超活用法03

『with』2019年9月号 アンケートに学ぶ、販売につながるクチコミのポイント

「クチコミ」というと、今はもうネットが主で、どんなカテゴリでもショッピングの前にクチコミサイトやレビュー機能を見る行動は欠かせなくなりました。

ネット以前にこの機能を担っていたのが雑誌です。読者体験記のような形で投稿を募り、トピックに対する生情報を提供するコンテンツは雑誌の十八番です。

しばらく雑誌から遠ざかっている方もいるかもしれませんが、雑誌に出てくるクチコミを見ていると、「販売に結びつける」クチコミの見せ方がわかります。

中でも見せ方がうまいのが、女性ファッション誌『with』です。今回も通勤着をフィーチャーしたレギュラーコーナー「お仕事with」から事例を研究します。

2019年9月号のテーマは「クールビズ対応」。「上司&先輩からもお墨付き!私たちなりのクールビズ。OKNGの境界線って?」というタイトルで、オフィスの服装規定の厳しさレベルを4段階に振り分け、業種・職種ごとに合った夏の通勤コーデを紹介する記事で、OKアイテムとNGアイテムの境界線を教えています。

LEVEL1 ゆるめオフィス
ITベンチャー アパレルジム etc.
OK ノースリより長いプチスリーブで上品に腕見せ
OK 足先ストレスフリーなオープントウパンプス
先輩「会社規定ではないのですが、人目を考慮して肩や胸元の露出は押さえます。」
上司「涼しさをキープしながら、きちんと感もある。やりすぎない肌見せが◎です。」
LEVEL2 きれいめオフィス
メーカー内勤 広告ジム etc.
OK 鎖骨がのぞくボートネックでおしゃれに肌見せ
OK 長め丈でも涼しいコットン素材スカート
先輩「袖なしのトップスはNGなので、二の腕が隠れる袖丈はマストです」
上司「二の腕をきちんとカバーしている点と、落ち着いた色みが好印象です」
LEVEL3 きちんとオフィス
メーカー広報 広告営業 etc.
OK ほんのり透け感のある袖で爽やか上品に
OK 素足×パンプスもパンツ前提ならアリ!
先輩「先輩たちからの視線が痛いので、肌の見える面積はできるだけ押さえます」
上司「こちらのように装飾感が少なく、すっきりしたデザインが好ましいです」
LEVEL4 おたかめオフィス
保険会社営業 秘書 etc.
OK インナーはノースリーブで風通しよく
OK 羽織っていても快適な涼感仕様のジャケット
先輩「ジャケットとストッキングが着用必須。インナーで温度調整しています。」
上司「清潔感があり、お客様に会う際に相応しい身だしなみだと思います。」

サイトなどで商品をおすすめする時、クチコミ(アンケート・インタビューの自由回答コメント)を表示して訴求する方法は皆さんも試していることでしょう。でもこの方法は多くのサービスが対応しているので、そのままではあまり決定打にはなりません。

では、どう見せるとよいのか?

withの記事をリアリティあるものにしているのが、「先輩と上司のコメント」です。

各コーディネート写真の直下には、「withの先輩読者」と「各業種/職種の上司読者」のコメントがあり、アイテムの選び方・着こなし方を納得感あるものにしています。
つまるところ「先輩と上司のコメント」とは、「購買の意思決定に関わりを持つ人」のコメントです。その立場が明示されているからクチコミがうまく機能しているのです。

先輩と上司は、もちろんファッションアイテムを購入する当事者ではありません。ですがオフィスファッションの場合、商品の主たる使用シーンがオフィスなので、オフィスの空気感を判断する先輩・上司のコメントには重みがあります。雑誌ではこの構造と同じく、異性の視点から評価をする記事も多く見られます。

要は、「相手がどう思うか」という要素を含む業態・商材では、「購買の意思決定に関わりを持つ人」のクチコミが販売に結びつきます。言葉にしてみると当たり前なのですが、この通り実践できているか、自問してみましょう。

皆さんが掲載を担当するクチコミには、「購買の意思決定に関わりを持つ人の立場」が明示されていますか?回答者ステータスを付記している場合でも、「20代・女性」のように、どのコメントも年代と性別で済ませていないでしょうか?

withでは「先輩・上司」という企画に合った回答者ステータスをつけることで、記事テーマであるオフィスファッションの境界線判断をわかりやすくしています。販売に結びつけるクチコミの見せ方を知る好例なので、見てみてください。

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