〜自分を好きになれなかった私が命の誕生を支える仕事に就いて〜

高校生のとき、職業講話の機会がありました。

講演に来てくださった当時20代の方が、
自分の仕事を誇らしく紹介している姿を見て、
とても輝いて見えたのを覚えています。

同時に、
10年後、自分もこんな風にキラキラと仕事をする日が本当に来るのかな。
と、不安に思いました。
同じ気持ちを抱いている中高生、いますか…?


私は、今年の4月から助産師として働きはじめました。

このnoteでは、
私がどんな学生時代を過ごしてきたのか、
悩みや葛藤も交えて書きつつ、
どうして助産師を目指したのか、
助産師がどんな仕事をしているのか

お話しできればと思います。

少しでも助産師の仕事に興味を持ってもらえたり、
10代の皆さんが、学生として過ごす今も
大事にできる機会になれば幸いです。


振り返れば中学時代。
当時、私は体育祭のリーダー、委員長と、
積極的に学校行事を頑張っていました。

いろんな行事に励む一方で、
中学生の私は、
周りから認めてもらおうと常に必死。

将来の夢など考える前に、
自分はなんでここにいるんだろう…
あの子と比べて私は何もいいところがないな…

と人知れず悩む日々。

高校生、大学生になったら、
完璧で、悩みなんてない大人になれるのかな
と思ってもいました。

ですが、この気持ちのもやもやは、
のちに自分が助産師を目指したい、
続けていきたいと思うきっかけにもなりました。


中学3年生で受験する高校を考える際に、
将来、自分が何になりたいか、考える様になりました。

その時は、動物と英語が好きだったので
獣医か英語教師になりたいな、と思っていました。

身内に看護師がいたので、
看護師の仕事はなんとなく知っていましたが、
助産師の存在については全くりませんでした。

そこで、獣医や教師になるために
どの様な資格が必要なのかを調べていくうちに、
どちらの夢も大学を卒業しないとなれないことを知り、大学進学を目指して県内の進学校を受験しました。


そして、県内の進学校へ入学。
高校には同級生が約300人いて、
10クラスもあることに驚きました。


印象深かった出来事は、高校2年生の体育祭です。
夏休みは、1年生をリードしながら、
ダンスの練習や横断幕の製作をほぼ毎日していました。


私はそこで、同級生のリーダーを支える側になり、
みんなで協力して一緒に何かを成し遂げることの楽しさリーダーの本当の役割と、周りで支える人の大変さ
を知ります。

これをきっかけに、
役割が与えられていることがすべてじゃないな~、
「あなたのそういうところ、素敵だね!」と
認めてもらえること、認めることがすごく嬉しい
と気づいていきました。

このときの経験は、今医療にかかわるひとりとして、
一緒に働く医者や助産師の意見を受け入れながら、
自分の考えも伝え、
チームみんなで患者さんやお母さん、赤ちゃんを
守っていく姿勢につながっています



進路に関しては、文系、理系問わず、
興味のある大学のパンフレットを見たり、
学校説明会に参加していました。

そんな中、今回のような職業講話の機会を通して、
本格的に自分の将来について考え始めました。


昔、
からだに不自由のある方を支援する施設を
見学した機会がありました。
そのことを振り返った際、
病気や障がいがあってもなくても、
その人らしい生活を支える仕事に魅力を感じ、
看護師を目指そうと思いました。

そして、看護師の免許の取れる大学を受験します。


大学では、看護師になる上で必要な
解剖学や薬学を学んだり、
実際に入院している患者さんを看護師さんと一緒に
看護する、病院実習にいきます。


実習前に、学生同士で患者役、看護師役をして
体温や血圧をはかるなどの技術テストを受けます。
みんな、プレッシャーを感じて泣きながらも、
励まし合いながらがんばってきたのを覚えています。

