「…ごっ…がはっっ…っ!?!!」

先に動いた青鬼は、なんとその場に大の字に倒れてしまいました。

『…はぁー…っ。ふぅー…。』

そうです!

桃太郎の一太刀が青鬼の糸の刃よりも先に、青鬼の胸を貫いたのです!!

「…ばっ…馬鹿なっ…。…なぜ私の糸の刃があたらなかったのだ…。」

青鬼は切れ切れの息遣いで言いました。

『…青鬼の攻撃は本当に激しくて避けるのが精一杯だった…。このままじゃあいつまでたっても間合いに入れない…。間合いに入れなければ勝つことは不可能…。…ただ突っ込んだだけではやられるのが目み見えている…。そこで俺は考えたんだっ!横に激しく動いてお前の注意を左右に向けさせて、そこから一気に迫ることでいきなり直線の動きに変える…。その時のお前の一瞬の迷いが、本来当たるべき攻撃をすんでのところで回避してお前に一太刀を見舞えた理由だっ!!』

「…なっ…なるほど…。…気がつかないうちに…、“間”を崩されていたということか…。」

『…一か八かの賭けだったけどっ…。僕の勝ちだっ!!!』

「…桃太郎っ…。赤鬼様は…、我々とは…比べ物にならないほどの力を持っていらっしゃる…。…お前たちが…、束になってかかっても…敵わぬということを…夢夢忘れぬことだ…。」

青鬼はそのまま絶命しました。

『…やった…。あの青鬼に勝てたぞっ…。武蔵師匠…。僕やりましたっ!!!』

桃太郎は握り拳を握ると、大きな声で叫びました。

『よしっ!みんなも絶対大丈夫っ!!行くぞっ!!!』

そう言うと桃太郎は、もう一度気合を入れ直し、急ぎ洞穴の奥へとかけていきました。

こうして桃太郎と青鬼の因縁めいた壮絶な戦いは、今まさに幕を閉じたのでした。

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