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公式SNSの運営価値を高めるユーザーアンケート活用法

「SNSの仕事価値が組織に浸透しない」「施策の成果以前にブランド力が弱い」―SNSの担当者が活動初期あるいは組織変更と共に悩む課題です。また、会社の文化によっては次のような業務に対する定番の指摘も入り、取り組む以前のハードルがあります。

・ビジネス貢献がよくわからない
・ツールを増やしても大変なだけ
・ユーザーと交流するのはリスク

さらに人員体制によって、専任体制下では業務が注目されていても孤立してアピール手段が不足したり、共同体制下では惰性的な運用により大きな成果は上がらなかったり、役割や方針が不透明なことによるSNS業務への疑念が生まれることもあります。

そこでおすすめしたいのが「公式SNS運営アンケート」を実施する方法です。ユーザー接点の際たるチャネルであるSNSは、ユーザーへの連絡手段と体験内容が定常活動の中で確保されているため、ユーザーアンケートにはとても向いているテーマです。

今回は「公式SNS運営アンケート」の活用法を解説します。

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▼ 公式SNS運営アンケートの企画メリット

公式SNS運営アンケートの企画メリットは、主に3つあります。

企画メリット

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①マーケティング成果を複線化できる

SNS活動の運営指標は、投稿インプレッション・新規フォロワー数・お気に入り保存率など、ユーザーエンゲージメントを表す各種数値で確立されています。これは担当者の日々の業務実績を管理するには良いのですが、部外に伝わりづらいのが難点です。

部外の会議の場面になると、関係者が参照基準値をあまり理解していないことから、こうした運営指標の伸長だけではピンと来ず、大バズリのような相当の成功体験でないと活動成果に納得感がないような雰囲気になります。これはけっこうなハンデです。

そこでユーザーアンケートを使うと、運営指標をSNS内のものに留めず、ビジネス側に寄せた指標を取得して、活動成果を複線化することができます。すなわち、「SNSの枠組み」を「マーケティング活動の枠組み」に拡張して報告する手段が増えます。

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②担当ツールをまたいだ検証ができる

Twitter・Instagram・Facebook・LINE・YouTube…SNSの取り組みを増やしていくと、次第に担当者単位・ツール単位の運用形態となり、事業部門間や機能部門間の連携を取るのが難しく、活動の報告・共有のあり方が組織内でバラバラになっていきます。

事業や組織が大きくなれば、個々のツールごとに運用を深めていく体制はある程度やむを得ないものですが、一方で、担当者が寄り集まって面としてのSNSの業務成果を強調できないと、会社としてSNSの活動を実施する意義や期待が高まっていきません。

ユーザーアンケートを使えば、ツールをまたいだ検証ができるので、1つのデータセットで面的に報告・共有することが可能です。また、SNS担当者個々人の才覚に依存することなく、経営や本部が主導して総合的に検証する場を設けることができます。

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③ユーザー接点の機能性を広げられる

ユーザーコミュニケーションのチャネルとしてSNSが持つ機能性は、投稿や告知など短期的な(早期の)ものに対する期待が会社からは高く、通常はマーケティング・広報活動の文脈でその時々の成果がいかに上がったか?が問われることになります。

しかし本来SNSが持つ機能性は、イメージやブランドなどの長期的な(晩期の)ものにも富んでいます。他チャネルだと、CS(お客様問合せ)では積極的に個性を伝えづらく、メルマガやプッシュなどもある程度形式化した運用形態が前提になります。

ユーザーアンケートを使うと、アカウントを通じた会社の個性を検証することができ、ブランドや法人のファンの姿をデータに映し出すことができます。顧客のロイヤル化の観点は経営・管理部門にも通じやすく、全社的な理解を得ることができます。

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ここまで、公式SNS運営アンケートの企画メリットを説明してきました。会社のSNS活動全体について現状を総括する機会となることはもちろん、戦略から企画まで再構築することができるため、ユーザーアンケートが果たす役割はとても大きいと言えます。

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▼ 公式SNS運営アンケートのモデルケース

アプリ事業者のユーザーアンケートでは、公式SNS運営をテーマとするアンケートがいま急増しています。もちろん全体の実施件数までは把握していませんが、アンケートの1トピックスがSNSだったり、単独テーマで実施されるケースも増えている印象です。

