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VRChat's Creator Economyの活用方法:喫茶「はたご」の場合①(入門編)

2024年2月23日に、VRChat内で「アルバイト」ができるお店、喫茶「はたご」のプレオープンイベントを行いました。

このお店は、「VR空間に生活の場と経済圏をつくる」というコンセプトのもと、現実のカフェのようにスタッフが働き、そこを訪れる人々にほっと一息つけるような場を提供することを目指しています。

現在、プレオープンの結果を踏まえて3月8日(金)19時から(以降、毎週金曜19時~21時に営業)の本オープンに向けた準備を進めています。

プレオープンでは、お店の運用方法、特にVRChat Creator Economyの仕組みへの関心が高いことが印象的でしたが、現在は、Creator Economyへの参加人数は限定されており、日本国内のコミュニティでの例も少ないため、サブスクリプションの仕組みやそこでの支払いに利用するVRChat Creditsの購入方法もあまり知られていないようです。
わたし自身、このカフェを作った際に初めて知ることがたくさんありました。

そこで、わたしがカフェを作るにあたって理解できた範囲で、Creator Economyの仕組みと喫茶「はたご」での利用方法を紹介したいと思います。

(記事を書いてみたところ、Creator Economyの仕組みだけでかなりの分量になったので、Creator Economyの実装面、技術面の話は別記事で書く予定です)

Creator Economy の基本

「Creator Economy」とは

Creator Economyは、2023年12月(ベータ提供は11月)から始まったVRChat内での決済の仕組みです。VRChat内で利用可能な通貨「VRChat Credits」にてVRChat内での取引を実現することができます。

現在、急速に開発が進んでおり、現時点ではVRChat内で利用者からの有償サブスクリプション機能だけが利用可能ですが、今後、「VRChat Credits」でできる取引が増えていくものと予想されます。

Creator Economy 開始以前には、VRChat内部で完結するユーザー間の取引の仕組みがなく、VRChatで提供するワールド、サービスを有償で提供する際には、外部の決済サービスを利用する必要がありました。
このような有償でのサービス提供をVRChat内で完結することができるようになったことは大きなメリットです。

「VRChat Credits」とは

「VRChat Credits」は、一言で言えばVRChat内で利用できる「お金」(Second Lifeで言えば「リンデンドル」)です。Creator Economyの有償サブスクリプションを購入する際には、事前にVRChatのメニューからVRChat Creditsを購入しておく必要があります。

VRChat Creditsの購入画面を開くと、PCの場合はSteamの決済画面、Questの場合はMeta Storeの決済画面が開くので、それぞれのストアからVRChat Creditsを購入します。(VRChat+のサブスクリプションと同様の決済方法)
ちなみに、VRChat Creditsはアプリ配信プラットフォーム共通で、Steamで買ってもMeta Storeで買っても相互に利用可能です。

通常メニューの右上にある「▼(数字)」のところを開く
VRChat Creditsの購入画面(選択すると、各アプリ配信プラットフォームの決済画面が開く)

サブスクリプションの購入とサブスクライバーRole(Paid Role)

サブスクリプションは、基本的には対応ワールドに設置されたサブスクリプションギミックから購入します。

喫茶「はたご」のサブスクリプション購入画面

また、この点は使ってみないとわかりにくい点なのですが、サブスクリプションはVRChat Groupの機能の一つとなっています。有償のサブスクリプションを購入すると、そのサブスクリプションを提供している VRChat Group から特別なRole(Paid Role、例では「常連さん Role」)が付与されます。サブスクリプションで直接的に購入するのは、このRoleになります。

サブスクリプションを提供するクリエイターは、そのRoleに対してサブスクライバー限定の権利(サブスクライバー限定のアイテム、ギミック、スペース、インスタンスなどの利用権、例では「秘密基地アクセス権」)を設定し、制作したワールド内ではその権限に応じたサービスを提供します。

この方式は理解してしまえば合理的な方法で、サブスクリプション対象をワールドや有料アイテム、クリエイターそのものではなく、Roleにすることで、複数のワールドで共通のRole(同じ製作者のワールド共通の特典など)を使えたり、サブスクリプションの特典を変更するときにもRoleに設定する利用権を変更するだけで反映が可能です。
また、クリエイター個人に対してお金を払うというのではなく、その人が提供している作品等のGroupにお金を払う仕組みのため、人そのものではなくクリエイター活動に向けた支払いとなるのもよい仕組みだと思います。