その時、
人を看護することは、簡単なことではなく、
命が関わるからこそ緊張もするし、責任があること
を学びます。


病院実習を通して、
看護師の仕事は想像以上に大変だと感じました。


患者さんの体の健康をサポートしながら、
病気や障害によって不満足になった生活をどうしたら、満足したものにできるか、医学の勉強と合わせて
患者さんの気持ちを想像し、看護をすることが
とても難しく感じた
のを覚えています。

ですが、
"あなたがいてくれてよかった、ありがとう。"と、
患者さんに言ってもらえたことで、
学生の私でも患者さんの力になれるんだ、と感じ、
もっと勉強して、患者さんのそばに寄り添う看護師になりたい、と、がんばることができました。


こうして、いくつかの実習を乗り越えていくのですが、私は、出産の場面に関わる実習で
助産師という仕事を知ります。


お腹を痛めるお母さんの腰をさすりながら、
"辛いですよね。
赤ちゃんも頑張っていますよ。
もう少しだから一緒に頑張ろうね。"と声を掛け、
赤ちゃんが生まれたときには、お母さんと一緒に全力で喜ぶ助産師さんの姿がかっこいいな、と思いました。

そして、医療の現場には、
命が誕生する瞬間に関われる素敵な仕事がある
と知り、助産師になるにはどうしたら良いか、
調べることにしました。

そこで、助産師は
看護師の資格に加え、
助産師の学習を経て、国家試験を受験しないとなれないと知り、助産師の資格を取るためにもう1年間、
大学に通うことを決めました。


助産師の学校では、
お母さんと赤ちゃんの体の仕組みや妊娠・出産に関する勉強と、出産をお手伝いするための技術を学びました。
また、自分の手で赤ちゃんを取り上げる
実習もありました。

出産の場面にたくさん関わらせてもらう中で、
元気な赤ちゃんが生まれてくるのは当たり前ではなく、今日まで自分が生きてこられているのもすごいこと
お母さんの力って偉大
だなあ、と実習を通して感じる様になりました。

また、中学生の時からずっと
私の心のなかでもやもやしていた、
"自分はなんでここにいるんだろう、認めてもらえないと、ここにいる意味はないのかな"という気持ちは、
"生まれてきたこと、今日まで元気に生きていることがすごいこと、どんないのちもとても尊くて、誰かにとっては必ず大切な存在。取り柄や特技がなくても、生きているだけで素晴らしいこと"
という気持ちに変化していきました。

助産師の仕事をめざす中で、
自分の中学生の時からの悩みがはれた瞬間でした。
助産師は、出産の場面に関わるだけでなく、中学校・高校で性教育や命に関する道徳教育をしています。
いつか自分も、出産に関わった経験を踏まえて、
10代の子たちに、命の尊さを伝えたり、
悩みに寄り添う仕事をしたい。

これは、今の私の今後の夢でもあります。



私のいる病院は、
高血圧や糖尿病、精神的な病気をもつお母さんなどを
主に受け入れている病院で、
薬や高度な医療器具を使用しながらも、
安心して妊娠、出産、育児ができるよう
サポートしています。

病院で働く助産師は、
赤ちゃんが元気に育つ様に妊娠中から赤ちゃんが
元気に育っているのかを確認したり、
出産にむけてお母さんの心と体の体調を整えます。
出産の時には、安全に赤ちゃんが生まれる様、
お手伝いをします。

出産後は、授乳やおむつ交換、
赤ちゃんのお風呂の入れ方などを
お母さんやご家族に教える役割があります。

しかし、私のいる病院には、
お母さんや赤ちゃんに障がいや病気があることで、
望んでいたような出産ができないことや
育児をする上で支援や工夫が必要な場合があります。

そこで、お母さんと赤ちゃん、ご家族に
もっとも身近な助産師が寄り添い、希望をききながら、医者と一緒に、その家族にとってよりよい出産、
育児を考えます。

看護師や助産師はとくに、
人と協力しながら、人を支える仕事です。
病気になったら、どんな気持ちになるだろう、
家族はどう思うかな、赤ちゃんが生まれてきたら、
どんな感情になるだろうと思いをめぐらせる毎日です。

