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潜入レポ! マザーハウス代表山口絵理子さん『Third Way 第3の道のつくり方』刊行記念イベント

「『Third Way』という本を出しました!」
「サードウェーブコーヒーとは違いますよ!」
そんな山口さんの言葉と会場の拍手から、イベントは始まりました。

「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念を掲げるブランド「マザーハウス」の代表取締役社長、
山口絵理子さんの最新刊の刊行を記念したこのイベント。
「Aでもない、Bでもない。“私のサードウェイ”を見つけよう」と題し、
8月2日、六本木アカデミーヒルズにて行われました。

登壇者は山口絵理子さんと、ハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎さん。
Third Way第3の道のつくり方』は「ハフポストブックス」レーベルからの発売です。

イベントの前半では、相反する二つのものの良い部分を掛け合わせ、新しいものを生み出す「Third Wayサードウェイ」を模索する山口さんの生き方、
経営の考え方をこれまでのご経験をもとにお話しいただきました。
イベントの後半は竹下さんから山口さんへの質問タイム。
「サードウェイ」を普段の生活や仕事で生かすためのポイントを聞き出していただきました。

山口さんに学生時代からあこがれていたわたくし営業部の橋本が、イベントに潜入いたしました!
イベント内容をまとめてみましたので、参加できなかった方に読んでいただけたら嬉しいです。
(※個人的にまとめたものです。録音も撮影もしていないので、文章で頑張ってお伝えしたいと思います……!)


① サードウェイってなに?

ひとことでいえば、「相反する二軸をかけ合わせて新しい道を創造する」こと。
山口さんによれば、「振り子みたいなイメージ」で、二つのものの良いところを組み合わせて新しいものをつくりながら、精査していく道をたどること。

たとえば山口さんは、お客さんの声をたくさん聞いてものづくりがしたいという気持ちが初めは強くあった一方で、デザイナーだからこそ自分でデザインを考えたいという気持ちもあったそうです。
そこでどちらか一方の選択肢を選ぶのではなく、両者の間を取って「妥協」するのでもなく、両者をかけあわせたひとつ上の視点の道を探ることがサードウェイ。
だんだん階段を上っていく感覚なのだとか。

会場では山口さん直筆のイラストを用いながら、サードウェイのイメージ図が説明されていました。

② サードウェイという考えに至った経緯(起業前)

学生時代から、途上国の貧困に関心のあった山口さん。
「途上国の人に何かできることはないか」と考えていたそうです。

そこで米州開発銀行のインターンに参加したものの、データ分析や数字の入力をする世界に疑問を感じていました。この数字は、現場で役に立っているのか?ちゃんと現場に伝わっているのか?と思っていたとのこと。

草の根活動はNGOに任せれば良い、などと言われたこともあったとか。自分が現場に行きたい、そう思った山口さんは、当時のアジア最貧国であるバングラデシュに飛び立ちました。

ものごとのひとつの面だけを見るのではなく、いろんな面から考えたい。バングラデシュの大学院で学ぶだけではなく、バングラデシュに暮らす人たちの生活を見ていく中でジュート(麻の一種)に出会い、マザーハウスの物語が始まったのです。

③ サードウェイが生きている今(起業してからの13年)

起業をしてからも、サードウェイの考え方は生きていました。

たとえば、「大量生産」と「手仕事」のサードウェイ
大量生産のものづくりは効率的に生産を行うことができますが、安価な労働力で大量に作って、価格競争力でたたかうモデル。労働環境が劣悪になっていることも多い。

一方の手仕事は職人の個性による付加価値がありながら、たくさん届けることができない。フェアトレードでは、お客さんが本当に喜んで買ってくれているのかどうかわからない。「かわいそう」だからではなく「かっこいい」から買ってほしい、と山口さんは仰っていました。

マザーハウスはまさに大量生産モデルと手仕事をかけ合わせたやり方で、それぞれの良い部分を盗んでいます。
ひとつの答えが、工場でのテーブルごとのユニット生産。効率的なオペレーションはとりいれつつ、このテーブルはこのバッグ担当、と決めています。
するとライン生産と違い、職人たちが「私はこのバッグを担当しているんだ」と思うことができるのです。それがモチベーションの向上につながっているのだそうです。

また、「経営」と「現場」に対してもサードウェイの考え方が
山口さんはもともと、場をまとめることなどが苦手だったそう。その苦手意識から、工場に入り浸ってしまっていたこともあったとか。
でもサードウェイの考え方では、どちらもつながっている。経営と現場をかけ合わせてできるのは、「生きている経営・組織」。
現場に入って感じたことをどうやってすぐに経営に生かせるか、という考え方をすれば良いと気が付いたそうです。

ここで、サードウェイの心構え。
1.相反する二つの良い部分を抽出する。
2.二つをかけ算するクリエイティブは、現場から。
3.出来上がった選択肢がだめでも、改善していく。


現場を大事にすること、そしてひとつの答えに満足せずに、振り子のように試行錯誤してどんどん上を目指していくこと。
山口さんのような経営者だけではなく、私たちにも応用できそうな思考法だな、と思いました。