SNSの運営評価はデジタルデータで投稿パフォーマンスやフォロー状況を検証可能です。あるいは投稿を通じて簡単なクチコミを収集することもできます。それでも企業がこぞってSNSのユーザーアンケートを行うのは、あえて実施する意義があるからです。

以下では、公式SNS運営アンケートで代表的な3つのモデルケースを解説します。

モデルケース

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▼ ①実態把握モデル

実態把握モデルは、「各アカウントフォロー状況の把握に使う」調査モデルです。アカウントのフォロワー数はアンケートで調べるまでもありませんが、会員におけるフォロー比率や複数アカウントの併行フォロー状況を把握するにはアンケートが便利です。

実態把握モデル

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<質問構成>
①当社が運営する[○○](ブランド名称)を初めに知るきっかけとなった情報源はどれですか(複数回答)【ブランドの認知情報源】
②あなたが現在アクティブに利用中のSNSをお選びください(複数回答)【利用中のSNS】
③当社が運営する下記のSNSアカウントのうち、いま現在フォローしているものをお選びください(複数回答)【フォロー中のアカウント】

核となる質問構成は、①ブランドの認知情報源、②利用中のSNS、③フォロー中のアカウントとなります。

まず、①でSNS以外も含むプロモーションチャネルの中でSNSがブランドの初期認知にどれくらい影響しているか見極めます。この質問は効果測定モデルの要素も含みますが、次設問のフォロー状況をユーザーのステータスごとに分析する用途で役立ちます。

次に、②利用中のSNS、③フォロー中のアカウントの質問を通じて、ブランド(サービス・事業部門)やツール(各SNS)ごとの差を可視化します。特にSNS担当者が社内に分散している場合は実情が不明瞭になりがちなのでアンケートで一斉把握します。

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ここでは、ドラクエブランドの宣伝アカウントが募集していた「ドラゴンクエスト」のシリーズ体験ユーザーアンケートの例を見てみましょう。

ドラクエOGP

<ドラゴンクエスト>シリーズ体験ユーザーアンケート
①ゲームの情報収集源 Q.ゲームの情報源は?(公式サイト/ウェブ記事/ゲーム実況…)
②公式アカウントのフォロー状況 Q.フォロー中のアカウントは?(各タイトル/ブランドPR…)
③キャンペーン参加経験 Q.参加したキャンペーンは?(プレキャン/その他/意向なし)

「ドラゴンクエスト」の宣伝アカウントでは、ドラクエシリーズの様々なタイトルを網羅した公式SNS運営のアンケートを実施してしており、①ゲームの情報収集源②公式アカウントのフォロー状況③キャンペーン参加経験などの質問を尋ねていました。

このようにユーザーアンケートでは、ユーザーのふだんの情報収集法を押さえつつ、ブランド+企業広報のアカウントフォロー状況・キャンペーン参加状況を可視化し、会社全体としてSNSを通じたユーザー接点の実態を一斉把握する用途に向いています。

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▼ ②効果測定モデル

効果測定モデルは、「ブランドロイヤルティ向上の計測に使う」調査モデルです。投稿へのリアクションやキャンペーンへの誘導はデジタルツールで計測可能ですが、総体としてSNSが何の役立っているか?はユーザーアンケートで明示的になります。

効果測定モデル

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<質問構成>
①当社の公式[○○](SNS名称)をフォローしてからどれくらい経ちますか(単一回答)【フォロー期間】
②当社の公式[○○](SNS名称)の投稿を見た後、行動面での変化は何かありましたか(複数回答)【接触効果:行動面】
③当社の公式[○○](SNS名称)の投稿を見た後、意識面での変化は何かありましたか(複数回答)【接触効果:意識面】

核となる質問構成は、①フォロー期間、②接触効果:行動面、③接触効果:意識面となります。

SNSは開設時期や運用方法の影響を強く受けるため、①フォロー期間の質問は文字通りフォロー期間の長い・短いを確認するのではなく、初めにフォローしているアカウント=認知に強く、ターゲット親和性が高いアカウントを見極めることができます。

そして接触効果(態度変容)を問う②~③の質問により、ユーザーのブランドへの関わり方の変化を具体的に検証します(行動と意識は同一設問で尋ねてもOKです)。この結果から、ユーザーの期待に応じてSNS活動の役割を最適化する情報を得られます。