難しいし、簡単なことではありません。
しかし、
妊産婦さんやその家族の思いが
少し理解できて、寄り添うことができた時には、
一生懸命向き合ったからこそ、
一人でも多くの方の心の支えになれた、
安全な出産ができた、と思うことができます


これは、私が看護学生の時に習ったことですが、
お母さんやお父さんが、子供を理解しようと試みたり、愛情を注げるようになるためには、
まずは私たち助産師が、赤ちゃんの周りにいる方々の
良き理解者になって、心を満たすことが大切
という教えがありました。

私も働き始めて間もないですが、
温かみを持った私の関わりが、やがては、
親子の愛着に繋がっていったと実感できる場面が
いっぱいあります。
その時は、助産師になってよかったなあ、
とやりがいを感じることができます。


中学時代から
現在に至るまでのお話をしてきましたが
私が10代の皆さんにお伝えしたいことは、
4点あります。

1点目は、私の夢がコロコロ変わっていったように、
夢は変わってもいいも思います!

そして、何になりたいか、決まっていない、わからない人も大丈夫です。
ですが、部活や学校行事など、さまざまな経験を通して自分の興味があること、好きなことに目を向けると、
夢が見つかるきっかけになると思います。

2つ目は、もし、なりたい仕事が見つかったら、その仕事に就くために必要なことを調べると良いと思います!
例えば、大学に行かなくちゃいけないのか、何年間学校に通う必要があるのか、などです。

看護師の資格は、専門学校と呼ばれる学校と大学の
どちらでもでも取ることができます。
受験する高校や大学を決められない場合は、
後々広い選択肢の中から将来の夢を選べるような
学校を選ぶのをお勧めします。

3つ目は、家族や先生にこんな仕事に興味があるなど、一度相談してみると良いと思います。
学校を受験したり、通うにもお金が必要だったり、家から遠い学校へ通う必要がある場合もあるので、
早めに相談するのをおすすめします。

私は家族に相談したら、すごく喧嘩になりましたが、
今になると私のことを思ってぶつかってくれたと思えるので、皆さんも自分の気持ちをまっすぐ伝えられるとよいと思います。


最後に、
ぜひ、いまの自分を大切にしてください。

いまは、自分ってなんだろう、どうなりたいんだろう、なんでこんなことしなきゃいけないんだろう
と思うこと、悩むことがいっぱいあると思います。

私のように、自分のことが好きなれない、
あの子がうらやましいと葛藤している子も
いるかもしれません。
でも大丈夫です。
そう思っているのは自分だけではありません

そして、今抱えている悩みは、将来、
自分はこうなりたいという姿や、誰かの役に立つ日に
きっとつながります。

助産師の仕事をしていると、
理想のお母さん像に近づけず悔しいと思うお母さんや、
ほかのお母さんと比べて自分は・・・
と嫉妬したり、悲しむ方に出会うことがあります。

そのとき、自分のことが好きになれず、
迷ったり、悔しくなったり、嫉妬したり、
いろんな感情と向き合ってきた私だからこそ、
少しでもお母さんの気持ちに思いを馳せて、
寄り添えることがある
と感じます。

ですが、
10年以上たったいまでもこのままの自分でいいのかな、これからどうなるんだろう、と悩むことはあります。
周りと比べて凹むこともあります。

でも、10代の私がそうだったように、
今感じていることは、のちに今後の自分をつくる上で
つながっていくんだろうな、と心から思えます。

私も、
悩みながらも今の自分をたいせつにがんばれたらな
と思っています。

少しでもこの記事が、読んでくださった方に寄り添えるきっかけになれれば嬉しいです。

皆さんの経験が、10年後いきることを期待しています。

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