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マーケティングは情緒じゃなくて、ロジックとメカニズム

なんだと、最近よく思います。

マーケティングって「消費者の心理にグッと訴えかけて気持ちや行動の変化を促すものすごく情緒的な活動」「その人を納得させるような何かの心理術」のように見えてませんか?

別にアンケートなどで何割の人がそう考えているとかを調査したわけじゃないですが、なんかいろんな人と話をしているとそう考えている人って多いんじゃないかな?って気がしています。

たしかに広告やいろんな販促キャンペーンを見ていると思わず目を引いてしまったり、胸がキュンとしてしまうことがあったり、思わず欲しい!とか、つい衝動買いしちゃったよなんてことがあります。
だからこそ、マーケティングって人の情緒に訴えかけるような活動に見えてしまうのかも知れません。

でも、実際マーケティング戦略を考えていくときには、情緒的なことはほとんど考えていません。近いことと言えば消費者インサイトを考察するときですが、それだって定量定性的な調査データを分析していくことが基本です。
そもそも、心理学だって統計中心の学問です。

マーケティング戦略を考えていくときには、まず現状をロジカルに分解し、そのメカニズムを解明していくことから始めます。
例えば「たくさんの人が好きって言ってくれて、気に入って買って欲しい!」「売上を上げたい」といっても、その売上はどうやって出来上がっているのかを冷静に分解していかないとどこから手をつけていいのかわかりません。

出所)田村修「いちばんやさしいデジタルマーケティングの教本第二版」(2021)インプレス、P.176

これは簡単な例ですが、売上はどうやって出来ているかというと、どのくらい売れたのか(量)と一個いくらで売れたのか(単価)で出来上がっています。もし販売をしている商品が同じだとしたら単価は変わらないので、売上を上げるには販売量を増やさなければいけません。

じゃぁ、その販売量はどのように分解できるかと言えば、まず買ってくれるお客さんはどのくらいいるのか(客数数)、そのお客さんは一回あたりに何個買ってくれるのか(個数)、どのくらいの頻度(毎日なのか月一回なのか)によって販売量が変わってきます。となると販売量を増やすためには、お客さんの数を増やすか、一回あたりに買ってくれる量を増やすか、頻度を増やしてもらうかの三つの方法があることがわかります。

こうやって考えたあと、お客さんを増やす方法としてチラシを配布する、チラシを配布するエリアを拡大する、店内のイベントを実施する、目玉商品を作る等の施策を次に検討していく事になります。もし過去の施策実績から、いろいろ施策を行ってもなかなかお客さんは増えないという状況ならば、一回あたりの販売量を増やすための施策(例えば、セット商品・パッケージ商品を作っていく等)を実施していく必要があります。

また、お客さんの数というのも分解することができます。これは、分解のしかたはいろいろあるのですが、たとえば「毎日お店によって買い物をしてくれる人」「週に1回程度来てくれる人」「お店の前をいつも通るけど一度も入ったことのない人」「お店の近くには住んでいるんだけど、お店の前を通らない人」などです。こうやって考えてみると「毎日お店に来てくれる人」を相手に商売をすることと、「一度もお店に入ってくれていない人」や「お店の前を通ったことがない人」をお店に入ってくれるようにすることととは、やらなければいけない施策は全然異なってくることがわかると思います。

このように物事を分解して考えていくことが「ロジカルにメカニズム」を考えるということです。そして、マーケティング戦略の検討というのは、このように現象をロジカルに分解をして注視すべき要素を洗い出し、どういう施策であればその要素を変化させられるのかのメカニズムを構築していくことに他なりません。

さらに、様々な施策を検討した後、どの施策を選ぶのか?という段階においても情緒的な判断は出てきません。どうやって判断するかというと、今回の施策の対象となるお客さんの層(年齢、性別、職業等)や時期等を鑑み、どのような施策であればどのくらいの効果が出るのかといった過去の実績や類似データを活用したシミュレーションをいくつか作成し、その結果で判断をしていきます。施策の判断においてもロジックが必要になってきます。

なるべく簡単にマーケティング戦略や施策検討の現場ではどのように考えているのかを書いてみましたが、「(ただ単純に)どうやったら人の心を動かせるのだろか」といった情緒的なことだけを考えながらプランを作っているわけでない、となんとなくわかっていただければいいなと思っています。


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