超伝導と質量獲得【量子電磁力学】
超伝導、それは知れば知るほど奥深い自然現象であると思ったりします。最初それはただの相転移だと思っていました。しかし、確かにそれは相転移ですが、理解を深めると面白さが増します。
超伝導は質量獲得プロセス?
超伝導の最も知られている代名詞は電気抵抗ゼロですが、この電気抵抗ゼロというのはある転移温度で一気に抵抗がゼロに落ちることで発現します。つまり、徐々にゼロになっていくわけではなく、いきなりゼロに落ちるのです。それはあたかも、超伝導体のモードが突然変わったというべき捉え方もできます。
超伝導体においてはクーパーペアという電子対により、それがボゾン的振る舞いを行うことで「クロスオーバー」を引き起こす、これによって量子効果が見えるようになる的な感じで理解していましたが、そこに自発的対称性の破れが絡んでいます。
これは対称性の破れによる質量の獲得というような遷移が起きていることになります。対称性の破れによって自由度が失われつつNG粒子がフォトンに吸収されることで光子が慣性質量をもつという機構(アンダーソン機構)が働き、いわゆるこれがマイスナー効果として出現します。
自発的対称性の破れはヒッグス場の真空期待値がゼロでない場合に起きますが、この現象は超伝導(電磁相互作用)だけでなくクォーク(強い相互作用)やWボゾン(弱い相互作用)などにも同じ機構が働くとされています。
対称性が破れる帰結
ここでよく言っている対称性についてですが、自然界において左右対称なものは美しいというのはありますが、それは同時に不安定でもあると言われています。波風立っていない凪の水面は非常に対称性に富んでいますが、同時にいつ水面が泡立つかもわからない不安定さがあります。それは凪の範囲が大きくなればなるほどに不安定性は増します。
この対称性が壊れる(破れる)ことで水面全体は不均一になり非対称になるわけですが、これによって系全体の景色も変わってしまいます。景色が変われば、物理的な状態も変わるということで、対称性の破れは新しい物理現象の発現時におこったりします。超伝導でいえば、超伝導相への転移時にそれが起きており、クォークの質量獲得時にも同様に起きています。また、対称性という意味ではフレーバーなどにもあります。
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