④ 私のサードウェイを見つけよう

イベント後半は、参加者が自分のサードウェイについて考えるワークショップと、竹下さんからの質問タイム。私たちが自分のサードウェイを見つけるために、ヒントになるような質問がたくさんありました。

「サードウェイは妥協することや、玉虫色の結論とは違うのか?」という竹下さんの質問に対して山口さんの答えは「今までにないものかどうかが大事」。いいとこどりの妥協とは違う、新しいものを生み出すかけ算がサードウェイなのだそうです。

また、早く結論を出そうとしないほうがいい、寝かせることが大事とも。
寝かせて考えることで、自分が「本当にそのことが好きか」がわかるからです。

竹下さんからは、「ゆっくり寝かせるとは言うけれど、焦ったりしませんか?」との質問。山口さんによればサードウェイというのはすぐにできるノウハウというよりも、生き方の話であり、哲学である。
なので時間をかけてゆっくりと組み立てるべきなのだそうです。


サードウェイの考え方っておもしろい!早速やってみよう!と思ってしまっていた私ですが、たとえば自分のキャリアプランや、大きなプロジェクトなど「時間をかけて、本当に自分がやりたいと思っていること」に向き合うための思考法なのだと腑に落ちました。


質問は「冷静な視点、経営者の視点の持ち方」に及びます。
山口さんは、現場に入るとどうしても現場の人の笑顔を見たくなってしまい、考え方が現場に偏りそうになってしまうとのこと。そのため現場に行った後は、意識して客観的に考える時間を持つのだそうです。

意思決定にワンステップを置いてみる。そして時間や空間を変えて考えてみる。
「朝の散歩の時間を取る」、「この部屋では経営のことを考える」など決めているそうで、これは真似してみたいなと思いました。

山口さんと、代表取締役副社長である山崎大祐さんのように、真逆の考え方をする人と組むことも有効だそうです。そこで大事なことは、「自分と真逆の人を批判しない」。
これはやってしまいがちなことですよね……。
「向こう側の視点」を知るために、山口さんは意識して真逆の代替案を聞くようにしているそうです。

⑤ Q&A

最後は参加者からの質問がたくさん飛び交いました。
いくつかピックアップさせていただきます。

◆バングラデシュでの起業は大きなチャレンジだと思う。怖くなかったのか?

怖かった。けれど、身の丈にあった失敗と身の丈を超えてしまうチャレンジを見分けることが大事。自分の場合は、160個のバッグと店舗スタッフのための250万のバイト代、月8万ほどの家賃の入谷の店舗だけでスタートした。それが正解だった。

◆決断を寝かせるということだが、最終的に決断するときはどうやって決めているのか

感性で判断する。それはなんとなくで決めるということではない。人・自分・そしてタイミング。さまざまな要素がすべてそろったときのハーモニーを感じられるかどうか。

◆スタッフのしあわせと会社のミッションの両立についてはどう考えているか。(質問者の方が悩んでいた)

私もそうだった。いつかきっと会社も働いている人も有名になると思って頑張った。どんなにつらい状況でも、必ず理想の未来がやってくるとリーダーが信じることが大事。そうすればみんながついてくる。
今の会社の状態にあったメンバーになっているかどうかは考えたほうが良いと思う。0を1にする人なのか、1を10にする人なのか、10を100にする人なのか。

最後の質問では、山口さんが思わず涙ぐむ場面も。創業当時はたくさん大変なことがあったのだろうなあ、と思わされました。それだけ山口さんが本気でやってきたんだ、ということですよね。
(そして山口さんはすごい人だけれど、同じ人間なんだな、とすこし勇気づけられました。)

⑥ イベントの感想

参加してみて、山口さんはこれからもどんどん新しい道へ挑戦されていく方なのだろうと率直に感じました。言葉のひとつひとつに信念がありました。

そして山口さんの生き方の本質をひとことであえてまとめるなら、サードウェイなのだと。

サードウェイは、明日からすぐに始められるスキルというよりも、「自分の中で気づいたら芯になっている、あとから効いてくる本質的な考え方」だと思います。

何か大きな決断が必要で、答えがすぐに出なくて、でも自分が本当にやりたいことにぶつかったとき。このサードウェイの考え方が私たちを助けてくれそうです。

経営者にとって経営のヒントになるというよりも、わかりやすい答えのない時代に生きる私たちにとっての、生き方の指針になるのではないでしょうか。

そして、なんと、『Third Way第3の道のつくり方』が発売されました……!

書籍の中では、
「社会性とビジネスのサードウェイ」
「デザインと経営のサードウェイ」
「個人と組織のサードウェイ」
「大量生産と手仕事のサードウェイ」
「グローバルとローカルのサードウェイ」
という5つの視点でサードウェイに至る経験がまとめられています。

私ももう2周くらい読みました!
自分のサードウェイはなんだろう、と考えながらこの夏を過ごしたいと思います。
ここまで読んでくださりありがとうございました!


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