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第5回 物流の逆襲・ロジスティクスの未来

 「物流の逆襲・ロジスティクスの未来」として、これまで「物流VSマーケティング(前編・後編)」では、ビジネスにおいて重要視されることが多いマーケティングですが、その裏で物流があってこそ、実現する世界についてお伝えしました。そして、「物流×デジタル(前編・後編)」では、物流のこれまでの進化と、さらにデジタル化が進むなかで、日本におけるデジタル化の阻害要因についてお伝えいたしましたが、いかがでしたでしょうか?
 最終回は、なぜ自分がここまでも物流の重要性について熱く語るのかについて触れ、そこから物流が描く未来について書かせていただきます。

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上場と倒産

 今から28年前 社会人になりました。最初に勤めた会社は、婦人服のアパレル会社で急成長しており、当時「ベンチャーの旗手」呼ばれアントレプレナー大賞をとるような会社でした。そして自分が入社した2年後には上場します。それが、その8年後の2002年に会社は倒産することになるのです。
 倒産した時には、東日本エリアのブランドマネージャーとして2つのブランドを任せられており、名古屋以西から北海道までの店舗と、数十名の社員と販売スタッフを抱えている事業部でした。上場まで一気に上り詰めてそこからの急降下、まさに天国から地獄でした。なかでも一番辛かったのが、これまで頑張って現場を支えてくれていた販売スタッフに対してでした。販売スタッフのなかには、母子家庭で販売員としての給与で子供を学校に通わせている人もいました。電話で倒産のこと販売スタッフに伝えると「これまで会社を信じて頑張ってきたのに、この先はどうしたらいいのか?」と言われ、何もできない自分に悔しい思いをしました。
 「会社って、こんなに簡単に倒産するんだ・・・」そして、多くの人の人生を狂わせてしまうのだと感じました。会社が倒産した原因のひとつが「在庫」です。アパレル会社の倒産原因で多いのが、在庫過多によるキャッシュフローが回らなくなることです。当時を振り返っても、売上至上主義のなか、倉庫には在庫がどんどん膨らんでいきました。アパレル業界の商慣習でもある、委託販売や消化仕入れで商品は、出荷されるものの、お客様に買ってもらえなければ現金化できないため、会社の体力は作れば作るほど、体力を奪われていきました。

物流を見れば会社経営が見える

 これまで物流とは関係のない話をしてきましたが、もしあの時に倉庫や物流で起きていることを理解していたらと思います。当時 倉庫は外部に委託していたので、在庫は画面上しか見ることはなく、倉庫に高く在庫が積まれていたと思います。モノは作って終わりではなく、お客様に届けられてビジネスになります。倉庫の中では営業の無理な依頼や、消化率の悪い催事などがあると、無駄に在庫が動き物流費だけが膨らみます。物流は、その企業活動が現象として現れます。財務諸表などでも会社の経営状態はみることはできますが、リアルに感じることができるのが、倉庫ではないかと思います。

物流に関心のある経営者少ない

企業における物流費比率は、全業種平均でも5%とわずかで、物流改善などで下げても全体から見ると数%と限られています。経費削減項目として物流費に注目していますが、倉庫会社や配送会社を叩いて下げさせるくらいしか考えていないところも多いです。経営者の関心は、やはり売上やマーケティングが高く、物流は事業部任せになっています。

物流こそ最大の武器

物流の話によく「Amazon」「ZARA」の話があがります。アマゾンは「物流は、Amazon最大の武器」として、ユーザーファーストを掲げ、圧倒多岐な品揃えの多さと、物流での利便性を追求し、毎年巨額の投資をし続けています。ZARAが日本から学んだと言われるのが、「トヨタの生産方式」です、ジャストインタイムでモノを作り、流す仕組みです。製造から72時間で全世界に届ける物流インフラを構築し、サプライチェーンをつなぎ、リードタイムを短縮していることが、アパレル業界で世界NO.1へと導いています。
 「それって物流なの?」と思われた方も多いかと思いますが、倉庫の中だけ行っていることではなくて、店頭や市場でおきているモノの流れを「ロジスティクス」として捉え、さらにモノ作りに関わるサプライヤーなどの企業間連携も含め「サプライチェーン」となります。物流を倉庫の中でだけ限定するのではなく、モノの流れとして捉えると、物流の重要性や可能性を感じてもらえるのではないかと思います。
 いかがでしたでしょうか、自分が物流を熱く語るのは、倒産した時 何もできなかった過去のトラウマから、「物流を通して企業を元気にしたい」との思いからです。また、前職の物流会社(3PL)の時に、多くの企業の物流をお手伝いしてきましたが、物流がコスト部門として軽視されている現実を見てきました。
 みなさんの会社では物流は正常に回っていますか? 自分たちの作った商品が倉庫でどうなっているのか見に行ってみてはどうでしょうか?パソコンの画面だけでは見えなかったものが見えると思います。

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物流の未来

 最終回は少し長くなりましたが、これからの物流の未来について少し触れて最後にしたいと思います。物流の未来は「共創」・・企業間の垣根を超えてつながる物流です。
 簡単に言えば共同配送、共同物流になるのですが、いっしょに運んだ方が効率的で、物流コストも抑えられ、CO2などの環境保護に貢献できるのに、現実的には実現できているケースはまだまだ少ないです。
 それを実現するためのキーワードが、物流における規格を統一する「標準化」です。さらには、情報の「デジタル化」です。各企業や業界の商慣習などにより、箱や伝票などの規格はバラバラで、情報も繋がっていないため、「いっしょに運ぶ」ことが実現できない状況です。ヤマトや佐川含め、配送ドライバーの不足の問題も、そのトラックには半分ほどしか荷物が積まれていないため、いっしょにまとめて運ぶことができると、ドライバー不足の問題も軽減されます。 
 とは言え、そんなに簡単ではないです。それぞれ企業が単体で自社の利益のためだけに動くと、実現は不可能です。企業間の壁を超えて各社が連携し、自社の利益よりその先にある、業界全体・・・最終的には、お客様にとっての利益を最優先と考え、繋がることで、「いっしょに運ぶ」ことはが実現します。インターネットで人やモノが全て繋がる世界で、物流も急激に進化しますが、その流れを捉え、これまでの既成概念や常識をぶっ壊す、ディスラプターやゲームチェンジャーが生まれるのを期待します。

 これまで最後まで読んでいただきありがとうございました。最後の回は、かなり個人的な思いや考え方が多くなりましたが、「物流は経済の血流」です。物流によってこの世界が豊かに、住みやすい世界になればとねがっております。物流について熱く語りたい方は、是非お話しましょう。

◆この著者の記事
第1回 マーケティング VS 物流(前編)
第2回 マーケティング VS 物流(後編)
第3回 物流×デジタル(前編)
第4回 物流×デジタル(後編)

株式会社リンクス
代表取締役 小橋 重信

アパレル会社での在職中に上場から倒産までを経験。そこでは、在庫が滞留することの怖さを経験。その後の物流会社で多くの荷主の物流をサポートし、「物流から荷主企業を元気にする」ことを目標に在庫管理の大切さを伝える活動を行う。3年間のIT企業での経験から、ITの知見もあり、「ファッション×IT×物流」トータルでのコンサルティング活動を行う。

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