川上愛子『皮膚常在菌ビューティ！』本文試し読み

夏の暑さも終わり、涼しい秋に突入。
乾燥する時期の前に「肌育はじめよっ♪」なんて女性は多いはず。

でも待ってください！
それって本当に必要なケアですか？？

今から正しい方法を学んで、お肌の善玉菌と共存しよう！

今回は『皮膚常在菌ビューティ！』（著：川上愛子、漫画：しおざき忍）の試し読みを公開します！

（書影はAmazonにリンクしています）

はじめに

私たちは皮膚常在菌を飼っている

　あなたは菌と聞いて、どんなイメージをお持ちですか？
　乳酸菌、酵母菌といったおいしそうなイメージの菌もありますが、どちらかというと、大腸菌、ボツリヌス菌、サルモネラ菌、結核菌などなど、聞いただけで「う゛っ」となりそうな、こわ～いイメージをお持ちではありませんか？
　でも、本書を手にしていただいたからには、ぜひ、そんな菌に対するイメージを一新してください！　なぜなら、菌は私たちが生きていくのに不可欠な大切な存在であり、彼らと仲良くしていくといいことがいっぱいあるからです。
　最近は「腸活」ブームで、「腸内細菌」にスポットが当たることが多くなりましたが、美しくありたい女性にさらに注目してほしいのが、本書の主役、「皮膚常在菌」。
　ここ数年、菌に関する研究が進み、目に見えない彼らが、私たちの美しさと健康に大きく貢献をしてくれていることがわかってきています。
　本書ではその代表的な３種類、善玉菌の「表皮ブドウ球菌（ひょうひぶどうきゅうきん）」、日和見菌（ひよりみきん）の「アクネ菌」、悪玉菌の「黄色ブドウ球菌（おうしょくぶどうきゅうきん）」の働きについて、主に紹介します。
　彼らの活動しだいで、私たちの肌がしっとりうるおったり、反対にニキビができたり、乾燥したりと、日々のお肌のコンディションに大きく影響しています。
　そしてそんな彼ら自身も、私たちのライフスタイルによって、元気になって数が増えたり、弱ってしまったりと、日々サバイバルを繰り返しています。
　そう。私たちと菌とは、持ちつ持たれつの深～い関係。それなのに、やれ除菌だ、清潔だと、菌を目の敵にしていませんか？　あるいは、知らず知らずのうちに彼らを弱らせてしまうようなことをしていませんか？
　菌は、この地球上でもっとも原始的な生き物。つまり私たちの超大先輩です。その先輩方と共生することで、私たち人間も生きていくことができます。どんなにすばらしい高級化粧品を使っても、彼らの存在を無視して好き勝手してしまったらその効果は半減どころか、逆効果になってしまうことさえあるのです。
　どうしたら菌たちと良い関係になって、菌の恩恵をたっぷり受けられるのか。本書では菌たちをキャラクターにした漫画を交え、解説していきたいと思います。
　ようこそ、めくるめく皮膚常在菌のセカイへ！

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characters　本書に登場する「菌」と「人」

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chapter１　皮膚常在菌のキホン

STORY１　皮膚常在菌って、なんだ？

私たちは菌とともに暮らしている。細菌、ウイルス、雑菌……どう違う？

　一般的に、人間にとって良い働きをしてくれる菌を「善玉菌」、害を及ぼす菌を「悪玉菌」、環境によって人体にとって良くも悪くもなる菌を「日和見菌」と呼んでいます。ただ、菌は推定１５０万種もいると言われ、私たちが知っている菌はまだまだほんのわずか。人の体をすみかとする「人体常在菌」だけを見ても数１００種類、数でいうと推定数１０兆～１００兆の菌が私たち一人ひとりの体に棲んでいると言われます。人の体全体を構成する細胞の数（推定６０兆個）よりもずっと多くの菌が、腸や皮膚、口のなか、生殖器などに棲んでいるのです。なかでも多くの菌が生息するのが腸で、重さにして１・３kgもの菌を、私たちは腸のなかに飼っています。
　つまり、人体は菌にとっての巨大マンション。酸素が好きな菌、嫌いな菌、好きな栄養などによって、それぞれの菌が私たちの体の好きな場所にコロニー（フローラといいます）を作って棲み分けているのです。
　そんな彼らは、生き物ですから、栄養を吸収して排泄物を排出しています。その活動が、私たち人間にとって、悪い菌やウイルスをやっつけてくれる「免疫機能」になったり、食べ物を人が吸収しやすい形に変えてくれたり、反対に、病原菌となる物質を作ったりと、さながら大自然のような、複雑でダイナミックな営みをしています。
　人の体は、口から肛門まで１本の管が通っている「ちくわ構造」。口から食べ物を取り入れると、一見、体内に取り込んだように見えますが、実は、胃や腸といった消化管は、人体の〝外側〟とも言えます。食べ物はその消化管を通過する間に細かく分解され、やっと体内に吸収することができます。細菌は、消化管や皮膚という〝人体の外側〟にたくさん棲み着いて、食べ物を分解するのを手伝ったり、悪い菌が侵入・増殖したりするのを防ぐ、優秀なボディガードの役割を果たしてくれているのです。
　ちなみに、同じ微生物でも、自分だけで繁殖できるのが細菌、他人の細胞に入り込んで寄生することで増殖するのがウイルス。カビの仲間を真菌といいます。