また、Groupとすることで、Group内での利用ルールの設定や複数人でのモデレーションも可能なので、組織での管理もしやすくなっています。
これを知るまではVRChat Groupは、単にユーザー間のコミュニケーションの利便性を高めるだけのグルーピング機能だと思っていましたが、実際にはそれにとどまらず、Creator Economyでの経済圏の核にもなるような今後のVRChatの中核機能として考えられているようです。

サブスクリプション売上の内訳

Creator Economyでのサブスクリプション売上の配分は、以下のスライドで説明されている通り、Steam/Meta Store等のアプリ配信プラットフォーム利用料が30%、VRChatへのプラットフォーム利用料の20%を引いたあとの50%がクリエイター側へのおおよその支払額になります。

厳密には、Steam/Meta Store等のアプリ配信プラットフォームの利用料は、VRChat Creditsを購入する際に発生し、VRChatへのプラットフォーム利用料はVRChat CreditsをVRChat内で利用する際に発生します。また、VRChat Creditsを払い出す際に出金手数料が発生します。これらを総合したおおよその収益分割が上記の図になります。

プラットフォームへの支払い合計が50%というのは、正直なところかなり高い割合ではあります。ただ、仕組み上、Steam/Meta Store等のアプリ配信プラットフォームの利用料はVRChat側からは避けられないもので、またVRChatが単なる決済基盤ではなく高機能なVRプラットフォームであることを考えるとVRChat側の取り分もやむを得ないところではないでしょうか。

ただ、単純に利用者の支払い金額からクリエイターの手元に入る金額の比率を考えると、FanboxやPatreon等の外部サイトで決済を済ませ、その結果をクリエイター側でワールドに反映する方式の方が利益率が高くなることは確かです。

喫茶「はたご」は、VRChatを活用したサービス提供を行い、VRChatと収益を分け合うことで持続的な経済圏をつくることも狙いの一つなので、Creator Economyでの収益化を選択しましたが、すでに別の方法で収益化をしているクリエイターは必ずしも乗り換えなくてもよい、という状況かと考えています。

Creator Economyへの参加方法

2024年2月15日から追加募集中

現在、Creator Economyへの参加は申請制で参加人数には制限がかけられています。直近では、2月15日より追加募集が始まり、申し込みフォームが設置されました。
以下の記事にリンクされている「Seller Application - Creator Economy」から申し込むことができます。
制限があるとはいえ、新しいチャレンジは積極的に受け入れていく方針のようで、やりたいアイデアがある方はぜひ申し込んでみてください。

ただし、原則やり取りは英語になります。VRChat運営スタッフが気を使って、英語を機械翻訳したものでコミュニケーションを取ってくれたりしていて流暢な英語が求められるわけではないので、自分でも機械翻訳を使いながらやり取りできる意志があれば大丈夫だと思いますが、英語でのやり取りにアレルギーがある場合は参加は難しいかもしれません。

また、わたし自身は、このようなフォームが整っている状態で申し込んだわけではなく、Creator Economyのベータ版開始が一般に告知された時点で内容を知り、その直後に一般の問い合わせ窓口から連絡をしました。そもそも、その時点で出ている情報では一般的な申し込み方法がなく、法人として参加が可能なのか、パートナー契約等の個別契約が必要なのかが判断がつかなかったためです。
結局、Creator Economy参加そのものには、パートナー契約が必須ではなかったものの、弊社はパートナー企業向けにだけ解放されているWebサイト直接リンクギミックを利用するためにパートナー契約も締結しました。パートナー契約の面でも情報提供は可能なので、内容を知りたい方は直接聞いてください。

まとめと実装面・技術面の記事について

ここまでCreator Economyの基本的な仕組みと参加方法を紹介してきました。
続いて、Creator Economy参加後の設定方法、ワールドへのギミック追加など実装面、技術面も紹介しようと考えていますが、記事が長くなったので、そちらは別に記事にして、そちらが完成したら、こちらの記事からもリンクを貼る予定です。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


注釈

※わかりやすさのため、喫茶「はたご」の有償スタッフのことを「アルバイト」と表現していますが、報酬の支払い方法、契約方法はスタッフの個別事情を考慮して決めています。詳細な方法は個別にお問い合わせください。
また、スタッフへの支払いはサブスクリプションの有無にかかわらず、事前の契約に基づいて行います。


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