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ここでは、検索・メール・ブラウザ・動画サービスのほかプロダクトの開発・提供も手掛ける「Google Japan」のユーザーアンケートの例を見てみましょう。

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<Google Japan>ユーザーアンケート
①フォロー時期 Q.フォローした時期は?(直近/半年前/1年前…)
②行動変容 Q.投稿を見て取った行動は?(投稿内容の検索/ハッシュタグ投稿/製品の購入…)

「Google Japan」では主要サービスの満足度・好意度を尋ねるユーザーアンケートの中で、自社SNSアカウントのことについて尋ねており、Twitter・Instagram・Facebookを対象に、①フォロー時期②SNSを見た後の行動変容を問う質問を設定していました。

特に注目すべきは行動変容を問う質問です。検索・投稿・購入など、ユーザーがその後に取った具体的なアクションを検証しており、いずれもブランドに対して主体的な関与度が高まる行動になっており、この結果は長期的ロイヤルティにつながります。

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▼ ③価値定義モデル

価値定義モデルは、「ユーザーが評価する施策群の収集に使う」調査モデルです。SNSにはツイートやストーリーのアンケート機能も実装されていますが、ユーザーアンケートではフォローユーザーを選別して純度の高い印象評価を尋ねることができます。

価値定義モデル

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<質問構成>
①あなたが当社の公式[○○](SNS名称)をフォローしている理由は何ですか(複数回答)【フォローしている理由】
②当社の公式[○○](SNS名称)で過去に行ったキャンペーンのうち、あなたの印象に残っているものは何ですか(複数回答)【印象に残ったキャンペーン】
③当社の公式[○○](SNS名称)で過去に投稿した内容のうち、あなたの印象に残っているものは何ですか(自由回答)【印象に残った投稿】

核となる質問構成は、①フォローしている理由、②印象に残ったキャンペーン、③印象に残った投稿となります。

SNSで発信する内容は、基本的に企業活動では運営側が伝えたいことを投稿するスタイルになりますが、ユーザーアンケートでは①②③の質問を通じて、自社らしい企画や投稿内容を定義したり、情報発信のトンマナ受容を答え合わせすることができます。

直接的に確認する質問が①フォローしている理由で、②③は回答結果で好評だった施策や投稿の要素から「らしさ」を読み取るためのものになります。アンケートではデジタルデータで設定できない属性項目も取得できるので、より深い分析が可能です。

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ここでは、DMMが運営する英会話サービスアプリ「DMM英会話」の9周年キャンペーンアンケートの例を見てみましょう。

<DMM英会話>9周年キャンペーンアンケート
①印象に残ったキャンペーン Q.印象に残っているキャンペーンは?(新年お年玉/レッスンエピソード投稿/フォロワー1万人記念…)
②印象に残ったイベント Q.印象に残っているイベントは?(コラボ/バスツアー/スピーチコンテスト…)

「DMM英会話」では各種プロモーションの実施実績を活かして、①印象に残ったキャンペーン、②印象に残ったイベントを尋ねていました。選択肢の中には、「レッスンエピソード投稿」や「スピーチコンテスト」など英会話業態らしい企画も含まれています。

公式SNSのビジネス貢献を極度に高めようとすると、告知と宣伝の掃きだめのようになってしまい、メルマガやプッシュ以外にわざわざフォローする理由にはなりません。アンケートを使うと過去投稿を総括する形でSNS活動独自の価値を見極められます。

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▼ 取材記事のお知らせ


データマーケティング・マガジン「マナミナ」にて、今回の記事テーマである「公式SNS運営アンケート」をテーマにしたインタビュー取材をしていただきました。実務での応用方法はこちらでも解説していますので、よかったら併せてご覧ください。

▼ SNS運用担当の仕事価値が高まる「公式SNS運営アンケート」注目すべきメリットとは?|マナミナ(この記事の取材解説です)

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▼ 出演イベントのお知らせ

この記事の内容を含む「公式SNS運営のアンケート活用法」セミナーが、株式会社ヴァリューズ主催で開催されます。当日は生配信ならではの企業事例解説もお話します。ぜひご視聴ください!

▼ 公式SNS運営のアンケート活用法|ヴァリューズ
2022/6/20(月)17:00-18:00 @オンライン(参加無料)※法人対象


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