STORY２　皮膚に棲む、知っておくべき３大常在菌

「あの人肌きれい！」は「あの菌」が居心地良い肌のことだった

　表皮ブドウ球菌のヒョウくん。アクネ菌のあっくん。黄色ブドウ球菌のおうちゃん。私たちのお肌の調子を左右する、皮膚常在菌の代表選手です。
　ヒョウくんは、酸素がある環境が好き（好気性）な菌。皮膚の表面に棲み、私たちが分泌する皮脂や汗を分解して保湿成分グリセリン（※１）を作り出し、肌をツヤツヤにしたり、脂肪酸を分泌して肌を弱酸性に保ってくれています。これが「弱酸性バリア（皮脂膜）」となり、ウイルスや雑菌が人体に入り込むのを防ぐ、第一関門となるのです。
　アクネ菌のあっくんは、ニキビを作ることで有名な菌。酸素が嫌い（嫌気性）なので毛穴にひそみ、ふだんは大人しく、ヒョウくんと同じく皮脂をエサにしてグリセリンなどの天然保湿成分を作り出し、美肌に貢献してくれています。しかし、皮脂が過剰に分泌され毛穴が詰まると増殖してリパーゼという酵素を生み出し、この酵素が皮脂を遊離脂肪酸（※２）に分解することで炎症を引き起こしてニキビとなるのです。
　そしてもっとも怖いのが黄色ブドウ球菌のおうちゃん。おうちゃんは、肌の弱酸性バリアが弱まったときに勢力を伸ばしてくる悪玉菌。皮膚だけでなく体内に入り込んで毒素を撒き散らし、肺炎などの重篤な病気を引き起こしたりもする、どうにもこうにも困ったやつです。皮膚では、手荒れや傷口で繁殖して化膿させたり、皮膚の角層を壊してカサカサに乾燥させたりします。それなら、殺菌や除菌をしておうちゃんを撃退したくなるところですが、そうするとヒョウくんやあっくんも倒してしまうことに。善玉のヒョウくんが元気なら悪玉菌は悪さができないので、おうちゃんを退治するより、ヒョウくんが元気になる環境を作ったほうが、肌のためには良いのです。
　ただ、ヒョウくんは、どんなに増えても皮膚常在菌全体で５０％程度が限界。菌の社会も人間社会と同じで、いろいろな個性を持った菌がバランス良くいることで、平和が保たれるのです。

※１　グリセリンとは、油を加水分解したときに脂肪酸とともに作られる甘みと粘り気のある液体。保湿剤として化粧品、医薬品等に使われたり、食品に添加されたりする。

※２　脂肪酸とは油を作っている基本的な成分。体内の脂肪が分解され、血液中に放出されたものを遊離脂肪酸（ゆうりしぼうさん）といい、エネルギーの源となる。

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以降のSTORYでは、それぞれの菌が及ぼす影響や正しいスキンケア・オススメのケア用品について、漫画を交え解説しています。

＜収録内容＞
はじめに
characters　本書に登場する「菌」と「人」

chapter１ 皮膚常在菌のキホン
STORY１　皮膚常在菌って、なんだ？
STORY２　皮膚に棲む、知っておくべき３大常在菌
STORY３　表皮ブドウ球菌くんの日常
STORY４　弱酸性パラダイスがアルカリ性デスシティに!?
STORY５　アクネ菌くんと黄色ブドウ球菌くんの日常
column１　風邪などの菌も表皮ブドウ球菌が跳ね返している！

chapter２　美肌菌の増やし方
STORY６　美肌菌を喜ばす「ツヤ子」の２４時間

今の皮膚常在菌の状況をチェック！　あなたは良い菌、飼ってますか？

STORY７　素肌を変える！　美肌菌を喜ばす３大要素
STORY８　究極のうるおい肌に！　ツヤ子さんの「蒸し美容」
STORY９　美肌菌にエールを送る「菌エキスコスメ」
STORY 10　いつものメイクと皮膚常在菌の関係
STORY 11　睡眠不足だと肌荒れする本当の理由
column２　次の週末は美肌トリップへ！　「菌取り旅」のすすめ

chapter３ もっと知りたい菌のセカイ
おわりに

著：川上愛子　漫画：しおざき忍　『皮膚常在菌ビューティ！』
紙書籍定価　￥1,200+税　/　電子書籍価格　￥1,000+税
(書影はAmazon Kindleにリンクしています)

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