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キリンの首はどうやって作られたか。

NASA Briefingは2022年06月02日に、「ユニコーン」化石の発見が謎を解く。
ニコラ・ジョーンズ(Nicola Jones)は、古代のキリンの新種は、激しい頭突きをするために設計された分厚いヘルメットを持っていた。

キリンの長い首はどうやって作られたのだろう?研究者たちは、数百万年前に中国に生息していたキリンの一種が、この難問に光を当ててくれるかもしれないという。

ユニコーンに似た神話上の生物にちなんで名づけられたこの動物は、高速で頭をぶつけ合う戦いに最適な分厚い頭部をもっていたのである1。

キリンの首は、何十年もの間、研究者の興味をそそりつづけてきた。異常な長さにはそれなりの理由があるはずだ。苦労が生じるからである。キリンの心臓は2メートルの血液を頭まで送る必要があり、失神や脳卒中を避けるため、高い血圧と管理が必要である。この研究に参加していない南アフリカのケープタウン大学の行動生態学者ロブ・シモンズ(Rob Simmons, a behavioural ecologist at the University of Cape Town in South Africa, who was not involved in the study.)は、「見事に適応していますが、大きな犠牲を払っています。」と言う。

https://time-az.com/main/detail/77064

有力な説のひとつは、キリンは高い木に登って餌を取るために首を長くした、というものである。「これは広く信じられていることで、本当に定着しています」とシモンズは言う。キリンは低いところから食べる傾向があり2、背の高いキリンは食料の競合が最も激しい干ばつを生き残る可能性は高くない3ことが研究で示されている。また、キリンは性競争のために首が長く進化したという考え方もある。オスのキリンは首を激しく振り回す戦いをし、長い首は相手を惹きつける。この「セックスのための首」説は、オスがメスより首が長くないという事実によって、異議を唱えられることもある4。「従来のキリン研究者にとって、この性淘汰説を受け入れることは非常に困難でした。」とシモンズは言う。

2022年06月02日付の米科学誌『サイエンス(Science)』に掲載された古代キリンの化石は、この議論に新たなデータを追加するものであった1。

Sexual selection promotes giraffoid head-neck evolution and ecological adaptation

Issue 6597
DOI: 10.1126/science.abl8316

共著者のジン・メン(Jin Meng)は1996年、中国北部のジュンガル盆地(Junggar Basin in northern China)の砂地に横たわる4つの椎骨を持つ頭蓋骨を偶然発見した。北京の中国科学院脊椎動物古生物学・古人類学研究所の古生物学者であるシー・チー・ワン(Shi-Qi Wang, a palaeontologist at the Chinese Academy of Sciences Institute of Vertebrate Paleontology and Paleoanthropology in Beijing)は、「彼は『奇妙な獣だ!』と叫びました。」と言う。ジン・メンらは20年以上かけて77以上の同種の化石を発見し、その中には2つの頭骨といくつかの歯が含まれていた。


彼らはこの標本を、約1690万年前の中新世に生息していた、これまで知られていなかったキリンの親戚であると説明している。

キリンというより、首の短いアフリカオカピ(Okapia johnstoni)に似た姿をしており、頭頂部にはケラチンの層でできた厚さ5cmの硬い構造物を持っていたようだ。彼らはこの動物を、中国の神話に登場する一角獣のような生物「謝珠(xiezhi)」にちなんで「Discokeryx xiezhi」と名づけた。「この伝説は、キリン科の化石に由来しているのかもしれません」とシー・チー・ワン教授は推測している。
ロブ・シモンズ教授は、この動物の複雑な頭部と頸部の骨構造を見ると、「雄と雄の戦闘を助けるために、力と強さに絶妙に適応していた」ことがわかるという。

この新しいキリン型は、奇妙な頭部を持つ多くの種が存在する家系図に合致する。シー・チー・ワン博士らは、キリン類とその近縁種に見られる十数種類のヘルメットや角の形状を地図にまとめている。

シー・チー・ワン博士は、キリンの祖先が森を出て草原に入ると、首が長くなって戦闘スタイルが進化し、これまで以上に激しい戦いをするようになったと考えている。しかし、おそらく高い採餌量も関係したのだろう、と彼は言う。

オールド・ウェストベリーにあるニューヨーク工科大学整体医学部の古生物学者ニコス・ソロウニアス(Palaeoungulate biologist Nikos Solounias at the New York Institute of Technology College of Osteopathic Medicine in Old Westbury)は、この新しく報告された頭突き反芻動物が現代のキリンの特に近縁種であるとは確信していないし、彼らの首について多くを語れるとも思ってはいない。
「すべての反芻動物は角と首を使って戦います。」と彼は言う。「キリンは違った戦い方をしています。」彼らは違った進化の歴史を持っています。しかし、ロブ・シモンズは、この研究が、先祖のキリンの首の形に性淘汰が強い役割を果たしたことを示しており、現代のキリンにも「同様にあり得る」という扉を開くものだと主張している。「この論文は、我々がこの性淘汰説を真剣に受け止めるべきだという人々の目を開かせることになるでしょう」とロブ・シモンズは言う。

Nature 606, 239 (2022)

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