ペルソナ04

Domani連載企画「23区の女」に学ぶ、東京23区をエリアマーケティングできるペルソナ

マーケティングの中でも難易度が高い業務のひとつに、「エリアマーケティング」があります。狭義では「商圏調査・地域戦略」を指す言葉で、いわば事業活動の根本なのですが、地域ごとの特性をデータから導き出すのは思いのほか難しいもの。

アンケートでもよく、都市間の傾向を比較する機会がありますが、「都心と郊外」くらい元の違いが無いとはっきりとした差は見出しにくいのが実情です。皆さんも市場調査やデータ分析をしていて、差の無さに困ったこと、ありませんか?

特に傾向を捉えづらいのが東京都内です。「港区」のように数字からもイメージからもわかりすいエリアはまれで、○○区に住んでいる人の特徴は何か?と言われても、ぱっと出てきません。とても大きな商圏だけに何とか把握しておきたいもの。

このテーマでは少し意外かもしれませんが、今回は女性ファッション誌『Domani』を取り上げます。

Domaniは、アラフォーのワーキングママを主な対象として、こだわりを表に出していくファッションを紹介する雑誌です。読者設定は長いこと「女(独身)、妻(既婚子供なし)、母(子供あり)」となっていましたが、2019年にリニューアルしてからは「イケママ」をキーワードに、かっこよさとやんちゃ感のあるママイメージを打ち出しています。

リニューアルに伴い始まったレギュラーの読み物記事が、今回取り上げる「働く母の生態ファイル:23区の女」です。記事は各区に住むワーママたちとの座談会(グループインタビュー)を文字起こしする形で構成され、毎号入れ替わり各区の特性を解説しています。連載名に「母の生態ファイル」と入っていますが、エリア自体の解説に非常に強いです。

現在までのラインナップは次のようになっています。
(※現在Domaniは隔月刊誌)

『実録!?東京23区・働く母の生態ファイル「23区の女」』
2019年2・3月号 千代田区の女
2019年4・5月号 港区の女
2019年6・7月号 江東区の女
2019年8・9月号 世田谷区の女

このうち、2019年8・9月号「世田谷区の女」の内容を見てみましょう。

2019年8・9月号 「世田谷区の女」
議題1:持ち家か賃貸か→「実家の近くに住む」。これがポイントです。
議題2:オフィスか在宅か→自宅やカフェでのリモートワーク派が増えてきました。
議題3:パン会かワイン会か→エンゲル係数は高めです。
世田谷区ワー/ママあるある→「オオゼキ」のバイヤーはすごい。

ポイントは、エリアに固有のトピック立てです。世田谷区では、家事情・働き方事情・食事情を取り上げている通り、毎回、各区を掘り下げるのにふさわしいトピックを3つに絞り込んでいます。(くくりきれない細かいトピックは「あるある」に集約されています)

このマガジンではペルソナの作り方・使い方をテーマにしていますが、ペルソナにおける「居住地設定」は難易度が高い項目です。一見設定しやすい項目のように思えるのですが、それゆえにとってつけたような設定(「白金在住」とか)になりやすい傾向があります。

「働く母の生態ファイル:23区の女」の中に出てくる話題は、「スーパー・レジャー・保育園」など、生活と近接したものが多いため、リアルな生態をつかむことができます。記事のくくりは「○○区」ですが、有名な町名や主要な駅エリアごとの解説も出てきます。

冒頭で記したように「エリアマーケティング」はとかく時間と費用がかかるもので、サンプル数が少ないと分析には不十分ですし、数が多いからといっても有効な分析ができるとは限りません。とにもかくにも「エリアに固有のトピック立て」が難しいからです。

そこをいくとDomaniの連載はうまくポイントを絞り込んでおり、下手にグループインタビューを実施するより、よほど情報を得られます。もちろん極論気味のトピックもあるかもしれませんが、23区のペルソナ設定に迷ったら、勘所がわかる貴重な情報源になります。


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